あなたに贈りたい
一通の手紙が届いた
「元魔法少女達の皆んなで集会をしようと思うんです」木戸家からだ
細かいことは省いて要約したが大体言いたいことは分かる
もしや私以外にも同じ内容で送っているのではと勘繰るが
しかし、面白半分で承諾してみるのも悪くないと思い返信した
「ありがとう御座います!日付はそちらの都合がつき次第で結構ですので、連絡を待っています!」木戸幽歌…より。天命かな
場所は山にある別荘にでもするか滅多に使わないから掃除を用意しなくては
私の名前は雪城一枝。電子機器系企業の社長だ
社員からは慕われているものの自分でも分かるくらい冷徹と感じる面もある
大体ヤクザとの繋がりだが
やることに未熟という言葉が欲しくない
寒波が街を直撃したいつかの日
黒のレザーコートに身を包んでヤクザの本元に会いに行くときだった
裏の繋がりを保とうとすると面倒をしなくてはならない
リモートが出来る今でも直接会うことがこの業界の礼儀だからだ
彼らにとって不都合なものは私にとっても悪く
持ちつ持たれつとはよくぞ言ったものだ
またも日常が始まったと頭の中で片付けた時だった
車を降り何処の馬の骨か分からないボロキレが私に包丁を向けてきた
普段の行いからして察しがつく。大筋、私がけしかけたヤクザか何かにされ恨みがあって来たのだろう。車から出た直後、門前で待機していた護衛も間に合わない。自分の巻いた種に刺される最後なんてお誂え向きかもしれないと
一人の人間が射線に入ってきた。覆いかぶさるように私ごと道路に倒れ込み
突然の出来事で誰もが呆気にとられホームレスの男は車の中に突っ込まれ
しばらくして罵声が飛び交い男は血塗れで伏していた
「どうします〆てコンクリートに埋めますか?」
「指切っときますんでこの男の処遇は任せて下せ」
君達のプライドはどうでも良いがそこの一般人の前で言うことかと思った
「あの、大丈夫ですか?」
どうやら聴こえていなかったようだ
いかにも善良な日常人といった風貌の女性。高校生くらいか?
別にこの人には興味はないが名前だけ聞いて軽く礼をしよう
『……あなたは誰?』
「私はただの通りすがりです。普段通らないんですけど、今日はこっちの道でも良いかなって…深い意味はなく…」
『名前って名前』
「あっ…名前ですか。えーっと……“木戸幽歌”です」
本人の前で決して言えない、貴方の影響で平等を願うようになったとは
幽歌「どうしました…?一枝さん」
一枝『……なんでもないよ幽歌』
今は目の前にいるから
はるか「ふ〜ん♪何考えているか当ててみようか?」
止めろ。お前の予測は当てになりすぎて怖い
ステッキがなくても能力が使えるなんて反則だろ
私はそっとロリポップ🍭をはるかの口に当ててやる
はるか「へへーん。これあの時の貸しだよー?」
そう言うと未来は私達二人から距離を置く
はるか「緋衣ちゃん!また新作見せてよ!いやフォーティーンサウンド先生!」
花恋「なんだその名前!?」
十四音「ふふふ、まだラフだけど今回は特別に…」
誠『ママー!あれ何してるの?』
ゆりね『誠…いいのかよ遺?見てるぞ』
遺『………』
なにやら賑やかにも騒がしくもなって二人は取り残される
幽歌「こうして話をするのは久しぶりですねぇ」
一枝『覚えていたのか…あの時を…』
期待していなかったはずがその言葉で何か救われた気がする
未来はるかはこの事をわかっていたのかな
彼女に関わると嫌な方向に向かうとばかり思っていた…
一枝『行かなくていいのか?仲が良いんだろ』
幽歌「はは…あの子は」
なにか寒気がしたが気のせいではなさそうだ
表情はそのまま心が閉じかかった音がする
一枝『ただの仲良しって訳ではないのね』
口を閉じてからしばらくコクリと頷く
そうか、色々あったんだな
明るい顔からは苦労が滲み出ている
幽歌「今でも時々思うんです。私に、彼女の隣にいる資格があるか。非凡に対する嫉妬が抑えられなくなるんです。目の前にすると」
思い切ったことを言う。今まさに嫉妬の目を向けられているところか
一枝『私は別に良いのでないかと思うけどね』
あれだけ互いに近づけ合えるのは性根が見え合っているから、と私は思う
悔しいが未来はるかは相手への理解が深く残念なことにそれを悟らせていないのか、幽歌は自分を責めているようだが
正直そんな仲が羨ましい。こっちが嫉妬しそうだ
一枝『いつでも受け入れる準備が出来てるのならそれに甘えるのも彼女の望みだろ』
幽歌「一枝さん…」
今の私は喋る気力がない
言語化出来ないが負けた気がするからだ
これも彼女の計画の内…?そう言えば初対面も私だけ串刺しにされたっけ
もういいや
幽歌「ありがとうございます」
幽歌「おかげで何をすれば良いか分かった気がします。先程はすみません。けど一枝さんがいてくれたら私、安心して…」
はるかに向かって歩き出した木戸幽歌は吹っ切れた顔だった
幽歌「はるかの隣に居れる気がします!」
花恋「っとっと手を貸してくれないか!?誠が」
誠『ママがビクビクー?どういうことー?』
遺『あのーこれはー保健体育の授業ということっdー』
ゆりね『おい、ゆいっーー遺ーっ!!』
床にそこかしこにばら撒かれた薄い本があることに気づいた
十四音「はわわわ」
はるか「黄園さんが悪いよ〜慌てて大人の絵本に飛びつくから…」
カルミア『勉強熱心なのは良い事だけど皆んなの前では大人気ないね』
縫「アーシェラさん…以前から小学生を狙いにつけていたのは知っていましたけど…まさかそういう…」
霊歌「………(私では何も言えない)」
延子『陵辱されているのが自分に見えたのかな?もしかしてだけどこの表紙、陵辱されてるのアシュラ?いい着眼点と思うよ14♪氏』
ヨイチ「あ、あ、あ、アシュラ様!?」
アーシェラ「それだけ回収して燃やしなさい!今すぐに!そしてイデアっ」
縫「もう、人の家で…すみません」
羽礼『しかしどうだ、この光景を眺めているのも悪くないぞ?花恋よ』
ほぼ全員の元魔法少女達が集まるとは思ってもいなかった
しかし、確かに眺めているのも悪くないかもしれない
幽歌、貴方に降り注ぐ雪は温かいかな
高嶺の花は手で触れず見守ることこそに意味があると考え始める
『さて、今日は飲むか』
山は局地的に私も暖まる