あり得たかもしれない未来
今日もルフィとセックスをする。私の体は満足な営みもできない出来損ないだけれども、彼が求めてくれるのだからまだマシだ。愛する人が抱える肉欲を少しでも吐き出す手助けができるなら、この体だって使い道はある。彼が、傍にいてくれる。
そう、思っていたのに。
「なあ、ウタ。俺が、その、誘うと応じてくれるけどよ……実は、ウタはあんまり気持ちよくねぇんだよな……?」
ある日の夜、大事な話があると前置きしたルフィの口からはそんな言葉が出てきた。
待って? なんで? 気づかれたの? いつから? いや違う、まずは否定しないと。
「えっ、と……何言ってるのルフィ……? 大好きなルフィとし、してるんだから、気持ちよくないわけないじゃん? 冗談とかだったら怒るよ?」
やばい。ところどころ声が震えてる。いやでも急に変なこと言われたのなら声が震えたっておかしくないまだ大丈夫。
「冗談でこんなこと言わねえ。それに、最初にまじめな話だっていったろ」
嘘嘘嘘嘘嘘嘘。いやだ、その先を言わないで。ルフィに捨てられたくない、傍に居させて。お願いだから。
「…………」
早く、早く、早く。早くルフィにちゃんと感じてるって、私の体は正常だって言わなきゃ。ルフィみたいな素敵な人の傍にいる資格はちゃんとあるんだって伝えなきゃ。そうしないと見捨てられる、おいて行かれる。そんなのいやだ。喋らなきゃ、声を出さなきゃ。
そう思っているのに私の口からは何も出なかった。いや、微かに呼吸をする音だけは耳障りに聞こえる。ウルサイ。ルフィに聞いてもらうのはこんな風の出来損ないみたいな音じゃない。
「……悪ぃ。こんなこと、自分でいいたかないよな。でも、わかってんだ。ちゃんと」
息があらくなる。まるで風邪をひいてつらい時みたいにこきゅうが乱れる。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。その先を聞きたくない『ずっと無茶させてたみたいで――』でもルフィの決断ならききわけて離れなきゃいやだ離れたくないまっていわないで『俺は――ウタ――理はさせ――な――』視界がぐるぐるして聞こえる音もぐにゃぐにゃしてきて『こ――ら二――の――』でもだめだぜんぶばれたわたしはるふぃからはなれなきゃ『――!――っ!』こきゅうをととのえてるふぃのはなしをきいてえがおでわかれ――
そうしてブツリと私の意識は途切れた。
最後に見えたルフィの顔は暗転する視界のせいか、真っ黒で見えなかった。