あらすじ
護神大戦終結の6年後、一人の破面滅却師がカワキを訪ねる。霊王の欠片を収集する破面は、カワキが空座町に作った影の領域を拠点として使いたいと願い出た。
破面——ローレアンの目的は、「喪くした仲間を蘇らせること」。
しかし——カワキの見立てでは、滅却師に滅却されたローレアンの仲間を蘇らせる事など不可能、やるだけ無駄な行為だと忠告するも……。
『君の仲間は死んだ。まして滅却師の手で殺された仲間を蘇らせるなんてできるわけないだろう。私達がやっているのは魂魄の滅却だ。死神のような循環に戻すものじゃない』
「……何を言ってるの? みんな、迷子になっちゃっただけだよ? きっと今頃、私とはぐれて、怖くて泣いてる。だから早く見つけてあげなくちゃ。ね?」
度重なる無理な自己強化、過去の出来事による心的外傷で破面——ローレアンは真面な思考能力を失っているようだった。
霊王の欠片を自身の魂魄に取り込み、どこから見つけてきたのか、ユーハバッハの力の残滓までも食らったローレアンの力は、並の隊長格を凌駕していた。強大な破面の動向を気にしたカワキは、ローレアンに影の領域を使わせる事で監視下に置き、浦原と対応を協議すると決める。
『…………。これ以上、止めはしないよ。気が済むまでやればいい。この場所も自由に使って構わない。ただし……事態が露見するならそれまでだ。いいね?』
「わぁ、本当? ありがとう、殿下。殿下は優しくていい子だねぇ。あなたを頼ってよかったぁ……他の滅却師は見る目が無いねぇ」
そして現世と尸魂界で発生する謎の通り魔事件。共通するのは——犯行の日はいつも台風のような強風が吹き荒れていたこと、被害者は一様に治療されて返されるということ。
次々と霊王の欠片を持つ者が襲撃を受け、被害者が治療されて返されるという不可解な事件に動いた死神達。技術開発局が襲撃者の霊圧を捕捉するが……。
『件の襲撃者については、私と浦原さんで対応を協議中だ。しばらくこちらに任せてもらおう』
「…………。そういう事ならこっちはもうしばらく様子見させてもらおうかな」
◇◇◇
「カワキさんが動いてくださるなら、安心ですね。総隊長。……総隊長?」
「う〜ん、何か引っ掛かるんだよねぇ……彼女、こういう時に自分から首を突っ込むタイプだったかな?」
カワキに違和感を覚えた京楽に霊王宮から「“已己巳己巴”が破面に盗まれた」という報せが届く。
現世と流魂街で相次ぐ謎の襲撃事件、厳重に守られた霊王宮から盗まれた斬魄刀——同時期に立て続けに起きる事件は、とても無関係とは思えないが……。
そんな折、襲撃の魔の手は流魂街に暮らす彦禰や完現術者達にも迫っていた。
「ねぇ。ねぇ、そこのお前」
「はい! どちら様でしょうか!」
「私? 私は、———————」
「……? 申し訳ありません! 風の音でお名前が聞き取れなかったのですが、破面の方が自分に何かご用でしょうか!」
「……うん。あのねぇ——お前が持ってる霊王の欠片、私にちょうだい?」
「え?」
◆◆◆
「風が騒がしいな。なあ、知ってるか? 「こんな日はかまいたちが出る」って最近噂になってるらしいぜ」
「ありふれた怪談話だね。そのジャンルの本はこっちでも読んだよ」
「では、私と月島さんは出掛けますので、銀城さんは留守番をお願いします」
「俺が怪談話にビビってるみてーな言い方やめろよ……」
◇◇◇
「やった……! 欠片を持ってる人が二人も見つかるなんて今日はいい日……お前達の力、とっても素敵だねぇ」
「……何者です? なぜ破面がこのような場所に……」
「欠片って言ったね。もしかして……僕らの魂魄の中にある霊王の欠片を狙ってるんじゃない?」
「そう。大人しく渡してくれるなら、痛いことなんてしないから。お前達が持ってる欠片、私にちょうだい?」
◇◇◇
「あ……ああ……! どうしようっ!? 死なないで、死なないで……私、こんな事がしたかったんじゃないのに……! ——そうだ……怪我、治してもらおう」
「……まさかギリコが拐われるなんてね。困ったな。殺されるってことはないだろうけど……まずは浦原商店に連絡かな」
ローレアンに欠片を奪われた彦禰、重傷を負うギリコ、なんとか栞を挟むことに成功するもカワキが関わっていることを知った月島、霊王の欠片を狙った襲撃者に仲間が瀕死にされたトラウマで怒り狂い瀞霊廷に乗り込む銀城——尸魂界でも、騒動が巻き起こる。
ローレアンの過去から今回の件へのカワキの関与を知った月島は、真相を伏せたまま浦原商店と連絡を取ろうとする。
一連の事態を重く見た京楽は月島を秘密裏に現世に送る事を許可した。京楽の狙いは浦原商店に月島のお目付役を任せる事で、浦原とカワキの目的を探る事にあった。
「浦原商店と連絡を取りたいって話だったよね。ボクの方で調整しよう、と言っても公にはできないから慎重に頼むよ」
「ああ、いいよ。死神もやっと事の深刻さに気付いたようだね」
「まあ、そうだね。ところで……君の能力なら襲撃を受けた時に犯人の過去から情報が得られたんじゃない?」
「どうかな」
◇◇◇
「よろしかったんですか? いくら大々的に人を出せないからと言って……」
「いいのいいの。この事件……彼らがどう動くかで見えてくるものもあるだろうからさ」
入れ違いに尸魂界から「銀城暴走」の報せを受け、身重の妻・織姫を友人達に任せて死神達の救援に向かう一護。
「——銀城が瀞霊廷で暴れてる!? 何でそんな事に……」
「一護くん、あたしなら大丈夫。だから、行ってあげて」
「……ああ。悪りィけど、俺が留守の間は織姫の事、よろしく頼む」
『頼まれよう』
ここに霊王の欠片と完現術者達を巡る戦いが幕を開けようとしていた——!