ある女の記録①
この村で行われる事に何も疑問を抱かなかった。
よく行われている事に関しても何も疑問を抱かなかった。
・・・偶々外から持ち込まれた'アレ'を読むまでは。
※※※
いつものように若干軋む家で目が覚める。
・・・今日は2月2日の木曜日、いわゆる猫の日だ。
ただまぁ私にはそんなに関係ないけど。
そして冷蔵庫からパンを取り出してとっきおきのジャムをつけて食べる。
うん・・・美味い!!やはりゴキブリジャムは世界一のジャムだ。
ゴキブリという偏見で避けている人達はこの美味しさに気づかないんだと思うと可哀想な気分になる。
さて・・・それじゃあ夜まで暇を潰すとしようか。
※※※
「ついに来たぜ函館ェー!!!」
宮崎ねと自分で突っ込みを入れながら懐中電灯のスイッチを入れる。
何をしに来たのか?
それはもちろん私の様にあの村から逃げ出した人がいないかどうか探す為だ。
もしいるなら保護をしないといけない。
ただまぁこれまで探して見つかった事は一度もないが万が一という事もある。
さーていないかなと周りに耳をすませた瞬間だった。
・・・耳に聞こえたのは草が擦れる音。
まるで何かがこっちに近づいているような音。
「・・・え!?何!?」
・・・しまった、思わず声を出してしまった。
私の声を聞いたようにその音はこっちに近づいてきている。
「もしかして・・・ヤバイ!?」
そう気づいた私は急いで息を潜めて村から逃亡する時にも使った気配遮断を使用しようとする。
・・・が、パニクって上手く使えない。
そして音がピタリと止み茂みから私の目の前に'それ'は現れた。
見た目は普通の猫だ。
ただその毛は赤く塗れており目は凶暴に紅く光っている。
そして口に人間の腕のような物を咥えていた。
それを見て私は・・・
ひ・・・ひ・・・
「人喰い猫だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
・・・思わず声を出してしまった
そして目の前の猫はじわじわとこちらと距離を詰めてくる。
どう考えても私を襲う気だ。
「・・・!」
後ずさるもここは深い森である。
しっかりと正しい道を辿らなければ帰る事は出来ない。
だが逃げながら正しい道を辿るなんて不可能だ。
つまり・・・完全に詰んでいる。
「・・・グルル」
そして目の前の猫は私に飛び掛か・・・
・・・ろうとした寸前にばたんとその猫は倒れた。
「・・・え?」
・・・どうやら餓死寸前だったらしい。
それで私を襲おうとした直前に限界が来た・・・と言う事か。
ともあれこれはラッキーだ、今のうちに・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
本当にこのままでいいの?
私の目の前には餓死寸前の猫。
ただしその猫はおそらく人を喰い殺している。
・・・だからと言って。
果たして見捨てるのは正しい事なのか?
この猫を見捨てて私はジャンプを自信を持って読めるのか?
「・・・ああ!もう!!」
決めた、この猫を連れて帰る。
仮にこの猫が暴走しても警察か何かが止めるだろう、そう思った私は猫を抱きかかえると帰り道に向かって進んだ。
この人の腕は・・・一応後で行方不明になった人がいないか調べてみるとしよう。