麦わらの一味 マチカネフクキタル スリラーバーク編 単発集
モリカフェの人
スリラーバーグでの日常回
スリラーバーグの一室でコーヒーメーカーにお湯を入れるカフェと壁に寄りかかって寝そべるモリア
「クロコダイルが倒された、逮捕したのは東の海からやってきたスモーカー大佐ね」
「はい」
「嘘だろ?」
モリアにコーヒーを差し出すカフェ
「まあ、はい」
「だよなあ、キシシシシ。で、ニュース・クーの真似事なんざいらねぇ。教えろよ、一体だれがクロコダイルの奴を倒したのか」
ルフィの手配書とコーヒーを差し出すカフェ
「この人です。なんでもスモーカー大佐がアラバスタまで行った理由は彼を追ってだそうですよ」
「3000万ベリーぽっちか」
「次の手配書では1億に上がります」
コーヒーを飲みながらその言葉に笑うモリア
「キシシシ、期待のニュービーってわけだここまで来れたら潰してやるかな」
「それとクロコダイルの後任を決める会議が開かれます。あなたにも召集がかかってますよ」
「行かねえよ、めんどくせえ」
「そうでしょうね。わかりきってました」
「それとカフェ、一ついいか?」
「? なんですか改まって」
コーヒーを差し出そうとする
「お前はおれに一体どんだけコーヒーを飲ませる気だよ!」
「まだほんの3杯だけですよ」
「おう、お前の頭よりでかいカップに注いどいてよく言ったな。胃に穴が開いたらどうするつもりだ!」
反対側からの視点になり、コーヒーメーカーの巨大さが明らかになる
「その時は、ドクトルホグバックを呼びます」
「なるほどそれなら安心だ。てなるかバカ!」
扉がクマシーの手で勢いよく開かれる
「モリア様ヤッホー、遊ぼうぜ。て、カフェ! お前最近見ないと思ったらまたモリア様に絡んでるのか」
「こんにちはペローナ、コーヒーを飲みますか?」
「飲まねえよ、温かいココアがサイコーなんだよ」
舌を出して部屋を出ていくペローナ。カフェは淹れたコーヒーをモリアに差し出す
「そうですか。別に無理強いはしません」
「してるだろ! まさに今、おれに!」
「おかまいなく」
「おれのセリフ! いやおれのセリフでもねぇけど、とにかくコーヒーを淹れるのをやめろ!」
「ではゾンビに配ってきますね」
「ちっとは話をきけ!!!」
コーヒーメーカー一式を台車で運んで出ていくカフェ
最後に差し出された一杯(ペローナサイズ)を飲んで「くそっ、うめぇな」と悪態をつくモリア
なおアブロサムは透明になりずっと息を殺していた。猫舌だからね
モリアとマンハッタンカフェ 出会い編
「ご主人様、ご主人様!!」
不安そうに叫ぶゾンビたちが弓を構えモリアの鼻提灯を射抜いた。
横たわる巨体、ゲッコーモリアのいびきが止まり目を開ける。
「ああよかった、お目覚めになられた。モリア様、こんな早い時間に申し訳ございません」
「なんだってんだ……一体」
「お客様でございます、海軍から。王下七武海に関わる通達があるとのことです」
「……ちっ、めんどくせぇな」
「まあそう言わずに。面倒事を避けるためです」
モリアのボヤキに返答するゾンビでない声。
ギョロリと目をやったモリアは"軍刀を携えた"漆黒のウマ娘を見た。
「知らねえ奴だな。誰だ?」
「海軍本部大尉マンハッタンカフェ、あなたを担当する七武海監査を任されました」
なにかあるかと思って耳を傾けた相手の自己紹介だが、内容を聞いて隠すことなくため息をついた。
「俺を抑えるのに大尉ごときかよ。海軍ってのはよっぽど人手不足なんだな」
「簡潔に言ってそういうことです」
「?」
「長話になるなら場所を変えます、コーヒーも淹れましょう」
~~~~~~
巨大なテーブルに比べればミニチュアサイズのカップが並べられ、湯気を立てたコーヒーが注がれた。
モリアは自分の前に置かれたカップを手に取り一口飲みこんだ後、準備中にカフェが話した内容を要約する。
「つまり海軍は今『赤髪のシャンクス』の警戒で手一杯ってことか」
カフェは頷き自分のカップを手に取った。
「新しい皇帝が誕生すれば海は荒れます」
「シャンクスってのは昔『鷹の目』とやりあったが東の海で片腕失った雑魚のことだろ」
「その男です。……今でも雑魚だと思いますか?」
「………雑魚ならカイドウの野郎に潰されて終わりさ」
感情の消えた声で答え、コーヒーをもう一口飲んで歯を見せて笑ってみせる。
「で、監査って言うが俺のやり方にケチでもつける気か?」
あからさまに裏のある笑顔でカフェに尋ねるモリア。
それに対しカフェは首を横に振る。
「この島のゾンビには驚きましたが、世界政府非加盟国および海賊から略奪する分には問題ありません」
息継ぎ、コーヒーを飲み付け加える。
「過去には加盟国や海兵が襲われる案件もありましたが、七武海加入に伴い全て帳消しが規則ですので。例外にならなかった海兵には気の毒な話ですが」
「なら問題ねえな。帰って二度と来ないでくれ」
「いえ、本格的な調査と定期監査をします」
空気を無視した言葉、所詮ダメもとだったが。
(断ったり、こいつが帰らなかったりしたら『赤髪』の前に俺を潰す口実ができるってわけだ)
現状を推測し、素早く計算をして笑って見せるモリア。
「別に構わねえよ。ただ来るならまた今回みたいな話を持ってきてくれねえか、ここだと外の情報が入りづらくてな」
大嘘。海軍側の情報が欲しいだけである
「……コーヒーに付き合っていただけるなら茶飲み話くらいは」
「それでいいぜ、けっこう美味いし。どこのコーヒーだ?」
モリアの感想を聞いてマンハッタンカフェの尻尾が横に揺れだす
「私がコーヒーの木から育てた豆と仕入れた豆を混ぜたオリジナルのブレンドです」
「なるほどマンハッタンブレンド」
自分の趣味を誉められ、カフェは少し上機嫌になった。
「あなたはコ、」
「おはようございますモリア様、見てくださいこのさらに美しくなったシンドリーちゃんの姿! 素晴らしいでしょう!!」
あらたな来訪者たちの横やりにマンハッタンカフェの尻尾が垂れ下がる。
そしてやってきた男を横目で睨み、眉をひそめた。
「ドクトル・ホグバック。……海賊の仲間入りしているとは知りませんでしたね」
「ん―――んん? マン……ハッタンカフェ、ほんもの!!?」
「なんだおめェら知り合いなのか?」
モリアの疑問にカフェは眉をひそめつつ答えた
「一時期女優をしていたので、その時になんどか姿を拝見しました」
「いやはやこんな海の上で再会するとは思わなかった、びっくりだ。なあシンドリーちゃん」
「そのまま心臓発作をおこせばいい」
「何言い出すの!?シンドリーちゃん!」
かつての同僚の名前にカフェは女のほうを見た。
顔に縫い痕のあるメイド。彼女の面影を色濃く持つ似ても似つかぬ女性
ホグバックは軽い調子を装っていたが、冷や汗をかいていた。
カフェの頭にシンドリーとの死に別れる少し前のやりとりがよぎる
(結婚を申し込まれたんだけど、私って婚約者がいるでしょう? だから断ったのよ。姿が見えないのはそのせいだろうけど、私のほうも顔を合わせづらいから、今はありがたいかな)
「……ドクトル」
「な、なにかな?」
「せいぜい長生きしてくださいね」(彼女との再会がずっと先になるくらいには)
乱闘を警戒していたところにかけられた優しい言葉を受け、ホグハッグは踊りだしたくなるような喜びに包まれる
「まさか名女優にそんな言葉をいただけるなんて! ここに来てよかったぁ!! よーし、やる気がわいてきたぞぉ!!!」
「いや今、めっちゃ毒こもってなかったか?」
「モリア様、おれは研究に戻りますんでマンハッタンカフェさんのことよろしくおねがいしまーす! てシンドリーちゃんなぜおれの前に!?」
ホグバックの前をふさいで歩き出すシンドリーと目があったカフェは、友人の残した遺物について思うところはあったが意識的に切り捨てた。
(残った体は彼女にはもう関係ない話ですし)
カフェは残ったコーヒーを飲み干して彼女と、この島のことを割り切った。
「今日は挨拶に来ただけですので、これで帰ります」
手早くカップを回収し、扉へと向かう。
「おう、気を付けて帰るこった。うちのゾンビどもはやんちゃだからな。あ、それとおめぇ!」
「なにか?」
「あいつが入ってくる前になにか言いかけなかったか?」
「……別に、あえて口にすることでもない話です」
監査対象のコーヒーの好みを知ろうとしたなど、落ち着いてみれば小恥ずかしい思いだ。
カフェがごまかすように小走りに立ち去り、あとにはモリアが一人残された。
「きしししし、まあなんだっていいさ。おれを海賊王にする役に立ってくれるならな」
そんな独り言の後で二度寝をしようとして、コーヒーを飲んで目が冴えてしまったのでとりあえず食事をとることにしたのだった。
マンハッタンカフェとブルックの初遭遇編
ルフィが海に出るより5年前、霧の海域を永い間彷徨い続けたブルックは、崩れた壁を乗り越え木々の間を進んでいた。
「いったいなんなんでしょうねぇこの島は」
海の中に突如現れた島、閉ざされた海門。
恐ろしくもあり、久方ぶりの大地は懐かしくもあった。
するとカチャリっと森には不似合いな音がし、反射的にそちらに目をやる。
テーブルにポット、そして椅子。それに腰掛ける、何者か。
闇に紛れるような黒、全身を黒い衣装で着飾ったウマ娘の女性がそこにいた。
女性、ウマ娘、人!!
「あ、あ、あ、、、すいません、パンツ見せて貰ってもよろしいですか?」
「えっ……お断り、します」
当然接近に気づいていたマンハッタンカフェだったが、予想だにしていない挨拶に戸惑いを隠せなかった。
「ヨホホホホ、それにしても驚きです! 再び人に逢えるなんて!!!」
「見ればわかりますが、苦労してそうですね、コーヒーいかがですか?」
「砂糖なしのミルク多めでお願いします! 骨に良いので!!」
カフェに勧められるまま椅子に座るブルック。
"最初から数人余分に用意されていた"カップから一つ取り、コーヒーが注がれた。
「なるほど、ルンバー海賊団の全滅にヨミヨミ。興味深い話でした」
「お楽しみいただけてなによりです。ところでお嬢さんはどうしてここに?」
「この船に侵入者がやってきましたので、生け捕りに来ました」
「船? この島って船なんですか!?」
「あなたは知らないでしょうね。スリラーバークといって西の海で造られた世界最大の船ですよ。まあ、島でもいいです」
「ほ~う、なんとも凄まじいものですね。こんな大きなもので航海してるとは……」
「………」
「…………侵入者って、もしかして私のことですか?」
「……こと、でしょうね。流し樽開けたりしましたか?」
「開けましたよ!」
椅子が後方に傾き、飛び跳ねたブルックはステッキに両手をかける。
肉がそぎ落とされた身体は自覚しているよりも素早かった。
そして眼前、緩やかに立ち上がったウマ娘は右手で奇怪な装飾の刀を下に向けながらもう一方の手でスカートをつまみ名乗る。
「マンハッタンカフェ、ここでバリスタをしています」
ちらりとやや上目遣いに見られたのを受け、ブルックは背筋を伸ばしステッキを掲げた。
騎士団時代の経験が千載一遇の好機が過ぎ去ったのを伝えてくる。
「ルンバ―海賊団、船長代理ブルックでございます」
敗北が音の速さで近づくのを感じる。"怪物"ほどではないだろうがウマ娘は速く、重く、強い。
奇襲を得意とする自分の剣技では真っ向勝負は不利。
だが、それでもブルックは。
(不覚、ですが私は)
テーブルの横に歩き、間合いを取るカフェ。
ブルックは再びステッキに両手をやるが、刃の仕込みは当然バレているだろう。
闘いに移行しようとする脳裏に、先ほどの喋り倒す自分の会話に耳を傾ける女性の姿が浮かぶ。
(歓待してくれた淑女を、二度と得られないと思っていた時間を与えてくれた者を)
カフェが刀を脇に構え、前足に体を乗せる。
(作法に応じず斬り捨てるなど、出来るものか! 正対必敗。ですが勝つ!!)
「行きます」
「いいえ行くのは私です!」
カフェが地を蹴った瞬間、予備動作短く突進し、カフェの刃が振りぬかれるより早くその腕目掛けブルックが抜いた。
「鼻歌三丁―――"矢筈斬り"! これにておしまい!!」
停止し、刃を収めるブルック。そして利き腕を切り裂かれた淑女を介抱するため後ろを振り向こうとし
それより早く、脊髄を蹴り飛ばされた。
「惜しかったですね」
その手には柄飾りの装飾が真っ二つ斬られた刀
「刀!? 確かに手ごたえがあったのに!!?」
驚愕するブルックの顔面に蹴りを入れるカフェ、衝撃で前歯がぐらつく。
さらには存在しない脳が揺れ、意識が薄れる。
闘いにおいて遊ばないカフェは生かして帰す相手に手の内をさらすつもりは全くなかった。
ただの海賊ならまだしも歴戦の剣士。確かに"肉体"を切り裂いていたことに気づけば、次は負けるかもしれないのだ。
三度、蹴りを入れ動かなくなったブルックを運ぶため足を掴む。
「……ア、アフロ……は、かんべん」
「………なるほど」
カフェは思い直し、腕を握るとうつぶせにして引きづっていく。服が土に汚れていくが、当人の意思を尊重した。
ギリギリで刃を受け止めたゾンビ刀が、身をよじって何かを伝えようとしてる姿に次は口をつけてもらおうかと考える。
なんにせよ今日の仕事は終わりだ。元々休暇のために来ているのだから、彼のことは自堕落なここの主に任せようと決めた。
この後、ブルックが大立ち回りの末に侍ゾンビ・リューマに命乞いし逃げ出すことになるが、
その様をマンハッタンカフェは遠くから眺めていた。
どこかで聞いたような覚えのあるルンバー海賊団の名を心の中で繰り返しながら。