いつか…
空色胡椒「わぁ~!」
「ツバサ、速度とか大丈夫か?」
「はい!問題ありません!」
ついつい興奮気味に応えてしまう。空高くを飛んでいるこの感覚。変身した時には何度も経験しているからそれ自体は新鮮じゃない。でも今は違う。
「なんかつかめそうか?」
「う~ん、それはまだわかりません。でも…この感覚…気持ちいい」
「そっか」
身体が受け止める風が、横に伸ばして羽ばたかせている翼にあたる。飛ぶにはあまりにも頼りなく見えるその翼いっぱいに風をくぐらせる。もちろんそれだけで飛べているわけじゃない。自分の体を支えてくれている二本の腕、その持ち主である彼がたびたび声をかけてくれている。
今では大分馴染みのある白い装束に身を包んだ、少し年上の頼れる先輩戦士。ブラックペッパーとなった拓海さんが、僕を支えながら空を飛んでくれているのだ。
「いつか…この感覚を自分自身の手で…できるかな」
「何言ってんだ」
「え?」
顔を上に向けると、ニッと笑いながら拓海さんがこちらを見下ろしている。
「できるさ、ツバサなら。誰よりも高いとこまで、誰よりも遠いとこまで」
「本当に、そう思いますか?」
「そう信じてる」
「そう思う」じゃない、「そう信じてる」と拓海さんは言う。迷いのない眼差しで僕を見ながら。僕は知ってる。拓海さんも自分の夢のために沢山努力を重ねてきたことを、そして今も続けていることを。そんな拓海さんが信じていると言ってくれたのなら─
「はい!絶対に、僕の翼で、飛んでみせます!」
「おう。楽しみにしてる」
その姿は僕がなりたいと思ったあげはさんの「かっこいい大人」とはまた違うけれども、やっぱりそうなりたいと思わせる姿。
ねぇ、拓海さん。
僕は、あなたみたいなかっこいい男(ナイト)になりたいって、思ってるんですよ。
…まぁ、そんなことを口に出したらましろさんのうち何人かが興奮しちゃうので、絶対に言いませんけど。
「はっ!BLの私!」
「わかってるよ、拓ツバの私!感じたよね?」
「うん!ばっちり感じた!」
「「公式からの供給を!」」
「また私が変な暴走してる…もう!そんなことしてないで、ツバサ君たちが戻ってくるまでに飾りつけとか終わらせないといけないのに」
「あはは。まぁまぁ、ましろん。ああなあったましろんたちは止められないから、仕方ないよ。ソラちゃんとエルちゃんが買い出しに行ってくれているし、ほかのましろん達も飾りつけを手伝ってくれてるんだから。その間に私たちはお料理の方、準備しちゃおう!」
「うん。あげはちゃんの言う通りだね。ツバサ君の誕生日パーティーの準備、しっかりやらないと、だね」
「そうそう。そのためにわざわざ拓海君にも来てもらったんだから。それじゃあ、ちゃちゃっと取り掛かろう!」
「うん!」