いつかのために
※幻覚注意※
※エフちゃんとナミュちゃんが同チーム設定です※
※23VMについて触れています※
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授業が終了し、生徒たちはトレーニングに向かうため、各々が荷物をまとめ教室を出る。
廊下は賑わいを見せていたが、1人、浮かない顔で歩みを進めていた少女がいた。
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「お疲れさまです〜……」
ナミュールはトレーナー室のドアを開けると同時に大きなため息をついた。
彼女はつい先日、とあるG1レースに出走したばかりだった。
前走のG3レースは悔しい結果に終わったが、彼女自身実りのあるレースでもあった。次こそは、と強い気持ちでトレーニングに挑み、経過はとても順調だった。
次こそは来るんじゃないか、そう期待していたファンも少なくなかった。
しかし、本番はそう上手くは進まなかった。
直前の雨、さらにスタート直後のかなりの混戦具合に苦戦している間に、前に出るための進路はすでに無くなってしまっていた。
努力は必ず報われるわけではない、彼女は地下バ道で静かに肩を落としたのだった。
目標にしていた大レースが一つ終わり、身体を休めるためにナミュールは暫くトレーニングの予定を取っていなかった。
急ぎの用事も無いので、彼女はのんびりとした動きでトレーナー室の出入り口から一番近い席に座る。そしてまた大きな溜息を一つ。
同時にガチャ、とドアが開く音がした。
「お疲れさまです……、あ、ナミュールちゃん」
「…エフ先輩」
ナミュールが後ろを振り返ると、彼女の一つ上の先輩であるエフフォーリアが立っていた。
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「お疲れ。身体の調子はどう?」
エフフォーリアは、紅茶の入ったマグカップをナミュールの方に差し出しながら彼女を気遣う言葉をかける。
「あ、はい。レースの後も大きな疲れはなくピンピンしてます」
「当日…寒かったでしょう?雨も降ってきたし…」
「結構濡れちゃったので、風邪ひいちゃうかなって思ったんですけど全然大丈夫でした。まぁ、流石に寒かったですが。ホント、意地悪な雨ですよね。メインレースが始まる直前で強まってきて」
「最近ずっとこんな天気ばかりで、レースの女神様はどういうつもりなんですかね」とナミュールはあはは、と力無く笑う。
その姿を、エフフォーリアは何も言わずに見つめる。
あは…と最後に一言呟いたあと、ナミュールは視線を下に下げて表情に影を作った。
「……悔しいです。当日のために沢山トレーニングを重ねてきました。これ以上ない仕上がりでレースに臨めることが嬉しくて、出走前は緊張もありましたけど…それよりも期待の感情の方が大きかったんです。走るのがすごく楽しみで。
……なのに、何の力も出せずにレースは終わってしまった。負けたことよりも、その事実がとてもショックでした」
華奢な背中を一段と丸め、彼女は落胆の表情で呟く。
静かに見守っていたエフフォーリアもまた、神妙な面持ちをしていた。
「何も発揮出来ずに終わる…とても辛いことだよね」
優しさの中に、どこか悔しさを滲ませた声色で彼女は同調を重ねる。
G1レースともなれば、多くのウマ娘が出走することは当たり前だ。日本のレースでも最大で18人。
18人もいれば、進路を見つけ抜け出すのだって容易ではない。
スタート、位置取り、ペース配分。
様々な課題をクリアした者が最後の直前で勝負ができる。どこかで躓いてしまえば、後はバ群に飲み込まれてしまうだけだ。
「私も、そういう経験あったからさ」
「悔しい気持ち、よく分かるよ」そう言ってエフフォーリアは苦笑した。
ぬくもりとほろ苦さを感じる空気が、部屋中を包み込む。
突如、空気を変えるようにエフフォーリアは軽く身を乗り出した。
「そうだ!今度さ、チームのみんなを集めて模擬レースしようよ」
「模擬レース…?」
「私たちのチーム、脚質が似ている子結構多いでしょう?判断力の向上を図るトレーニングも必要だと思うんだ。人数が足りなければ他のチームの子たちにも声をかけてなるべく多くの人手を集めてみよう」
「そのトレーニング…先輩も参加してくれますか?」
「もちろん!」
ナミュールの表情がパッと明るくなる。
「私もメンバー集め手伝いたいです!」
同じように机から身を乗り出して意気揚々と口を開く。
少しだけ気分が上を向いた後輩の姿に、先輩である彼女もまた、安堵の表情で微笑んだのだった。
「力になれることがあれば、なんでも言ってね」
終