serial experiments lain×水星の魔女:ヌーノくん回顧録3

serial experiments lain×水星の魔女:ヌーノくん回顧録3

駄文書き※一話から見直して可哀想度大増量中

前書き※外伝みたいになっちゃった


生まれて初めて食べたトマトは、甘酸っぱくてこんな美味しい物があるなんて、心の底から知らない感情が溢れて処理が追い付きませんでした。生まれて初めて戦った相手はとても強くて、とてもとても充足した気分でした。生まれて初めて知らない人から親切にして貰った時は、なぜ悲しくないのに涙が流れたのでしょう?。

生まれて初めてエアリアル以外の仲間が出来たとき、私は社会の大きさに圧倒され自分の世界が如何に小さかったかを知りました。生まれて初めて相手に嫉妬心を抱いた時は自分でも理解が出来ず花婿の立場を誇示してしまいました、生まれて初めて自分の意思でやりたいことリストに自分の願いを追加しました、みんなも祝福してくれます。生まれて初めて母以外で大切に想える相手ができました、…やっと気が付けました、私は酷く異常だったのだと。

私はミオリネさんに泣きながら告白した、落ち着いてから二人だけで私の昔話を聞いてもらった

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水星では人が死ぬのは日常でした。足だけ、腕だけ、歯だけ見つかることもあります、私は怯えながらでもそれを回収し基地に持って帰ります。罵倒罵声暴力、いつもそうでした、相手からは感謝より嫌悪や怒りが返ってきます。生存者を発見できた時はご褒美が貰えました。チョコレートフレーバーのレーション、賞味期限がとっくに過ぎた軍人さん向けのお菓子、私はそれが好きでした、唯一知っている甘い食べ物だからです。救助に向かい生存者や遺体を回収し、基地に戻って結果次第で罵倒され罵声を浴び殴られる、そんな毎日でした。そんな毎日が数え切れないくらい繰り返されていました。でも今思えば不思議ですね?悲しいと思った事は一度ですらありませんでしたから。

いつだったか私はエアリアルのライブラリーから学校の存在を知りました、友達と机を並べ、美味しそうなご飯を食べ、恋したりスポーツしたりテストの点数に一喜一憂する…。私は一目見て憧れを抱きました、水星にあるのは狭い部屋にベッドと簡易トイレくらいですからね。私は年に一回、正確には378日と10時間32分17秒ぶりに会う母に学校へ行きたいと懇願してみました。電話越しでしたが母からは、水星の皆のために学んできなさい、って!。許しを得た私は生まれて初めて喜びの感情を自覚しました、エアリアルに報告した時は自分でもかなり興奮していたのを覚えています。エアリアルもみんなも私が学校へ行く事を祝福してくれました、寄せ書きまでくれて送り出してくれました。…寄せ書きってなんでしょうね?基地の誰も見送ってはくれないのに。

アスティカシア高等専門学園、私が編入する学びの園!、コックピットのモニター越しに遠くからでも分かるほど大きなコロニー!、水星から一歩も出たことのない私には何もかもが新鮮でした。不安はもちろんありました、友達できるかな?勉強ついていけるかな?殴られないかな?、だって私は私以外の同年代なんて見たことありませんし!。

私はぼんやり外を眺めていました、こうやって救助者を見つけては緊急発進してた癖ですね。…今思えばこの時こそが、17年と少し生きた中で一番愛した、私に愛を教え私を愛してくれた最愛の花嫁との最初の邂逅でした。

遠く丁度コロニーの真ん中程にバタバタと動く人影が見えました、私は酷く狼狽しました、水星ではあんな遮蔽物のないとこを漂う事はイコール即死だったからです。管制官さんにこの事を伝えつつ、急いで発進準備に取り掛かりました、管制官さんが何かいっていましたが気にしませんそれより救助者が優先です。私は全速力で現場に向かいました、エアリアルも張り切ってくれています!。救助者を傷つけないよう細心の注意を払いつつエアリアルの手で受け止め、救助者に声を掛けました。その人は私がコックピットに招き入れるや否や、あと少しで脱出できたのにあんたのせいで台無し!責任とってよ!、と。私と違い真っ白で本当に綺麗な人でした、でも此方でも返ってくるのは感謝でなく罵倒なのは落ち込みましたね!、今となっては些細なことですが。救助した彼女を管制の人に引き渡し、私はついにアスティカシアに到着しました!。リニアなんて初めて乗りました!巡回ロボットが挨拶してくるのも新鮮でした!、学園は私の知らない事で満たされていました。


一番最初に話しかけてきたのは今でも名前も知らない三人組でした、色々聞かれますが緊張?したせいか上手く答えられませんでした。唯一母のくれた髪留めについては問題なく答えられましたがこれは暗示の影響だったのでしょうね…。そうこう戸惑っているうち、周りの学生がヒソヒソ話をしているのに気が付きました、私は耳が良いので内容を聞き取れました。またトロフィー女が脱走失敗したってさ・お嬢様は今のホルダーが大嫌いだからな・おいっ!グエル先輩が聞いたら決闘だぞ?! 何がなんやら私には初めての言葉だらけで混乱します。ザワザワの原因は、あの綺麗な私の大切な、いやあの時は確か綺麗だけど怒って私を罵倒してきた怖い人って印象しかありませんでした!、私はとっさに持っていたノートで顔を隠しながら責任とりますと言っちゃいました。水星で怒られた時はこうやって顔を覆うんです、殴られた時にケガを少なくする生活の知恵ですね!役に立ちそうで安心しました。まぁただミオリネさんは、あの時の邪魔女!とこっちを指差しただけで殴ってきたりはしませんでした、驚きでしたね怒っても殴ってこない人なんて。

人生初の出来事に戸惑っていると、ペトラさん…でしたっけ?とフェルシーさん?って方がラウダさんと一緒にミオリネさんと嫌味の応酬をし出したんです。…私がきっとそのまま、異常に気付かないままだったなら後で三人とも殺してたと思います、大事なのはミオリネさんや地球寮の家族達だけだと思っていましたから。でも流石ミオリネさんです、口喧嘩なら宇宙最強だと太鼓判を押せます、言い負かして退散させちゃいました。

嵐のように過ぎ去った学園初の嬉しくないイベントのあと、私に最初に親切に声を掛けてきたのはニカさんでした。私の名前を知ってたのは今でも気になりますが、新入生?だよね?何かあったらいつでも声をかけてくださいね!力になりますから、って!。嬉しいのは勿論ですが見返り無しで助けてくれる!なんていい人なんだろう!と私は内心浮かれていました。その時でした、いきなり真っ暗になったと思ったら、決闘がどうとかでMS同士で取っ組み合いがはじまったのです。決闘?だし殺し合いでもないのだからとボケッと眺めていた私は案の定MSに轢き潰されそうになりました。その刹那、ミオリネさんが咄嗟に手を引っ張って走ってくれた上私を身を呈して庇ってくれて…思うんですがミオリネさんかなり優しいですよね、今の私なら多分泣いてたと思います嬉しさで。

砂埃が収まって視界が開けると、勝った方が高らかに勝鬨(かちどき)?を挙げていました、ミオリネさんがどうとか会社がどうとか、私なら喋ってる隙にグエルさんを殺害します…来たばかりの頃はそんな物騒なこと平然と考えてました、酷い人間ですね私。ミオリネさんは冷たく、最低、と罵倒して去っていきましたけど、それ私に向けられてたら自決したと思いますそれくらいキツイ言葉でした。


私は他者を信頼する事責任から逃げない事を母から何度も聞かされました、逃げれば一つ、進めば二つ、です。だからミオリネさんの言う責任を果たすため、ミオリネさんに何をすれば果たせるか聞きたかった、だけど学園は探すには広すぎました、責任を果たせない気持ちから冷や汗が全身から吹き出しました、多分それは恐怖のせいだったんでしょうね…。まぁなんとかミオリネさんの温室を見つけられました、最初は扉の前で様子を伺うだけでした、近寄りがたい雰囲気だったから。私は必死に責任取りに来たと伝えつつ聞き出そうと躍起になっていた、さっきの方は婚約者?と。ミオリネさんは苦虫を噛み潰したような顔で、決闘制度の事・ホルダーと花嫁の事、誕生日を迎えたら結婚させられる事……、私はやっと責任を果たせそうだと思いました、決闘で勝ってミオリネさんを自由にしてあげる事、これが学園生活で現状最優先事項となります。


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ミオリネ「……………」

ミオリネ「スレッタ?寝ちゃった?」

ミオリネ「…アンタが苦しんできたのは十分解った、」「夢もあの母親のことも忘れてさ…そうね、明日はなにしようか?デート?料理?アンタが好きなことやっていいよ、最後まで付き合ってあげるから」

ミオリネ「プロスペラがアンタに何させたいか知らないけど、私がさせない、アンタは安心してやりたいことやりなさい」「…一晩中付きっきりだったからさすがに限界…眠いわね…お休み、スレッタまた明日ね…」



━━━━━ジェターク家?━━━

ヴィム「なぜお前がいるんだ?」

グエル「父さん落ち着いて下さい」

ラウダ「地球寮に幽霊が出るって噂の正体なのか?」

レイン「仲直りしてるか様子見に行こうか迷ってたけど、大丈夫そうで良かった…」

マルタン「あのっ、おっお茶はいかがでしょうか…!」

ヴィム「いらん!」

まさかジェターク社のCEOとシャトルで鉢合わせするとは予想外だった…十中八九レインの仕業だろう。ヌーノはレインが裏で活発に動き回っているのを知らされている立場だ、何がそこまで彼女を駆り立てているのか?、いやあの二人の事だろう、余程懸念すべき事態が起こるのだ。

アリヤ「グスッ…実家のお茶要らないってティル…」

ティル「大丈夫、後で無理矢理飲ませる」

ラウダ「怖いことを言うな!後で必ず頂く!」

ヴィム・ジェターク、現ジェターク・ヘビー・マシーナリーCEO、本来ならこんな場所で遭遇する人間ではない。彼もまたレインに誘導されてここへ来たのだ、レインを昔から知る口振りから恐らく協力させるために。彼はレインが地球寮に過度に肩入れしている、(株)ガンダムを作らせたのはお前だろうと非難していた。彼女は会社設立はミオリネの独力だ、地球寮は好きで協力しているだけよといつものように笑っていた。

ヴィム「ではワイヤードの拡張計画はなんだ!デリングと何を企んでいる!」

レインは述べる、第七世代プロトコルで止まったままのワイヤードを進化させ、宇宙と地球のリアルワールドを繋ぐこれが私の計画だと。デリングとは協力を請う関係でしかないと強調してみせた。

グエル「第七世代プロトコル…ワイヤード?一体どういう…」

レイン「超高性能なネットくらいに考えてて?、第七世代プロトコルは間違った使い方さえしなければあちらとこちら、人と人を繋げるものだった、間違った結果の成れの果てが私」

ヴィム「フン!今更アーシアンとスペーシアンの隔たりを無くすつもりか?100年遅い!」

グエル「父さん!…それで繋がるとどうなるんです?」

レイン「ベネリットの影響にある宇宙と地球の一部しか及ばない私を全世界に遍在させられる、これでワイヤードは十分なノードを得られる。」「やっと昔みたいに皆が繋がれる」「孤独じゃなくなる」

ヴィム「世界支配の間違いじゃないのか?お前が本気なら何でもやれるだろう!」

支配なんてできない、ワイヤードは下層階層に過ぎない、出来ることはワイヤードからリアルワールドへ干渉する事で現実を歪め虚構を真実に変えるか世界をリセットする事くらいだ。

ヴィム「…レイン、お前世間話しに来た訳じゃないんだろう!、俺に何をやらせる気だ?」「お前が俺に会うときは厄介な頼みばかりだからな!」

レイン「ジェタークの艦隊、プラント・クエタに多めに送ってほしいの」「あと警護は厚くしといて、パーメットが濃い空間だと私は力を制限されちゃう、そうなると守れないかもしれないから」

ヴィムはテロか戦争を想起した、艦隊が必要な程大規模なら後者だろう。レインは両方の可能性を示唆した、私がここにいる事が知られていたら、と条件付きで。

レイン「第8世代プロトコルが完成したら、あなた達のMSに優先的に計算資源割いてあげる、凄いよ?ガンドアーム並みに起動するよ?」

ヴィム「チッ!本当だろうな?、今すぐ手配はしておくが、お前は嘘は付かなかったが隠し事が多すぎる、包み隠さず話せばどうだ?」

約束は必ず守るだからあなたも約束を果たしてほしい、彼女は信頼しているかのようにヴィムCEOに語る。彼も普段は考えられない程快諾してしまっている、今回だけだぞ、と一言述べたが。


ラウダが気になったのかミオリネが不在なのを訪ねてきた、仮にも社長なのだからこの場にいるべきでは?と。私は彼女は婚約者の介抱で昨晩から徹夜しており今は就寝中、婚約者が落ち着くまでは来れないことを説明した。私達は代理を任されている、だから問題ないと。

ラウダ「あの狂犬が一晩中看病だと?たかが誕生日までの偽装結婚相手に入れ込み過ぎだ」

レイン「ミオリネとスレッタは本気で結婚するつもり、誕生日待たずに結婚すら考えてる」

ヌーノ「俺に、自分の誕生日書き換えできない?って相談しにくるくらいは本気だからなぁ」

あんな田舎者のどこが兄さんより優れているんだ!、彼は激怒した。スレッタと結婚してもミオリネにはメリットがない、スレッタでは持ち株比率で過半数を越えられない、ベネリット総裁の座は他所へ渡る、デリングが許すはずがないと非難した。

レイン「メリットとか考えてないと思うな、だって(株)ガンダムはスレッタのための会社だよ?コンペ会場いたんでしょ君?」

マルタン「初め聞いたときは後悔したよ、とんでもない企業に入ったって!でもなぁ、あんな身の上聞いちゃったら助ける他ないじゃん!」

アリヤ「占いでおかしな結果が出たときからなんとなく察してた、巻き込まれた形だが後悔はないさ、ティルもいてくれるしな!」

ティル「うん、僕たちが支える」

グエル「スレッタ・マーキュリーに何かあったのか?」

ティル「社長から詳しい話は部外者には伏せろ、って命令されてる」

ヌーノ「聞いても気分のいい話じゃねぇもん。まぁ俺らは、地球寮はスレッタの家族扱い、らしいから…な」

オジェロ「ハァ…ついてねぇ、これじゃ社員じゃなくて人質じゃん…。まぁ俺だってそりゃ同情はしたけどよ」

どうやらスレッタは深刻な状態であるらしい、なにか俺が出来ることはないだろうか?、俺はスレッタと多少は関わりがある、助けになりたいと考えたっていいだろ?。スレッタが俺に助っ人依頼してきたあの時、端末が鳴ったあの時の怯え方は尋常じゃなかった、絶対なにかある。



スレッタ「……眠ってた?何日ぶりかな…、ミオリネさん…寝てる、また徹夜させちゃいましたね」

確か…今日はエアリアルをプラント・クエタに取りに行く予定、………お母さんがいるだろうな、何をされるんだろう私。ミオリネさんも地球寮のみんなも裏切りたくない…でもお母さんには逆らえない逆らえないようにされてる。

「そうだ!水星から持ってきた…、もしもの時はコレで…」

自動拳銃を懐に忍ばせ、決意を固めた、どうにもならなくなったらコレで死ぬ、ミオリネさんを独りにさせちゃうのは辛くて悲しいけど、誰かを殺すよりマシです。………使わなくて良いことを祈ります。


━━━━━━ペイル社━━━━


ニューゲン「ウフフ!!!ついに第8世代プロトコル完成したわ!!!」

カル「デスマーチなんて学生時代以来だったわ!」

ゴルネリ「予定より納期が縮んだ時は死ぬかと思ったわ」

ネボラ「モビルスーツそっちのけでやった甲斐があったわね!」

嘘だろ…2ヶ月しか経ってないぞ、うちの開発力そんなにあったのか?!エランは驚愕していた、レインの仕様書があるとはいえ凄まじい開発速度で異様な情熱でワイヤードの拡張計画第8世代プロトコルの実装を終えたのだ。ペイル社はモビルスーツ開発企業だ、これは本業を疎かにするほど傾倒するような代物なのか?。今期はかなり業績が良いだろう、兆単位の予算がベネリット内外から降りてくるからな!、正直理由がわからない!そこまでの事業費は必要ない、こんなのは年単位でやる仕事だ。口止め料代わりか?、エアリアルに関わるなと。



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???「第8世代プロトコルねぇ…今更地球圏のインターネットを更新してなんになんの?、衰退してそれどころじゃないっての」「宇宙と地球を統合?なんであのスペーシアン共のと統合しなきゃならんのよ!」

???「レイン?誰それ?ワイヤードの管理人?ワイヤードに管理人なんていたの?」

???「ソフィ、有名な話だ、旧世紀からワイヤードは管理人が代わってない」

ソフィ「死にかけの寝たきり老人でしょ?どうせ。なんで総帥は怖がってるのさ?私らが直接ぶっ殺せば良いじゃん!」

???「メンバーの何人かはレインを調査中に消息が途絶えてる、ニカも居なくなった、アイツはココ嫌ってたから裏切ったんでしょうけど」

ソフィ「怖いんだノレア!幽霊苦手だもんね!」

ノレア「ソフィ、噂知らないの?。レインはどこにでもいる、そしてワイヤードの神様だ、それがある時連れ去られた、連れ去った連中はレインを使って世界征服を企んだって」

たかがネットの管理人ごときが世界征服?馬鹿げている、ワイヤードは私も利用してるけど宇宙のインフラと比べたら旧式もいいとこだ。私が生まれる前からバージョンアップが停まっててナイツとかいう技術者連中が必死になって維持してた。そんな骨董品にペイル社が異常なほど莫大な、数十兆規模の予算を組んでワイヤードの拡張を僅か2ヶ月でやってしまった。ニュースでもこんなに急ぐ理由が不明と話題になっていた。今やワイヤードは骨董品から最新鋭の規格に生まれ変わり、全世界を繋いだ結果利用者は鰻登りに増え続けている。私のNAVIもオンボロだったのがタダ同然でばら蒔かれた最新鋭端末に交換された、実は内心嬉しかったが施しされたみたいで腹立つから黙ってるけど。

ノレア「そのレインが最近ワイヤードに帰ってきたらしい、管理人が戻って来てからワイヤードの治安が安定してる」






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