いずれ鳴る銃声
朝、起きてアキはデンジ達と朝食をとる。幾度と無く繰り返した日常を、電話のベル音が切り裂いた。デビルハンター本部へ出勤した早川家に、姫野やレゼが合流する。
「おはよう、皆。ごめんね、朝早くに呼び出して」
「あの…どういった用件で私達は呼び出されたんですか?」
「うん、銃の悪魔討伐遠征が始まるから、皆にも参加してもらいます」
マキマはいつもの執務室ではなく、会議室に集めた4課メンバーに告げた。
「…いよいよ始まるんですね」
「…長かったね、ここまで」
「遠征か〜…どこまで出かけるんじゃ?」
「さぁ〜な」
一同の顔に緊張の色が浮かぶ。反応はそれぞれだが、やはりと言うべきかデンジとパワーが比較的、緊張の度合いが低い。
「デンジ君、パワーちゃん、レゼちゃんは私の管理下にあるので参加必須ね。早川君と姫野さんは…問題ないかな?」
「アキ君次第です」
「俺はこの日のためにハンターになったんです。必ず行きます」
マキマの問いにアキと姫野が答える。
「それじゃあ、銃の悪魔の現状について知っている事を話すけど、聞いた内容は口外しないようにお願いします」
アキは唾を飲み込んだ。
「現在、銃の悪魔は倒され拘束されているの」
「なっ」
「はぁ!?」
「どういう事ですか?」
「オイオイ、なら話は終わりじゃろうが」
デンジを除く4名、パワー以外は揃って驚いた。特に銃の悪魔討伐に意欲を燃やしていたアキが受けた衝撃は大きい。
「ソ連軍が初めて視認した銃の悪魔は、何者かにやられてすでに意識のない状態だったの」
マキマは続ける。銃の悪魔の本体はアメリカが20%、ソ連が28%、中国が11%、その他の国が4%を所持。残りの37%が肉片として世界中あちこちの悪魔が持っている。
「そんな…そんなハズはっ。だって…黒瀬さん達を殺した銃は…!」
「それは人間が作ったものだね」
「どこの国でも…国際法に基づき銃の製造は厳しく取り締まってるはずです…」
銃の悪魔との契約を盾にして、人間同士が銃の売買を行っている。国が裏で作ったものが流され、銃の悪魔が現れる前から、どこの国も内戦している所に売っている。
「それじゃあ、銃の恐怖が増す一方じゃないですか!!」
アキは泣きそうな顔で訴えた。マキマに言ってもしょうがないのは本人も理解している。
「それでいいんだよ。みんなが銃の悪魔を恐れれば恐れるほど強くなる。そうなれば銃の悪魔の肉体を多く持っている国は他国に強くでれるでしょう」
国家間の争いに、アキ達は介入する。今回の作戦を、マキマは戦争のようなものと表現した。
マキマの説明が終わり、一同は休憩に出た。最もショックを受けているアキはベンチに沈むように座っている。
「なに落ち込んでるんじゃ、チョンマゲ。行って倒して帰るだけなんじゃろ?」
「…そういう話じゃないんだよ、パワーちゃん」
「んん?どういう事じゃ?」
パワーの疑問に姫野が答える。銃の悪魔を倒せたとしても、その肉体は公安が回収して国が保管する。
「私達はこれから銃の悪魔の肉体を強奪しに行くの。多分…保有国が揃って手放さない限り、銃の悪魔は死なない」
レゼが缶コーヒーに視線を落としたまま言う。彼女は銃の悪魔にさほど思い入れはないけれど、今のアキは彼女から見ても気の毒な姿をしていた。
デンジは会話に加わる事なく、缶ジュースを片手にアキ達を見ていた。
「ううっ…!?」
「アキ君!?」
「どうしたっ!?」
眼帯を抑えて呻き声を上げたアキに、姫野とデンジが駆け寄る。アキは垣間見た光景を口にできず、その場は適当に誤魔化した。
夜中、アキは未来の悪魔に呼びかけた。相変わらず浮かれた調子の悪魔へ、昼間に見た予知について尋ねる。
「あれはね もうすぐ来る未来」
「絶対に変えられない未来」
「デンジとパワーは君を助けないのさ!君は独りで死ぬんだ!」