うたうSS

うたうSS


・リザードン×ホゲータ(アニポケ)

・リザードン視点モノローグ多め



うたが聴こえる。

リザードンは目をつぶってかすかに尻尾を揺らした。


リザードンの相棒が、機械仕掛けの翼で空を飛ぶようになってしばらく。

空を往くならいくらでも自分が乗せるのに──とは思うが、しかし、一時期の魂の火が消えかかっていたようなフリードが情熱を燃やしているのを見ると、この空を駆ける船とあのピカチュウは彼にとって不可欠な出会いだったのだろう。

ヒトカゲのときに出会い、長らくリザードンだけが相棒であっただけに、いくばくかのさみしさを覚えないわけではない。

船の中はリザードンでは翼を広げることもままならず、尻尾の炎があるだけに、たいていはモンスターボールに入っているか、はたまたフリードの無茶ぶりを助けるためにオリオのいる機関室にいるかだったリザードンが、近ごろ甲板によく出るようになったのは、いつの間にか増えていた船員によるところが大きい。

パルデアに立ち寄ったときにいつの間にか乗っていたホゲータが、リザードンの姿を見るたびに無邪気に駆け寄ってくるのを見たフリードが、自分をモンスターボールから出すようになったからだ。


るるる、とかすかに空気が震える。

風に流れるちいさな声は、普段「ホゲホゲ」と明るい笑顔でリザードンに駆け寄ってくるようすとまるで同じ。

伸びやかに風に乗って流れていく。

聴かれているとわかると逃げ出すホゲータの性質を知っているリザードンは、甲板で静かに尻尾を揺らすのみだった。


──その歌が好きだったのだと伝えればよかったな、と少しばかり後悔したのは、ホゲータにパートナーができたときだ。

ロイというパートナーができ、さらにカイデンという仲間ができてから、めっきりと一緒に過ごす時間が減ってしまった。


陸から船へ戻ったとき、リザードンの帰還のたびに真っ先にころころと駆け寄ってきていたちいさな体をつい探してしまうと、「ホゲータはロイと展望台で見張りの時間だな」と言われてしまった。

「寂しいか?」

ぽんぽんとなだめるように首を叩くフリードに、リザードンは素知らぬ顔で目を閉じた。

ヒトカゲのころから付き合いのある相棒は、誤魔化せないから困る。


「戻るか?」

フリードがモンスターボールを差し出した、そのとき。

「ホッ、ホッ、ホホゲーッ」

元気いっぱいの歌声がかすかに聴こえた。

ロイの声に重なる伸びやかなホゲータの声。誰かに聴かれると隠れていたときよりもずっと伸びやかで、楽しそうな声。

人間には届かなくても、ポケモンであるリザードンには聴こえるホゲータの歌声は、ピカチュウとともにこの船で空を往くと決めたときのフリードの声を思い出させた。

リザードンがボールに入らず、首を船の中へと巡らせたのを見て、フリードは目を瞬かせたあと、ふっと笑ってボールを仕舞った。

また後でな、と言い残して船内へ向かったフリードの背を見送って、リザードンは翼をたたんで甲板に寝そべった。

ゆらゆら、とホゲータの歌声に合わせて尻尾が勝手に揺れた。



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