scene 2
俺はただ彼女の胸に顔を埋める。
肌着の布越しに、鼻腔いっぱいに、彼女の匂いを、吸い込む。
彼女を強く抱きしめる。
「ねぇ、苦しい……っ」
有馬は小さく抗議の声をあげた。
俺は顔をあげて、彼女を見る。
「全く……待ってよ、ね……」
有馬は俺を制止する。体をずらして俺から離れ、少しだけ体を起こす。
彼女の上半身には、乱暴に開かれたブラウスが残っている。
淡い色の、柔らかな素材。それが無残によれてしまっている。
彼女は、そのブラウスから腕を抜いて、ゆっくりと脱ぎ捨てた。
そして彼女は一瞬、脱ぎ捨てたブラウスに目をやる。
「安くないのよ、これだって。もー」
そんな風に、少しだけ、苦笑しながら。
ただ、その声にはやはり震えがあり。
その苦笑いにも、どこか、強張りがあり。
それでも、顔を赤らめながらも、どこか気丈にこちらを見て。
その彼女の姿勢に俺のどこかは愛おしさを覚え。
また、別のどこかは加虐心を高ぶらせ。
俺は再び有馬に手を伸ばす。
「だから待ってよ……っ」
俺は再び彼女にのしかかる。
はふっ、と彼女が息を吐く。
「服が傷むって言ってるのよ、もうっ…」
彼女は、少しだけ後ずさりながら、片手を下に伸ばして、シンプルだが、上品ななりのスカートをはずす。
「まったく……さぁ……」
震えながらも、あくまで平静を装うかのように。
彼女は、スカートもまた、小さく放る。
俺は彼女を見下ろした。
彼女の上半身をつつむ、薄い、柔らかな一枚布。
美しい曲線。
有馬は、こちらを黙って見上げている。
目はそらさない。
「……それで?」
わざと、こちらを煽るように。
俺の衝動的な部分が、彼女の上半身を覆う肌着に手をかけ、一気に持ち上げる。
彼女は抵抗せず、それに従う。
露になる彼女の肌。控えめな下着が彼女の胸を覆っていた。
俺はただ、衝動的に彼女に覆いかぶさり、体を密着させる。
「重たいっ……」
ただ彼女をまさぐり。『外そうと』する。
「もう少し、ゆっくり…」
有馬の声は、少しだけこちらを気丈に叱るようだった。
俺は無視して彼女に密着したまま、その体を撫で、探り、漁り続ける。
俺自身の着衣をなし崩しに脱ぎ捨てながら、彼女のインナーに手をかけ、それを引き下ろす。
彼女の体が強張っているのを感じる。
恐れ。緊張。
多分それこそが、俺の何処かが求めていたもので。
どうしようもない俺は、多分そのように、彼女が恐れていることこそを求めていて。
もっと抵抗してくれればよいのにな。その方が楽しみがいがある。
そんな感想すら抱いていて。
俺の別のどこかは。そんなどうしようもない俺を、とても冷淡に眺めていて。
本当に救いようがない。
有馬はもはや、ただ、俺のなすが儘にじっとしていた。
黙って、こちらの行動を受け入れていた。
俺はただ彼女の胸を乱暴に扱い。有馬はただ、赤らめた顔でそれを受け入れ。
そして、俺は、彼女の体をさすりながら、ゆっくりと手を下にずらし。そして、彼女から何かを取り去り。ただ、触れる。
有馬は声は発さなかったが、その体を小さくよじらせた。