あるあこ導入Ⅱ

あるあこ導入Ⅱ


それから数時間。


長く使ってきたオフィスの片付けもおおよそ終わっていた。


流石に、風紀委員に場所がばれてるオフィスはもう使えない。

それに、風紀の子たちは、いくら相手にならないとはいえ、それは、私たちに脱落者が出ないという程度。


建物を無傷で守り切る。となれば話は別。

そんなに大きな損壊を与える武器を使うことはなかったとはいえそのまま住み続けるには少しダメージが大きかった。

レンタルしていたデスクも傷物になったし。中も私たちが逃走した後に踏み込んだ子がいたのか、結構ぐちゃぐちゃだ。


「まぁ、そっちに関してはヒナのおかげでなんとかなるからいいけれど」


正直交渉に成功したのは本当に助かった。


そうでなかったら、また野宿の日々に逆戻りであっただろう。


「貴女も助かったわ。備品の数は少ないけれど請求するのに少し苦労しそうだったから」



そして何より執行委員アコの存在は大きい。

使用した弾薬数からの弾薬代の算出。オフィスの被害総額その他諸々。

勉強をしていないわけではないけれどそれでも専門にしている子には私も劣ってしまうもの。


一人だったら本当に大変だった。

だから、私は労いの意味を込めて、彼女の肩を軽くたたく。


「……なんで、ですか」


「?」


「なんで、手を出さないんですかー!?」


「……えぇ……」


その叫びに、私は正直引いてしまった。

彼女の言によると、私たち……というか、私と接触して以降、イオリの様子がおかしいということで独自に街中に情報網を巡らせていたらしい。


そう、思えば最初から変な話であった。

この件に関して、イオリのことを知っているのはおそらくヒナのみ。


ならば、どうして、便利屋のオフィスを探し当てるなんて面倒な手段を取ったのか。


「後輩のためじゃなくって、性欲のために行動してたのね」


「っ……ちが」


「言い訳なんかいらないわよ」


彼女は見てしまったらしい、イオリがおかしくなかった、原因。

私がこらえきれなくなって外の物陰で……一人でシてるところを。


これが、ヒナを動員できなかった理由だ。

彼女はおそらくどちらでもよかった。


だが、彼女を動かせないからこそ前提条件が存在する。


一つ目は、それが偶発的なものでないこと。


既に二度、彼女は私たちに対しての独断専行を行っている。

そう考えると、ヒナも私たちに関しては詳細に話を聞かないといけない。


明確な悪事でなければ私たちに対する行動は鈍くなるだろう。


もう一つは、私たちに勝つか、敗北するにしても、交渉のテーブルを整える状態にする。


半端な戦力で着た場合、私たちはオフィスで撃退して、適当に風紀の子たちを送り返すだけでいい。

そして、ヒナもイオリも動員できないということは、戦力としては六割減。

いや、ヒナがいないという一点だけでその場での敗北は確定しているから、この横乳は、私たちをオフィスから引きずり出すためだけにあれだけの人数を用意したのだ。


なら、……あぁ、うん。

この子の欲望は満たすことになるし、恐らくあの子の狙い通りなのだろうけれど。


「ねぇ、なんで、ヒナがあなたを私に差し出したか、わかってる?」


少しばかり、叱らないといけないだろう。

依頼料は、……あとでヒナに請求しておこう。


「そ、れは……」


「全部バレてるのよ、あなたのことなんて。きっと、あなたの性欲のために、ううん、私にこうしてもらうために動かしたってこともね?」


彼女は顔を赤らめてる。

けれど、これは、羞恥。反省の色はない。


「まぁ、その結果、彼女に身内を売らせる選択を取らせてるのだけど、……この意味、分かってる?」


だから、まずは、失態を分からせる。

彼女には性欲だけに走らせてはいけない。


「貴女は、……風紀委員の名に傷をつけたの……私が交渉に乗らなかったら、今頃、どうなってたかしらね?」


「ぁ、ぁっ……」


吠えることもできない。

やらかしが相当だから仕方のないことだ。


実際、私たちがこれを、訓練の片付けではなく。

風紀委員に敗北を認めさせ、勝利の証として彼女をさらったものだ、と喧伝すればどうなっていたことか。


彼女たちにとっては致命的だろう。

何せ文字通り抑止力がいなければ何もできないことが示されてしまうのだから。


「ねぇ、それなのに……自分の性欲ばかり考えてる貴女……あの子にとってどう見えるでしょうね?」


「ち、ちが」


「何が違うのか、……教えてくれる?」


指先で、彼女の顔がこちらからそれないように抑えながら彼女の瞳を覗き込む。

上目に向けた私の視線のその先にある彼女の目は、行き場を無くして、必死にそらそうとする。


自分の失態をごまかしたい。

当然だろう。さっきまでの彼女は、肉棒が滾った時の私と同じ。

考えなんて碌にまとまってない稚拙な思考しかできなかった。


「ふふ……でもいいわ。あなたの望み、かなえてあげる……」


「は、……ぇ……う、そ」


そう、今の私と、同じように。

あぁ、だって、そう。仕方のないことだ。

彼女のスタイルは、かなりいい。


高い上背も、大きな胸も、いつもさらけ出しているその太ももも。

普段性的な目を向けられないから出していられるそれらは、十分すぎるほどに私の中の獣を奮い立たせる。


「ほら、……さわってみて?あなたがもとめたものでしょう?」


そういって、私は彼女の手を私のそれに添えさせる。

彼女の手のひらの冷たさが、私の肉棒の滾りを冷やす。


「ねぇ……片付けの最後は、布団。……っていっても、もうあなたたちの攻撃のせいで使えないけれど……そこで、おしおき、してあげましょうか?」


そして、その肉の熱さを、手のひらで感じ取った執行官は、顔を赤らめたまま、ただただ、小さく何度もうなずくばかりであった。

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