ある夜の日
「まだ夜…か」
なんとなく目覚めてしまった。光も少ないアビドスの空には星が瞬き、高めに浮かぶよく満ちた月はまだまだ夜が続くことを示している。見回りでもしようかと立ちあがろうとしたその時。
「うう…」
苦しそうな声が響いた。横を見るとハナコちゃんの少し苦しそうな表情を浮かべた寝顔が。
「ヒフミちゃん…アズサちゃん…」
悪夢だ、直感的にそう思った。きっと補習授業部の子の夢だ。少しでも楽になるように右手を握り、頭を撫でてやると少し楽になったようだ。顔の強張りが薄まった気がする。
やはり補習授業部の皆からの裏切りが苦しいんだろう、後悔してるんだろう。それを壊したのは、裏切らせたのは…
「ホシノ」
「あれ、ヒナちゃん。起きてたの?」
「ちょっと見回りをね。…1人で背負い過ぎないことよ」
「何もかもを1人で全部持って行こうとするといつかダメになっちゃうわ」
私のようにね、言外にそう言っているように感じた。
「でも、これは私のせいで始まった話で…」
「あなたにしては随分弱気ね、ホシノ」
ヒナちゃんは私の左手とハナコちゃんの左手をそれぞれ手に取った。
「たとえそれがどんなに悪いことでも、私はあなたについて行く。きっとハナコもね。だから私たちにも荷物を背負わせてちょうだい?」
「…そうだね。これからもよろしくね、ヒナ、ハナコ」
私たちは間違っているのだろう。きっといつか報いを受けるのだろう。
それでもこの絆さえあれば、終わりが来るその日までこの2人と一緒に戦えるのならば、きっと私は幸せだ。