vsアーロン

vsアーロン


「アーロン!!アーロン!!」


 ナミの叫びと自身の肩を指す音が、住民のいなくなった村に響く。


ガシッ

 

 ふいにその手を、後ろから近付いたウタが止める。

 振り向き、その姿を確認したナミの、自身に向けていた怒りがウタへと向かった。


「ウタ…!なによ!何も知らなかったくせに!」

「うん…知らなかった」

「私が!どんな気持ちであんたたちを探し続けたのかも知らないくせに!!」

「…うん」

「もう関わらないでって!言ったでしょう!!」

「…うん。言われた」


 叫び続けていたナミが、言葉を発することが無くなり嗚咽だけが響く。

 その声を徐々に静かになっていき———


「ウタ……。助けて……」


 ウタはその言葉を聞くと、被っていた麦わら帽子を脱ぎ、それをナミの頭に乗せるとすたすたと前へと歩いて行った。

 そして大きく息を吸う。


「当たり前だ!!」


 肌に響くような大きな声。呆然とその言葉を聞いたナミは、自身にかぶされた帽子を掴むと、ふと幸福だったころの記憶がよみがえる。



『ねェ、ウタ!その帽子、貸してよ』

『ダメ!これはシャンクスとルフィ以外には絶対に渡さないの!!』



「ウタ…」


 子供の頃、絶対に貸してくれなかった大切な宝物を頭に乗せられたことに気付いたナミから声が漏れる。

 ウタは、そのまま壁に背を預けているルフィのもとへ向かう。


「ルフィ。お願いがあるの」

「手を出すな…だろ?」


 ルフィは、彼女の言いたいことを先に読み取る。ウタは、その言葉に頷きルフィの目をまっすぐと見つめた。その覚悟を持った瞳の輝きを見て、ルフィは上を向くと少しだけ息を吐く。その願いを聞かない理由はなかった。なぜならその輝きに一番救われたのが自分なのだから。


「行ってこい!」

「……うん!」


 ルフィは再び歩き出したウタの後ろ姿に、彼女の父である赤髪の大海賊の姿を幻視する。


「いくぞ!野郎共!!」

「「「オオッ!!!!」」」


――――――


 アーロンパーク。

 先ほど、急に押し入ってきた二人組を、軽く追い払ったアーロンは仲間たちと共に談笑をしていた。


「おい…さっきの二人組はゾロの一味だと思うか…?」

「ゾロの?それにしちゃあ弱すぎる」 


ドゴォォォン!!


 突如、入り口が轟音をあげて破壊された。

 土煙の中から周りに4つの音符を携えた女が現れる。


「ねェ?アーロンっての、誰?」

「…あァ?アーロンってのは、俺の名だが?」

「私は、ウタだよ」

「…そうかウタ。てめェは何だ?」

「海賊」


 会話をしながらも歩みを止めないウタ。そこに二人の魚人が、おいおい、と道を塞いで声をかける。


「待てよ、てめェ」

「どこに行くつもりだ?まずは、おれたちに話を通してもらわないと困るぜ」

「コン…」


 ウタは男たちに答えることなく、おもむろに人差し指を立て左側の男のさらに左を指さす。そしてそれを右側へとスライドさせる。


「モート!」

「「ぐべェ!」」

「!!」


 指の動きに合わせて浮いていた音符の一つが、二人の魚人を勢いよく弾き飛ばす。飛ばした魚人たちには一切目をくれず歩みを進めるウタは、ラ~♪と声を上げると、ポフンと再び音符を一つ出現させた。

 そのままアーロンの近くで歩みを止めると、腕を上げアーロンを指さす。


「コン…」

「海賊が、おれに何の用だ?」

「フォーコ!!」


 ガシャーーーン


 ウタの言葉と共に浮いている4つの音符が全てアーロンに目掛けて飛んでいき、その体を奥の壁へと弾き飛ばす。


「うわああ!!アーロンさん!?」


 弾き飛ばされたアーロンは、瓦礫をどかしながら自分を飛ばした相手をしっかりと睨む。


「てめェは一体…」



「うちの航海士を泣かさないでよ!!」

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