Re:Dream
😊初夜を望んでいるスレ民多すぎ問題に直面。
スレ主は事態を重く受け止め、スレ民の飢えと渇きを満たすための策を講じるのであった…。
はい。初夜っぽいもの。実際には潔のメンタル回復記って感じになった。なんでだろうね。
※潔世一はパズルメンタル
OK?
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今日、俺の夢が死んだ。俺/エゴが死んだ。
あまりに美しく壊されるものだから、見惚れることしかできないまま。
人生最高の勝利の味を反芻し、喉を鳴らす。眼前には”最高の舞台、最高の勝利”をもたらした男。
シーツの上に縫い留める手などなくとも、翡翠の目が見つめている。その事実だけで、逃げ出す気など起きない。
束縛すら甘い陶酔となって包み込まれる感覚。このまま骨の一欠片も残さず食べられてしまいたい。
夢見心地に微笑む。あまく、やわく、そして何故だろう。脆い笑みを返される。
守ってあげたい。自然とそんな考えが浮かぶ自分に驚かされた。俺よりずっと強く美しい生き物を、守る? 俺が? 不思議だけど、すごく、いい感じ。
首筋に這わされる舌の、湿ってざらついた感触。息を吸い込むと胸いっぱいに冴の匂いがする。触れ合う体温を、その存在を感じる度にどうにかなりそうで、冴にも同じ気持ちでいてほしい。二人でならもっと強く、さらに深く、この先に進むのも怖くないと思いたいから。
「しあわせ」
熱っぽい息と一緒に囁くと、冴の肩が震えた。「耳、弱いの?」無言で首を横に振られる。じゃあもうちょっと悪戯してもいいよね。
この人のことを全部知りたい。外側も、内側も。そんな想いと共に、舌の先で形を確かめるみたいに耳殻をなぞる。「ん」熱っぽい息が零れる。嬉しい。俺でちゃんと感じてくれてる。
「すき」
そう。俺は冴が好きだ。夢を、エゴを殺されて、世界一になるための部品として飼い殺される未来が見えていても、それを幸福と感じてしまうくらいには。
夢という欠片/ピースの喪失は大きかった。けど、失くしたものがあるなら別のもので埋めればいい。
例えば、新しい夢。
『俺に魔法を掛けてみせろ、潔世一』
再会したあの日、冴はそう言ってくれた。約束も、出逢いすら忘れた薄情な俺。牙を抜かれて燻っていた俺を信じて、期待して、ここまで導いてくれた。
「舐めすぎだ」夢中で耳を舐られるのに耐えかね、冴が身を起こす。頬が色づいて、肌にはじっとり汗が滲んでいた。どんな味がするんだろう。舐めてみたいな。そんなことを頭の片隅で考えながら、見下ろす冴と目線を合わせる。
翡翠が潤んでいる。俺のことが欲しくてたまらないって、目を見るだけでわかる。
なんて、かわいいひと。すぐにでも全て差し出してあげたい。けど、俺なりのけじめをつけなきゃいけない。でないと、”新しい俺”に生まれ変わって冴を愛することができないから。
「冴は俺の魔法を必要としてくれた。けど、俺に魔法なんて使えなかった」
「…何を言ってる。お前のパスが、俺を…」
「聞いて。冴の魔法のおかげで、俺のパスが生まれ変わったんだ。美しく壊すサッカーに」
静かな水面に石を投じたみたいに、瞳が揺れている。俺の言葉が、冴の心を揺らしている。
「あの景色、感覚、感動…全部、お前にも返したいから」
手を伸ばし頬を撫でると、自ら擦り寄るような動きを見せる。気高く美しく、そして冷たい氷みたいな男。そんな男が俺に甘えている。興奮でどうにかなりそうだったけど、言わなきゃいけない言葉を慎重に選んで口にした。
「だからいつか、俺が世界一の魔法を掛けるよ。”さえおにーちゃん”」
”糸師冴を世界一のストライカーにする”。
それが俺の見つけた、新しい、最後のピース。