shall we dance !

shall we dance !

:)

!注意!

モブのみ

 └ドレスローザの女と男

捏造、自己解釈、ご都合主義、半端

明るくない



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ドレスローザにあるコリーダコロシアムは、本日の試合が終了したというのに、変わらず熱気に包まれていた。

今日の試合を熱弁する者達、はしゃぐ子供、スターに駆け寄るファンなどがおり、夕焼けに染まるコロシアムを包んでいた。


その中で、数名の女性に囲まれている男の姿があった。

その男は特別強い訳では無いが、観客からの人気は高かった。男は戦い方で人々を魅了した。男は、自分の数倍も体格の良い相手だろうと、真正面から対峙し逃げることはない。何度膝をつこうが立ち上がって最後まで諦めずに戦う。そして、勝敗に関係なく相手への敬意を忘れない。戦う時とはまるで違う優しげな顔立ちも影響しているだろうが、その泥臭さと真っ直ぐな瞳に好感を抱く者は少なくなく、その大半は女性であった。

控室では待機中の選手たちと仲良く語り合い、会場から出れば数名のファンに声を掛けられる。それが男にとっての日常であった。


だが、その男を物陰から睨む女が居た。じっ……とファンの女性からプレゼントを渡される男を睨んでいる。

不審者極まりない女であるが、男を睨むには理由があった。

実は女は男の妻であった。幼馴染であった2人は共に育ち、お互いを掛け替えのない存在とし、そのまま家族となった。男は『嫉妬深い踊り子を嫁にするとは』と揶揄され、女は『剣闘士と一緒になるなんて』と悲しまれても、お互いがお互いを思う気持ちの前にはどこ吹く風であった。


お互いのことを誰よりも理解しているからこそ、女は分かっていた。真っ直ぐで優しい男は、他人からの好意を断らない。覚えて欲しいと言わんばかりに色鮮やかな花束も、既婚者だと分かっていながら胃袋から掴まんと差し出された料理も、全て断らずに持って帰ってくる。挙句の果てには、ヘラヘラと笑いながら体中に赤いキスマークを付けて帰ってくる日もある。

妻である女にしてみれば憤慨である。


そんな女とは裏腹に、男は嬉しかった。花束を貰って帰れば、次の日に彼女が買い足した草花とともに部屋が華やかになるから。手作り料理を貰って帰れば、彼女のアレンジと隠し味の愛情で最高に美味しい料理へと変身するから。キスマークを付けて帰れば、酷く怒らせてしまうが、体を洗われながら丁寧に優しく体に触れてもらえるから。

今日貰ったばかりの新鮮な果実は、どんな変身を遂げるのかを想像しながら、いつの間にか先に帰ってしまった妻の待つ家へと帰っていった。



「ただいま」

「……おかえり」


頬を緩ませて男が玄関の戸を開ければ、迎えてくれた女の顔は明らかに不機嫌であった。そしてそのまま視線を下げ、両手に抱えられた様々な果実を一瞥しては、不愉快を滲ませていく。


「ねえ、それ……」

「うん、ファンの子から貰ったんだ

 ジュースにするのもジャムにするのも美味しそ」


男が言い終わるより先に、女は箒を手にして思いっきり振りかぶった。一昨日は包丁、昨日はワインの瓶。それに比べれば比較的平和だと笑いながら、男は軽々と避けていく。狭い玄関でひたすら攻撃する女と、それを難なく避けていく男は、近所の名物になるほど日常になっていた。

女が振りかぶり、男が避けて、野次馬が増え、振りかぶり、避けてそのまま手を取りくるりと2人で回る。ふわりと広がったスカートが落ち着くと同時に男が陽気な歌を口ずさめば、毒気を抜かれた女が合わせてヒールを鳴らし、手を取り合いダンスを踊る。野次馬も手を鳴らし、周りの人と手を取り合い踊り、踊り終わる頃には皆で笑い合う。中心の2人は互いを抱き締め合い、そして、手を繋ぎながら優雅に礼をして家へ戻っていけば、2人を見届けた野次馬は静かに解散していく。


そんな玄関の喧騒が、2人の愛するべき日常であった。


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テディベア

鳥のオモチャ

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