あばよっ!
SS
アプー(推し)×吐血(性癖)
全責任は>>1ダイルと閲覧者に
都合が悪いならさっさと描くなり書くなりして脱出(ブラバ)なさい
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トレブルが上がり始める雑音、
「抗体……」
目に映る天井が少しずつはっきりと輪郭を帯び、アプーはすぐ、我に返る。自分の命綱が失われていることに気づく。起きあがろうと床に手をつけば、ぐらりと地面を滑る。力が入らない。
「ロ……ロノ……ア……!!!」
アイツだ、アイツだ……ゼェゼェと息をつく。何処にいる。頭も体もズキズキと痛み、目を動かす余裕さえ無く、そんな自分を嘲笑うかのような天井に反響する音を辿ろうとした。
「ん゛げうッ」
その時、ぎゅるぅ、と何かが逆流する音がアプーの体内に響いたかと思うと、がくんっと体中が反射的に丸め込まれ、何かを反射的に吹き出した。強い臭いが鼻をつく。
「ぐッ……!?」
気持ち悪い。暗転を繰り返し点滅する天井、仰向けの自分に強い吐き気が襲う。アプーは体を裏返し、
「ぶッえ゛ッ」
両腕を地に這わせどうにかめり込ませ、赤々とした血液をビチャッと勢いよく吐き出した。
「ぇヴッむ゛げぇぇ」
負わされた傷の深さを実感させてくる。まだ止められない、アプーは粘性の血液を唇からどろっと垂らしながら、さらに血を吐く。
「ご……ッ……ぉえ゛」
床に溜まりが出来てきたくらい、アプーは一瞬だが、意識が飛び、ふらりと倒れそうになる。
「終われ……か……よォ……こんな……で……」
腕に力を込めて、体勢を持ち直す。ごろごろ、とせめぎ合う忌々しい水音の繰り返しにはただただ苛々させられるもので、その上、吐き気がただでさえ強いが、吐いた血の臭いは尚のこと吐き気を催す。この状況に対して、アプーはただ冷静でありたかった。負傷すれば大抵こうなる。しばらく待っていれば確かに止まる。しかし、時間が無い。口惜しい、口惜しい、許すものか、滾らせていた憎しみは振り落とされる。ギュル、と鳴りながら喉の奥に引っかかっていた血が大量に噴き出す。
「う゛ん゛ぅぅ!!!」
今度はそのまま、倒れ込んでしまった。血溜まりの床に打ちつけた頭がぐら、と体中を揺さぶってきて、反射的に、また吐血する……この程度なら、まだ大丈夫だろう。だが、ここでくたばっていたら必ず、クイーンにやられて死んでしまう、と、増す吐き気の中でもう一度、何度でも、立ちあがろうとする。
「てめェら、抗体を奪い返せ!!」
クイーンの声が聴こえる。少しとはいえ宙に浮きかけていた意識だった。アプーは強引に引き摺り出し、歯軋りをしながら床を睨む。
「てめェら……だと……野郎……舐めてんじゃねぇ……おれだ……おれが……」
這いつくばる。
「この隙に「抗体」を量産する!」
遠くからの声もそうだ。このフロアの音の全てが、心中のディストーションに重なっていく。
「おれがやらねェと……!!」
トンファーに手を伸ばして握りしめ、こびりついた自分の血を服の袖で拭い、倒れた衝撃で割れたメガネの、眉の下に刺さった破片をひとつひとつ、軽々と引き抜きながら、ふと思った。
「もう少し下だったらと思うと肝が冷えるな」
ふう、と安堵の溜め息をつき、激しく痙攣する足を無理にでも立たせている間、使えなくなり床に投げ捨てたメガネが視界に入ってきた。腹いせ混じりに靴で踏むと、メキ、と音がした。
「チッ染みる」
半分以上が赤く塗られている顔で、その呟きはジリジリと痛む片目に向かって。口から滝のように溢れる大量の血は顎の下から服に、床に、滴り広がっていく。平衡感覚もあやふやだ。それでも立てる、走れる。みっともない姿を晒すのは良い。だが、こんな風体で終わるわけにはいかない。勝機が、生存の戦略が頭の中にある。ある限り立ち上がることができるのは、この男が今まで生き残ってきた理由といえよう。
「一層派手にってこういうことじゃあねえだろうな、クソ」
熱狂する祭りを打ち壊した、全てのアバンギャルドに反抗を。怒りと憎悪に満ち、血液を垂れ流す退廃的な姿は迎合しているようだが、必ず裏切る。裏切っていると見せる。当然だ、繋ぎだけが全てではない。アプーは、自分の心だけは絶対に裏切らない。一味の前に目を光らせ立ち塞がった男は、黒い感情に塗り潰されている。それさえ一時的である。最後に笑う男の姿の、ひとつでしかない。
岩戸の間に呻き声が響いた。人間が飲むにしては大きすぎる酒瓶の口から、手を離す。
「あ゛ーーっぎぼぢわるぅ……ぶり返すんじゃね〜〜よぉ〜〜!!」
痩せ我慢なんてするもんじゃない、と常日頃から思っているのは、このように後で倍になってくるから、というのもひとつだ。まあ今日は仕方ないが……。アプーは、血がべっとりと付着している唇をタオルでごしごしと拭った後、ソファの上にゆっくり横向きで転がり、肘掛けに頭を置いた。眠気で欠伸をする。
「おれがこんなになってる時に食いモンの匂いさせやがって。気楽で良いよなァお前ら!!」
肉を食い酒を飲んですっかり気を良くしている巨人達に話しかけた。
「こっちはどさくさに紛れて逃げるの大変だったんだぞ、分かってるのか〜?」
三者、共に心底興味のなさそうな返事だ。そんな姿をじっと見て、少し考え込む。
「……アッパッパ〜! まあ良いってことよ、思いついたぜ面白ェ話!!」
アプーは未だ血の臭いが残る口を碌に気にかけることなく、揚々として笑うのだった。