いばらひめの傷痕

いばらひめの傷痕


閲覧注意

「ifローのみサラダ」×「最初にifローが現れたのがサニー号だったらif」



 多大なる頭痛を奥歯で噛み殺し、渋々、どうにかこうにか、ローは全てに納得することにした。

「……認める。おれ以外がドフラミンゴ相手に全滅した世界……そこの『おれ』が、まァ何の因果か女の『おれ』が存在するってな」

 麦わらの一味が、突如船上に現れた女――トラファルガー・ローを名乗る人間を保護してから一週間。ハートの海賊団に連絡を取り、ようよう会談を取り付けたのが今日である。

 麦わらのクルーは早々に全てを飲み込んだものの、そうはいかないのがルフィ達の知るローだ。彼は説明のさなかもずっと渋面を崩していなかった。

 一旦ローただ一人がサニー号のキッチンに招かれて全ての説明を受けた。他は自分達の船で待機だ。

 麦わらの一味も全員はいない。最初ローが「何人か顔が見えねぇようだが」と聞くと、眉を寄せたナミが「チョッパーを呼びに行ってるわ。彼、あのトラ男を付きっきりで看病してて……あいつらじゃないと多分連れて来れない」と答えた。

 ローへの説明が終わっても、彼らはまだ来ない。

「そんなに悪いのか、『おれ』は」

「詳しいことは私達も知らないの」

 紅茶を飲んでいたロビンが首を振った。ローの疑問の視線を過たず受け取り、説明のバトンが彼女に渡る。

「サニー号の設備じゃとても足りないからって、一旦島の病院に連れて行ったのよ。チョッパーと私が付き添いで。いろいろ検査を受けさせた後、私、最後は席を外していたの。ドクター同士の話もあるだろうから。そうしたら……それから、ずっとこうなのよ」

 ロビンがカップを置く。紅茶色のため息が揺れた。

「『トラ男が来たら一緒に話すから』の一点張り」

「おれァ言ったぜ」

 ぶっきらぼうに割り込んだのは、声音通りのしかめっ面をしたゾロだった。

「理由はどうあれ、あの女はサニー号に現れた密航者だ。その診断結果について知る権利……義務がある、ってな」

 ゾロが頭をガリガリ掻いた。

「……チョッパーの野郎、聞きゃぁしなかった」

 ロビンに紅茶のおかわりを注いだサンジが口を開いた。

「そりゃ、レディーがあんなに傷付けられたことに憤るのは当然だが、それにしたってチョッパーの取り乱し様は……異常だった」

 吐息じみたサンジの言葉を最後に、しんとした沈黙が下りる。

 そこがどうにも、誰の腑にも落ちない。

 チョッパーは医者だ。経験はまだ浅いが、それでもあのサクラ王国で薫陶を受けた医者なのだ。

「…………なあ」

 沈黙に耐えかねたロー(こんなことは初めてだった)が口を開きかけた時。

 バァン! と、爆発するみたいにドアが開いた。その瞬間、入ってきた何かが風のようにローの足元にすがりつく。

 チョッパーだった。ローの知るチョッパーだった。見る影もなく、その顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしていたが。

「トラ男、トラ男……!!」

 チョッパーが顔を上げた。ひっくとしゃくり上げる様子が痛々しい。ローが落ち着けと言うより先に、チョッパーが次々と話し始めた。

「あの子、あのトラ男、」

 涙声でも言葉ははっきりしていた。キッチンの中にいるクルーに加え、たった今ドアのところに来た麦わらの一味にも聞き取れたぐらいに。


「卵巣に、あいつのドクロが縫われてた……!!」


 全てが凍った。誰かが思わずガタリと椅子を引いて、だけど誰もそれを咎めない。

 チョッパーの言葉は尚も続く。

 それから左乳房に羽根の模様のスカリフィケーション、右大腿部内側にあいつの名前も、それから、それから……。

 正確な意味を理解できたのはローだけだった。しかし。

 こんこんと眠り続けているあのローに起きた地獄の片鱗。

 それをこの場の全員に知らしめるには十分すぎるほどだった。




ところで男性の不妊手術はパイプカットが有名ですが、女性の場合は卵管結紮という手術があるんですよね。

らんかんけっさつ。めちゃくちゃ大ざっぱに言うと、卵管を糸で縛る手術です。

ifドが何をどこまで施しているのか。それは神のみぞ知っています。


↓19時過ぎ追記

・以前お医者さんから「内ももはケロイドの好発部位」と聞きました。真偽のほどは定かではありませんが、ifドには当然この知識がありました。

・子宮はどうしても性行為の連想を避けられない…あんまり過度なのはスレ違い…せや! 卵巣にしたろ! 卵巣なら丸いしあのドクロやな! という発想でした。

・ifサラダローが普通(?)に正史ローのところに現れたら現れたで、クルーによる「この人誰!? キャプテンの妹さん!?」という地獄が展開されます。これもまたよきかな。

・ifドがifローの精巣をどうしているかは考えていません。ifサラダローの場合は「自分という男の血を繋ぎうる女体の人間」として卵巣に手を出してそうなイメージがあります。異論は認める。


今度こそ終❗️





2022/12/10追記


同じ小説を2022.10.5 20:08:27付けで「ぷらいべったー」に投稿しています。非公開です。

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