scene 3
俺は、自らの右手を有馬の下半身に滑らせ、やがて触れた有馬のその場所をいささか強めに撫でた。
「……ッ」
有馬が、目をつむって体を震わせた。
その強張った反応が。その感触が。
なおさら、俺の嗜虐的な部分を高ぶらせる。
「まだあまり準備も出来ていないようだ」
その敢えて下卑た言い方は、ただ、有馬の羞恥と煽ろうとしたもので。
「ホント……最悪………ッ!?」
有馬の言葉が終わる前に。俺は、わざと多少乱暴に、そこを軽く弄ぶ。
ひうっ、という有馬の声が聞こえた。
息が荒くなっている。
「痛ッ……もうっ……」
有馬は声で抗議をする。ただ、それ以上の抵抗は行わない。
ただ、じっとして、こちらの動作を受け入れている。
その必死な姿勢が、とても愛らしくて。
俺の中の衝動的な部分は、そのような卑しい部分は。その有馬の姿勢になおさら高ぶり。
俺のどこかは、そのような、制御できない俺の言葉に、行動に、その浅ましさに深く絶望する。
俺は、一体、何をやっているのか。
やめてくれ。
これ以上、有馬を、辱めないでくれ。
それは、確かに俺のどこかが。己自身が思ってる筈の気持ちで。
ただ、それは、欲望に突き動かされる俺には、何の影響力も持たないもので。
俺の目の前に居る有馬は、どこまでも愛らしく。
どこまでも辱めたいと、そう思える存在で。
俺は有馬の胸に顔を近づけ、その可愛らしい先端を、含んだ。
彼女のその部分は、僅かに熱を帯びていた。その温かみを口内で感じつつ、舌で弄びながら、強く吸う。
有馬がまた、びくんと震える。
俺は彼女を吸いつつ、片手で、彼女を弄び続ける。
目をやると、有馬は、両目をぎゅっと閉じて、ただ、俺の行いに耐えている。
顔を赤らめ、じっとしている。
抵抗もせず。
かといって、ただ受け入れるという姿勢も見せず。
「うっ……くっ……痛っ……」
苦痛が混じりながらも、その声は僅かに熱を帯びたもので。
いつしか、片手に感じる感触が、どこか異なったものとなってくる。
俺は、強く吸いながら。少しだけ、指を深く沈めた。
「は……あっ……」
有馬が声を漏らす。
俺は顔を上げて、有馬の顔を見た。
上気させた肌。
目には涙をためている。でも、こちらから視線を逸らすことはしない。
その愛らしさに、俺はもう一度彼女の唇を奪う。
「………ッ」
抵抗はない。俺はただ彼女の口内に侵入し、その柔らかな舌を弄ぶ。片手は、操作を続けながら。
彼女の唇を解放すると、彼女はふぅっ、と大きく息をつく。
「可愛いぞ、有馬」
「……そ」
有馬は涙目で、でも、不敵に笑って見せる。
そして、あくまでも強気な風で、言い放つ。
「そんな泣き顔で褒められても、嬉しか無いわね」
その言葉に、俺は一瞬止まる。
それは、まさに悲しんでいた俺自身に届く言葉で。
ああ、そうか、俺は泣いているのか。
あまりにも情けないまでに、あさましい俺自身に。
ひたすら有馬を傷つけ、罪を重ねている俺自身に。
ただ、それはほんの一瞬で。
俺の体を突き動かす、欲望的な俺自身は、彼女の声を聞いてどこか喜ぶ。
それは、有馬の声に、怯えと、恐れを感じたからで。
「なら……お前の泣き顔も見てみたいな」
有馬の顔が強張る。
俺は……一体、何を言っているんだ。
分かってる。
分かってはいるんだ。
俺は……俺自身は。ただ、有馬を、そのように、したいのだ。
俺は体を起こし、彼女を見下ろす。
その愛らしく、美しい顔が、気丈にこちらを見上げる。
そして、視線を下せば。その美しい裸体が。そして。
有馬は、じっと、こちらを見る。
「いいか」
俺は確認する。
「ダメって言ったら止まるのかしら」
「難しいな」
そうだ。これは確認ではない。
俺は、有馬に、ただ、次に起こることを予告して。むしろ、有馬を恐れさせようとしている。
「じゃあ、好きにしなさい」
有馬は、あくまで気丈に。
「まったくもって、こういうかたちは、不本意なのだけど」
少しだけ笑いながら。
ただ、その声は震えていて。
目には、どこか恐れも浮かんでいて。
とても、とても、必死で。
「なら、好きにさせて貰おう」
俺は楽し気に言う。
「ぶつけろ、と言ったのは有馬だからな」
その声に、有馬の瞳に、さらに怯えが浮かぶ。
やめろ。
改めて、俺のどこかが思う。
これ以上、有馬を、傷つけるな。
俺にとっては、ただ、汚れずに、そこで輝いていてくれることが、希望だったその存在を、傷つけるな。
有馬を……汚さないでくれ。
ただ、これから来るであろう暴風のような何かを予測しながら、それでも、ただ、健気に待って、耐えようとする有馬の姿に。
俺自身が、どこか、確かに、心を奪われていて。
俺は、有馬の腰を掴んだ。
「……ッ」
それだけで、彼女がどこか強張るのを感じる。
「何が、好きにしろ、なんだか」
俺の欲望にまみれた部分が、そんな風に彼女を嘲笑う。
彼女は答えない。ただ、じっと、待つ。
俺は、ゆっくりと、自らで彼女に触れた。
彼女の強張りが、さらに高まる。
気丈にこちらからを見続ける彼女の目にあるのは、覚悟のようで、そこには弱気な何かの心理も、怯えも伺えて。
「それだと、多分、辛いぞ」
俺はそのように、声をかける。
むしろ、それを予期させるために。
俺は、そのような苦痛を、有馬にむしろ与えたいと望んでいて。
だから、俺はその抵抗を楽しむかのように、いささか強引に、彼女に押し入る。
「───ッ」
有馬が、苦痛で顔を歪ませ、両目をぎゅっと瞑った。
びくりと体を震わせる。
背中をよじらせる。
そして有馬は、反射的に腰をずらせて、逃れようとした。
まだ、一度しか他者の侵入を許しておらず、また、その時の傷も癒え切っていないそこは、決して容易に俺自身を受け入れられるような場所ではなく。
だから、彼女の体は、素直にその苦痛を避けようとする。
だが、俺は逃がさない。
彼女の体を改めて強く掴み、固定し。
そのまま、俺は、その強い抵抗を一顧だにせず。
むしろ、その抵抗をあえて楽しみつつ、俺自身を、無理矢理、彼女の中に、深く、一気に埋没させた。
有馬の感触と、その熱。
「……………ぁぁ」
彼女の悲鳴のような、微かに漏れた、苦痛に満ちた小さな喘ぎが、聞こえた。