withdrawal

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穂乃果 side in

──────時は少し遡る、神永隼人が校庭より逃げ出してランサー達がそれを追って校庭を離れてすぐ

「アイツ…なんでよりによって今来てるのよ!」

穂乃果は憤慨した、部外者であるはずのアイツが聖杯戦争を見た事に。

「マスター、どうするんだ?今なら例の陣だったか?を作れるんじゃねぇか?」

斧を肩に乗せたバーサーカーが穂乃果に尋ねる、確かに効率を考えればその方がいい、いいに決まっている。だがそれ以上に

「…今ここで時間をかけたらアイツがランサーに殺される」

目撃者を消すのは道理だ、それに昼のあれが見間違いでなければアイツは7人目のマスター、殺されてしかるべき立場にいる。

「じゃあどうする、助けに行くのか?」

バーサーカーは指示を仰ぐ、その眼は自分の考えなんて見透かしているようで…

「決まってるじゃない、助けに行くわよ。それに人避けの結界を貼ってなかった私の落ち度でもある。それで人死にが出るだなんて父様に顔向けできないわ」

真っ直ぐバーサーカーを見据え指示を出す。

「バーサーカー、アイツらを追うわよ。」

「よし来た!しっかり掴まってろよ!!」

その一言と共にバーサーカーに抱えられ夜の街を駆け出した。


そして、ライダーがランサーの槍で致命傷を負った場面に戻る


「アイツ、七騎目召喚したんだ。」

橋から少し離れたビルの上から状況を観察しながらバーサーカーが戦況に口に出す。

「不味いな、あのライダー、ランサーとの相性が最悪だ。良くて相打ち、最悪諸共串刺しだぜ?」

バーサーカーは冷静な判断を下す、このままではライダーは倒されランサーに主諸共貫かれるだろう

「…バーサーカー、アイツらを助けに行ってちょうだい」

穂乃果は判断を下す、今ここでランサーに勢いづかれるよりもライダーを残す方が得であると

「わかった、ちょっくら行ってくるぜ」

その一言と共に橋の上まで一息に跳躍したバーサーカー、やはり規格外の身体能力だ。

「私も向かわないと…」

その一言と共に橋に向かうためビルの階段を降りていった。


穂乃果 sideout


神永 side in

「…バーサーカーか」

現れた黄金の偉丈夫にランサーが苦々しい表情で口に出す。今ここで来て欲しくないものが来たような表情だ。

「おう、ランサー。戦いの途中に居なくなるなんてひでぇじゃねぇか」

そんなことを言いながら斧を片手で持ち上げる、それだけで規格外の膂力を持つことが理解出来る

「んで、そこで蹲ってるライダー。行けるかい?」

ライダーの方に目をやりながら斧をランサーに向ける

「む、ろん…この程度の傷で戦えなくなる訳が、無い…!」

そんなことを言いながら太刀を構える、右脇腹からは血が流れている、戦えるはずも無い傷のはずだ

「へっ!よく言った!んじゃあやるか!!!」

そんなことを言いランサーへ向かおうとした瞬間。


「ランサー、引きます。今ここでは勝ち目は無い」

神父服の男がランサーに向かって指示を出す。

「…よかろう!我が槍を持ってしてもこの2人を相手にするのは手間である、なれば必勝の策を携えた後に再び見えようでは無いか!さらばだ、悪徳のライダーと剛力のバーサーカーよ」

その一言と共に地面に槍を振るい土煙を起こす

「待っ、クッ…」

追おうとしたライダーは脇腹を抑え再び蹲る。

「っ!?大丈夫か、ライダー!」

ライダーへと駆け寄り傷を見る、傷自体は槍傷だけだが見ただけでわかる程の呪いが傷に残っている。

「…ここだと治療も何も無い、俺の家に…」

「あら、助けてくれたバーサーカーにお礼の一言もないだなんてだから貴方はダメなのよ、隼人」

ランサー達がいなくなった方からゆっくりと少女が歩いてくる、その顔は見たくもない女の顔だった

「ッ…美作、何の用だ」

苦虫を噛み潰したような顔をしている自覚はある、だがそんな顔をしなければ今すぐにでも逃げてしまいそうだったからだ。

「決まってるでしょ?バーサーカーがあなた達を助けたのだからその借りを回収しに来たのよ、ツケでもいいけど…そんなの嫌よねぇ?」

嫌味ったらしい顔をしながらこちらに声をかけてくる、すごくぶん殴りたくなったがそれ以上に気になる内容があった。

「バーサーカーが助けた?待て、一体どう言う」

「…アンタ聖杯戦争のこと知らないの?」

「知らない、家に人脈なんてものは無いからな」

「呆れた…わかったわ。そこら辺の話も含めてあなたにしてあげるから一旦貴方の家に向かいましょ、ライダーの治療もしなきゃなんでしょ?」

美作から言われた通りだ、業腹だがここはその提案に乗ろう。

「わかった…ライダー、歩けるか?」

ライダーを肩で支えながら声をかける

「問題ありません…申し訳ありません、あのような醜態を見せてしまって」

ライダーはしょぼくれている、傷や痛みではなく自分の不甲斐なさに押しつぶされそうになっていた。

「気にしないでくれ、それよりも早く治療しよう」

そう言って俺たちは一旦俺の家に向かったのだった


神永 side out


???side in

ビルの上、先程穂乃果達が戦いを観察していたビルよりもより遠いところに位置するビルにて一人の壮年の男と一人の女が煙草を咥えながら様子を見ていた

「…あれがランサー、ライダー、バーサーカーか」

「どうだ、アーチャー狙えるか?」

「へっへ、問題ない。どんな相手だろうとわしは射抜いてみせるさ」

「そうか、期待していよう…」

2人の影は夜に溶けて消えていった、聖杯戦争の火蓋は橋の戦いから切って落とされた。

???side out

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