麦わらの一味 マチカネフクキタル スリラーバーク編 7~8話
モリカフェの人
これまでのあらすじ
数々の困難をくぐりぬけたフランキーたちと、影を取られたルフィたちはサニー号に集結。
ブルックが教える反撃の鍵は"塩"
ルフィたちはモリアたちに盗られた肉、影、ナミを取り戻すためスリラーバーグに再度乗り込む。
まっすぐマストの屋敷に走る一行は、オーズによって分断。
屋敷に乗り込めたルフィ、フクキタル、チョッパー、ロビンの4人はダンスホールでホグバックたちに遭遇する。
ルフィを上に向かわせ、残った3人で戦うことを決めるのであった。
第7話【海賊たちVS怪人たち】
モリアたちが集まっていたダンスホールに、フクキタル、チョッパー、ロビンの3人と
ホグバック、シンドリー、マンハッタンカフェの3人が、それぞれ並び対峙する。
フクキタルとチョッパーは怒りに満ちた瞳で、ホグバックを睨む。
「ホグバック、お前には失望した! おれはお前を、医者だと認めない!!」
「お姉ちゃんの遺体を、返してもらいます!」
「フォスフォスフォス、御見それしたドクトル・チョッパー。貴様、動物系の能力者だったのか。そしてフクキタル、補修部品のことなら、あれはもうエクリプスの素材だ。余りものだけなら返してやろうか!?」
「……あなたは、最悪の人です!!」
フクキタルがここまで怒るのは、生まれて初めてだった。姉を失ったあの日は、怒るほどの強さもなかった。
二人の視線を受けてなお、ホグバックは冷ややかに笑う。
「フォスフォスフォス……尊敬したり、失望したり、怒ったり、身勝手な奴らだ。昔もそうだ。おれは天才だっただけで、診たくもねぇ患者たちが次から次へとやってきた」
後ろに立つマンハッタンカフェは、黙ったままのロビンに視線を向け尋ねる。
「あなたはどうなんですか"悪魔の子"ロビン。会ったこともない他人を尊重する心にでも目覚めましたか?」
「……二人は私の仲間よ。怒りをぶつけたいなら協力するし、大切なモノなら奪い返すのも手伝う。当たり前の話でしょう?」
「フォスフォスフォス、そうか……ならいっそのこと、全員"没人形"にしてやろうか? こいつらによってな」
ホグバックが手を挙げると、後ろからジゴロウ(ゾロの影入りゾンビ)とペンギン(サンジの影入りゾンビ)が歩み出てきた。
ホグバックを除いて、4人がかりだ。
戦いの火蓋を切ったのは、遠距離から斬れる剣士たちである。
「百八煩悩砲!」
「嵐脚!」
ジゴロウの持つ三刀とカフェの両脚から繰り出される斬撃が飛ぶ。
見覚えのある攻撃を、フクキタルらは散開し避ける。
チョッパーはエニエスロビーの戦いを思い浮かべながら叫んだ。
「この技! 気をつけろ! こいつ、中身はCPか海兵だ!!」
「ハイ!」
「厄介ね」
(?)
ロビンは呟き、カフェは少し困惑し、ホグバックだけが全てを理解し笑った。
斬撃を避け一人離れたロビンにカフェが駆け寄り、刀を振りかぶる。
(ニコ・ロビンはわたしが"おさえ"ないと……)
「"二輪咲き"!」
ロビンが胸の前で腕を構えると、カフェの背中から腕が二本咲く。
カフェには完全に死角。だが振りかぶられた摩天楼には目の前のこと。
合図も無く察したカフェが握りを開くと、同時に腕が伸び、咲いた腕の片方に掴まるともう一方の腕を逆上がりのように回り小足で斬り裂いた。
『死角なし、です」
「くっ」
斬られた痛みを感じながら、関節技に行くのを断念するロビン。
目の前の、背中に刀をしがみつかせたカフェが人差し指を伸ばした掌底の構えを取るのを見て、額から冷や汗が流れでるのだった。
一方で残りのメンバー。
ジゴロウがチョッパーへ斬りかかり、ペンギンがフクキタルへ体ごと飛び蹴りに行く。
シンドリーは二人の後ろで皿を構え、投擲モーションに入る。
「三刀流、牛針!」
「首肉シュート!」
体ごと飛びかかってきたペンギンの蹴りに、フクキタルが吹き飛ばされる。
チョッパーは目の前のジゴロウの突きが両腕に刺さる中、驚愕に顔を歪めた。
「サンジが女を蹴ったのか!!?」
「サンジ? 誰だよ、オロスぞこの野郎」
「虎……」
ジゴロウが手に持った刀を担ぐ、その僅かな隙にチョッパーが飛び込んだ。
「撃たせないぞ!!」
「ウッ、てめぇ!」
両腕を掴むチョッパー、その側頭部を割り込んできたカフェの飛び蹴りが打ち抜く。
「……隙だらけです」
「あら、私を無視するつもり?」
摩天楼が背中を警戒しているカフェを、チョッパーから伸びた二本の腕が首と後頭部を掴み、もう一本の腕が白い粉の塊を振りかぶる。
「"三輪咲き・塩"!(トレスフルール・ソルト)」
塩がカフェの口に叩き込まれる。その背中では摩天楼が咄嗟に両手で自分の口を塞いでいた。
チョッパーが口に笑みを浮かべる。
「よし、とりあえず一人!」
そして、その腹にカフェの膝が突き刺さった。
(えっ?)
「塩が効かなかった……!」
困惑し一瞬動きが止まったロビンの首に、ジゴロウが刃を突き付ける。
「ごほっ、ごほっ、私に塩を食べさせて、なんの、つもりですか、ごほっ」
「フォスフォスフォス……」
離れたところでホグバックはチョッパーたちを嘲笑う。
「やっぱり勘違いしていたな。大方、カフェちゃんもゾンビと思っていたんだろうが残念、カフェちゃんはゾンビじゃねぇ。ゾンビなのはその刀、おれの傑作ゾンビ刀"摩天楼"だ」
「なんだって!?」
「フンギャッ!」
壁際では、フクキタルがうつ伏せに倒れ、その背中にペンギンが立っていた。
チョッパーは鼻先にカフェの刃が突き付けられるのも捨て置き、叫ぶ。
「ゾンビじゃないっていうなら、どうしてホグバックに協力しているんだ!! 友だちじゃないのか!! 死んでるのに動かされて、なんとも思わないのか!!」
その言葉に対し、カフェは踵をチョッパーの脳天に二度蹴り下ろし答えた。
「私の友人関係に、他所から勝手な話を押し付けないでください」
「フォスフォス、死んでるなんてヒデェこと言うじゃねぇか。目の前で生きているこいつらを見ても生きてねぇと言うのか」
『………』
「……その点については、私もドクトルと同意見ですね」
「ふざけるな! 動いているならそれでいいのか! 生きているならもっと自由だ!!」
チョッパーの脳裏に、ヒルルクとくれは、そしてアグネスタキオンの3人が浮かんでいた。
ペンギンに乗られた状態でフクキタルが口を開く。
「私は、正直生きてるとか死んでるとかわかりませんけど、お姉ちゃんがこんなことになってるのは怒っていますよ! シンドリーさんの家族もそう思うはずです。というかお姉ちゃんはどこにやったんですか!! フンギャッ!」
「うるさいぞ、てめぇ」
「会いたいのなら、会わせてやるとも。噂をすればってやつだ」
ちらりとホグバックが視線を向けた窓の外、そこに見える影が大きくなる。
そして、窓ガラスの下側が割られ中にウマ娘が飛び込んできた。
栗色の長い髪をしたウマ娘のゾンビだ。その顔はマチカネフクキタルによく似ている。
影を入れられてから、慣らしとして森の中を走りまわり、ここまで飛び上がってきたのだ。
「ハイ、オマチカネですね!!」
窓際に立つマチカネフクキタルの影を入れられたゾンビ、エクリプスゾンビの出来栄えにホグバックは上機嫌に笑った。
「フォスフォスフォス、もうお前たちの影は要らねぇ! 没人形にしてやる」
大仰に両腕を広げ、ホグバックは命令する。
「お前たち、"構うことはねぇ! 存分に叩き潰せ"!!」
「あっ!」
ほぼ同時であった。ホグバックが命令を下したのと、カフェが小さく声を上げたのと……、エクリプスゾンビの拳がホグバックの顔面に叩きつけられたのは。
「了解です!!」
エクリプスゾンビは笑いながら、叫んだ。
「なんだ!?
「あらあら」
「どうなってるんです!?」
「マズイ……ですね」
ゾンビたち、命令"一切構うことなく、存分に叩き潰す"受諾。
命令者、意識不明。制御不能の暴走開始。
<次回予告>
サンジが覗き見野郎に鉄槌を食らわせ、ペローナがそげキングの力を借りたウソップに敗れ、ゾロが侍・リューマを下す。
その一方、ダンスホールで暴走するゾンビたち。フクキタルは亡くなった自らの姉と対峙する。
混迷を深める戦い、勝つのは誰だ。
第8話【レジェンドウマ娘・エクリプス 前編】に続く
※おまけ:カフェが持つ見聞色の覇気について。本編では覇気の解説ができないため欄外で説明
アプリ版での不思議なお友達たちの適性をワンピース世界に落とし込んだ特殊能力
"生物でも物質でもないモノ"に高い適正を持つ。生物への適応は訓練中だが、スリラーバーグ時点ではうまくいっていない。そのため海軍では未習得扱い。
対象はわかりづらいが、要するに主に悪魔の実で生み出された存在のこと。
例・カゲカゲで作られたゾンビ、ゴースト状態のペローナ、ヨミヨミで蘇ったブルック、フデフデで描かれた絵、ソルソルで生まれたホーミーズ、ホヤホヤの魔人、
ハナハナは能力者の肉体なので対象外、ホビホビのように姿を変えてるだけの能力も対象外で相性は悪い。
ゾンビたちの能力や状態を即座に理解できるため、行動よりも先に反応ができる。
この特技を見込まれてスリラーバーグに派遣された。
ちなみにそれに加えてカフェは"念のため"どんなゾンビにも負けないくらいまでリューマゾンビと鍛錬を重ねているし、モリアは"せっかくだから"オーズを、カフェが絶対に勝てないゾンビとして作り上げた。
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※口調が同じでわかりづらいので、フクキタルゾンビと摩天楼のセリフは『』で区切っています。
これまでのあらすじ
ダンスホールでドクトルホグバックたちと戦闘を開始したフクキタル、チョッパー、ロビンの3人は
ジゴロウ、ペンギン、マンハッタンカフェ、シンドリーの4人と戦っていた。
その最中、マンハッタンカフェはゾンビではなく生きたウマ娘と判明し、一行は動揺する。
さらにはそこへ、フクキタルの姉のゾンビが乱入。
ホグバックの"存分に暴れろ"という命令を受け、ホグバックを殴り倒す姉キタルゾンビ。
天才外科医の手で姉キタルと融合した肉体は伝説のウマ娘、その名は……。
第8話【レジェンドウマ娘・エクリプス 前編】
髪が長いが、フクキタルによく似たウマ娘は指をこめかみに当てて呟いた。
『はて、命令があったから殴りましたが、なんで絶対に殴らないといけないと思ったんでしょうねぇ。不思議なものです』
むむむと唸るゾンビ。フクキタルは、自分の口調で姉と同じ声をした存在に困惑する。
「なんなんですか、こいつは」
さらにホグバックの命令を受けて動くのは他にもいた。
ダンスホールを飛び跳ね、走るのは動物ゾンビ、ペンギン(サンジの影入り)。
先ほどまで戦っていたフクキタルを捨て置き一目散に敵へと向かう。
「くたばれ、クソ野郎!!」
飛び蹴りをかます相手はチョッパー……ではなくその前に立つジゴロウ(ゾロの影入りゾンビ)である。
「てめぇ、なにしやがる!!」
「うるせぇ、俺のほうへ攻撃しやがって、邪魔なんだよ!!」
「お前が斬ろうとしてるところに割り込んできてるんだ! ふざけるな!」
蹴り、斬り、取っ組み合いながら、二人が壁際へと向かっていくのをチョッパーは横目で見ていた。
「あの二人、ゾンビでも絶対に相容れないんだ……」
視線を前に戻せば、剣先を突き付けていたマンハッタンカフェは刀を下ろし、ゆっくりと横へ歩いていった。
チョッパーの後ろにはロビンと起き上がったフクキタル。前にはフクキタルの姉。そして右側には左手に刀を構えたマンハッタンカフェが立つ構図になる。
『まぁいいでしょう、気持ちを切り替えて次に行くとしましょう』
思案を終え、フクキタルゾンビは右足を下げたかと思うと、一息にチョッパーへ向けて駆けだした。
「こいつっ!!」
チョッパーは右ストレートで迎撃。するとフクキタルゾンビの姿が、腕二本を残して消える。
『あなたに用はありませんよ』
右腕に手をついての倒立、さらにハンドスプリングの要領で飛び上がったのだ。
空中から視線を向けた先には、フクキタルの姿。
『消えなさい、役立たず!』
「きっ、"菊花掌"!!」
右手で咄嗟に放つはフクキタルが唯一習得したクラシック奥義。それを見てからゾンビは、
『"菊花掌"!」
左手で全く同じ技を放ち、相殺してみせる。
威力で劣るフクキタルの腕に衝撃が走り、大きく弾かれた。
堪えきれず、尻もちをつくフクキタル。
「痛ぁっ! じゃない、皆さんチャンスですよ。私は他に芸のないウマ娘! 菊花掌を使った今なら、なんの技も飛んできません!!」
『あなたはそうでも、"私は"違いますよ~』
「えっ!?」
フクキタルゾンビの、先ほどとは鏡移しのように構えられた右手。
振りかえったチョッパーは間に合わないと感じながら駆け出し、叫んだ。
「やめろ!」
『"菊花掌"!』
フクキタルとフクキタルゾンビの間に、影が差す。
「……"菊花掌"」
横から割り込んできたのは、マンハッタンカフェ。
重なる二つの手から放たれた衝撃は、行き場をなくし右斜め前の壁を破壊した。
『なんですと!?』
『"嵐脚・小"』
左手に逆手で掲げた摩天楼の小足から鎌鼬が飛び、フクキタルゾンビの目を狙う。
同時にカフェは左膝で蹴りを入れ、人差し指を伸ばした掌底を握り、指一本を立てた拳を作る。
「"指銃"!」
フクキタルゾンビの左こめかみに、カフェの指が突き立てられた。
「!?」
……かに見えたが実際には当たる寸前のところ、フクキタルゾンビが左手で指を握りしめて止めている。
人差し指を掴んだゾンビは、カフェの体をそのまま腕と膝の力だけで持ち上げて見せた。
カフェは投げられながらも咄嗟に刀を上へと放り、庇う。
("鉄塊")
ゾンビの足元へ叩きつけられる衝撃を、身を固くすることで耐える。
だが、仰向けになったカフェの眼前でフクキタルゾンビは足を上げ踏みつけにいく。
『割り込んでくるのでしたら、加減しませんよ』
「やめろって言ってるだろ!!」
今度はチョッパーが割り込み、フクキタルゾンビを殴り飛ばした。
地に着いた方の足で跳ね、ダメージをころして飛んでいくフクキタルゾンビ。その先には、今も争う二人のゾンビ。
二人の間に着地し、無造作に両手で二つの攻撃を受け止める。
「なんだこいつ!」
『邪魔ばかりで、むかむかしますねぇ』
「邪魔なのはお前のほうだろ!」
ペンギンとジゴロウは飛び込んできた邪魔者に攻撃を放つが、ペンギンの蹴りは肌を傷つけることなく、ジゴロウの剣技は未来が見えているかのように容易く躱されていく。
ゾンビたちの争いが始まる中、チョッパーはマンハッタンカフェを睨み、尋ねる。
「どうして助けた! お前は敵じゃないのか!!」
「……後輩を、見捨てるのは性に合わないので」
地面に手をつき体を起こし頭上に手を差し出すと、落下してきた摩天楼がその中に納まった。
「それに、もう敵味方の問題ではありませんよ。彼女の肉体はエクリプス、並大抵のウマ娘とはワケが違います」
「エクリプス! それって、トレセン学園に伝わる、ただの伝説じゃないんですか!」
フクキタルの勘違いを、ロビンは静かに否定する。
「いいえ、"唯一抜きんでて並ぶものなし"その語源は、実在したウマ娘よ。当時、誰も相手が務まらなかった、レジェンドウマ娘・エクリプス」
「……彼女が暴走している今、争う手を止め抑え込む必要があります。さもなければ」
言葉を区切ったカフェの視線の先を追ったチョッパーとフクキタルは、驚愕に目を見開く。
この短い時間でフクキタルゾンビ、エクリプスが二人のゾンビを倒していた。
カフェとの会話に意識を向けていた数秒の出来事だ。
飛び上がりエクリプスの頭を狙って蹴るペンギンの腹に頭突きをし撃ち落としたエクリプスは、そのままジゴロウと正面から相対した。
ジゴロウの鬼斬りを見切り、先んじて両腕を右手と左足で押さえこみ頭を左手で掴み固定した。右足の下にはペンギンの体がある。
そしてエクリプスが、ふんっ、と気合を込めた時、勝負はついた。
ジゴロウは刀を取り落とし、顔をアイアンクローで掴まれもち上げられ、ペンギンは踏みつけられたまま身じろぎすらしていない。
それを見ながらカフェはしれっと言葉を繋いだ。
「さもなければ、全滅することになります。……私も命は惜しいので」
話は終わりだと言うように刀を構えたカフェは前に出て、エクリプスと向き合う。
その後ろでチョッパーとフクキタルは視線を合わせて頷き、続いた。
ロビンだけはマンハッタンカフェの嘘に気づいていた。
真実は最初の一言だけ。あとはおそらく、全てが嘘。
"フクキタルが死んだ時点でゾンビも動かなくなる"という能力を考慮すれば、"フクキタルの影が入ったゾンビが暴走しても全滅する可能性は低い"
さらに、彼女が自分の想像している通りの存在なら"命を惜しんで海賊と手を組むことはない"。
彼女の狙いも想像がつくが、"フクちゃんが死んだらその時点で終わる話でしょう、嘘が下手な女ね、あなた"と口に出すことはどうしてもできなかった。
(弱くなったわね、私)
ロビンは一番後ろに立ち、黙って構えた。まずは目の前の脅威が第一だ。
第9話【レジェンドウマ娘・エクリプス 中編】へ続く