あなたのそばでまた明日
今日は一人で、村を一望できる高台へ向かう。足取りは重いが絶望感はないけれど、寂しさが募っていく。だけど不思議と嬉しくなってきて、重い足取りを早めてしまう。
これはとある出来事以来勝手に決めた、二人の大事な約束。
「ここを次の日の待ち合わせ場所にしようね」
大事な大事な約束事。
本当は二人で行きたかったけどしかたがない。待ち合わせに遅れないように、風になびく髪の毛を羅針盤の代わりにして、そこへ向かう。
待ち合わせ場所についたらいつもの事をして、今日あった出来事や思っていること等を話し合う。
「今日は作家が来てね、私達の出来事を物語にしたいんだって。有名になってしまったけれど、二人の秘密にしたいなって思って断っちゃった」
彼は先を急かすように黙って聞き入る。本当は相槌の一つでもほしいけど仕方がない。
「たまにはサボやエースも来ればいいのにね?恥ずかしがって来てくれないんだもん」
他愛のない会話をして、時折笑い合う。いつも自分の事ばかり話して、たまには彼の話も聞きたいけれど、それでも会話をと切らせないよう続けてく。
「それと今日はとうとう○○が船出したんだ。大事な麦わら帽子を被ってさ、いつかあなたを超えるって言っていたよ?まるであなたみたい」
大きな出来事があればそれを話題の中心にそえて、毎日を色づけていく。
そしてしばらく話し合えば別れの時間。だけど以外と寂しくない。
「今日も時間になっちゃった」
一通り話し終わったら、立ち上がってあなたに背を向ける。寂しくなるけれど仕方がないよね。
それでも振り返れば彼が笑っている気が・・・いや、笑っているから、しっかりと向き直って宣言する。さよならじゃないその言葉をしっかりと。
「ねぇルフィ、また明日」
海から来る風がまるで彼のように、代わりに答えてくれる。
「おう、また明日な」
そんなふうに聞こえるけれど、だけど本当に彼が返してくれた気がして嬉しくなる。
いつか来れなくなるその日まで、そこに刻まれた彼に向かって微笑む。いつか会えるその日まで。そこに見える彼をしっかりと視界に収めながら。
モンキー・D・ルフィ ここに眠る
今日の下る足取りは、普段より軽かった気がした。
【あとがき】
大往生の末に先に逝ったルフィと残されたウタのとある日の出来事。
ウタもそろそろ寿命が近いけどルフィに会いたくて毎日墓参りしてる設定。
途中出できた○○は多分曾孫あたり、少なくても息子(娘)ではない。