like a frog staring at a snake
requesting anonymity「先生、もう歩き回って大丈夫なんですか?!!」
ダンブルドアとの話を終えたばかりのハリーは、校長室を出てすぐのところに今年の「闇の魔術に対する防衛術」の教師である青年が立っているのを見て声を上げた。
「お心遣いありがとうハリー。本当に、優しい子だね」
それだけ言って校長室に入って行った青年を見送ってから、ハリーは言いたいことと訊きたい事がたくさんあった事を思い出したが、それはお互い様なのだとすぐに気づいて、黙ってその場を離れた。
「まずは礼を言わねばの。わしの代わりに生徒たちを守ってくれた事と、フレッドとジョージにしっかりと言伝を渡してくれた事。そしてミネルバの為に怒ってくれた事と、ハグリッドを守ってくれた事を。ありがとうございます、先輩」
校長室の中央に佇み深く頭を下げた相手に、青年は笑顔でヒラヒラと手を振る。
「やあアルバス。おかえり。待ってたよ。フォークスもおかえり。元気そうだね」
校長室の散らかり様など気にも留めず気軽に言った青年に、ダンブルドア校長もまた気軽に返す。
「案の定、呼ばれましたな。先輩」
ダンブルドアは楽しそうに笑っている。
「呼ばれちゃったねえ、案の定」
青年も楽しそうにニヤニヤ笑っていた。状況から考えると、こんな反応をするのは魔法界でもこの2人くらいだろう。
そして「じゃ、早速行こうか」と青年が言い、ダンブルドアも「参りますかな」と返して2人で顔を見合って笑う。
「「ウィゼンガモットへ」」
英国魔法省本部地下最下層、ウィゼンガモットの大法廷に50人の評議員が勢揃いし、中央に立っている2人の「被告人」を見下ろしていた。
「どうしても気になる事が有るんですが、発言してもかまいませんでしょうか?」
片方の被告人、こんな状況にもかかわらず面持ちに神妙さの欠片も無い気楽な笑顔の青年が真っ直ぐ手を挙げて恐る恐る訊いた。
「許可します」
そう言った人物が議長というか裁判長というか、なんかそんな感じのやつなのだろうとぼんやり考えながら青年は気になっていた事を訊いた。
「僕ら2人のこの扱いの差は何です?」
青年は自分の隣の、内側にトゲが大量に着いた檻のようなものの中に入らされている全身ピンク色の服で固めた魔女が、檻の外側から左右2人の闇祓いに杖を突きつけられている一方、自分には枷すらなく、杖を構えてもいない隣に佇む若い闇祓いが微笑みかけすらしてくるという明らかな待遇の差について「法廷」に問いかけた。
「1つは罪状の差です」とその裁判長らしき老魔女が穏やかに答える。
「もう1つは減刑嘆願の数の差。つまり言ってしまえば人望の差ですね。ここ数十年音沙汰が無かった引退した魔法省の元役人達から山程吠えメールが届いたそうです」
そこまで訊いて、青年はその声の正体にやっと気づいた。
「マッチョドラゴンのお姉さんだ!!!辞めたって聞いてたのに!」
「グリセルダ・『マーチバンクス』 です。100年くらい振りですね?辞任したけどこの裁判だけは参加したいと無理を言ったら裁判長をやれと言われましてね」
そして、今回限り職務復帰したウィゼンガモット最高齢のマーチバンクスは厳粛な顔に戻って宣言した。
「開廷」
その声に従って、マーチバンクスの隣の男性が口を開く。
「この裁判は、同時に同地点で発生した2つの事案を取り扱う。2人の被告人は、お互いの事案の目撃者であり証人でもある。まず、被告人ドローレス・アンブリッジ。貴様は去る6月17日、正当な理由なくルビウス・ハグリッド氏に対して闇祓いを動員して攻撃を試み、さらにこちらの人物に対して磔の呪いを繰り返し行使した。間違いは無いか?異議があるなら発言せよ」
檻の中のアンブリッジは、落ち着かない様子でキョロキョロと四方八方を見回し続けている。その姿は、以前の傲慢さが滲み出た態度とはかけ離れていた。
「あ、あの、ル、ルビウス・ハグリッドは半巨人です!あんなものはホグワーツに置くべきではありません」
そのアンブリッジの発言を受けて、周囲を囲む50人の裁判官達の何人かが顔を手で覆って天を仰ぎ、また何人かは明らかな嫌悪を顔に浮かべていた。
「それは今回の件と関係がありませんし、半巨人のホグワーツ入学を禁ずる法もありません。そしてルビウス・ハグリッド氏のかつての嫌疑は3年前のハリー・ポッター並びにロナルド・ビリウス・ウィーズリーの功績により冤罪であった事が確かとなっており、如何な理由を考えてもあなたの行いを正当化するものは何もありません」
マーチバンクスは落ち着いた口調でアンブリッジに告げた。
「証人とその補佐をここへ」
その声と共に、青年が思っていたより多くの人物が大法廷に入室してきた。
「あ、あのときの闇祓いのお嬢さん!元気そうだね」
声を掛けられたその若い闇祓いの魔女は一瞬ビクッと身を竦めたが、すぐに気を取り直して裁判長マーチバンクスを真っ直ぐに見据えた。
「では、6月17日の夜、何があったのか順を追って教えて下さいますか?」
発言を促されたその闇祓いの魔女はまだ怯え気味だったが、ゆっくりと口を開いた。
「私と同僚達は、アンブリッジ被告の指示でハグリッドを攻撃していました。ハグリッドは止めろと言うだけで反撃しませんでした。そこにマクゴナガル先生が現れて、私達はマクゴナガル先生が杖を抜く前に失神呪文を放ちました。そして倒れたマクゴナガル先生にアンブリッジ………被告が杖を向けたところで、向こうからマクゴナガル先生に近づいてきているドラゴンの存在に気づきました」
裁判官達は彼女の発言に静かに耳を傾けている。
「ドラゴンは私達とマクゴナガル先生の間に入ってそこに腰を据え、その影からこちらの青年が現れました。青年は杖を振ってハグリッドの小屋に私達が点けた火を消し、すぐ杖を仕舞って私達にも杖を下ろすように言いましたが、私達は下ろしませんでした。そして私達が呪詛を放ちましたが、全て躱されました。私は杖を奪われて折られ、失神呪文を唱えようとした同僚はハグリッドに殴られて吹っ飛び、気絶しました。そしてアンブリッジ被告が『磔の呪い』をこちらの青年に唱えました」
その証言に法廷の裁判官皆が息を飲んだが、まだ続きがあった。
「青年は特に抵抗も反応もせず、私達とハグリッドに『見たか?聞いたか?』と確かめました。はい。たった今自分に向けて唱えられた『磔の呪い』の事をです。そしてこちらの青年は、そこで初めて杖を取り出してアンブリッジ被告に向けましたが、特に何も呪文を唱えていませんでしたし、無言で何かを行使したようにもみえませんでした。アンブリッジ被告はハグリッドの事を『半巨人の証言を誰が聴くものか』と言った後ものすごい剣幕で『磔の呪い』を連呼しましたが、青年は変わらず何の反応も示しませんでした」
裁判官達は、ある者は天を仰ぎ、ある者はアンブリッジに嫌悪の視線を向け、あるものは話の続きが気になる様子で身を乗り出している。
「私はそこでアンブリッジ被告の頭からなにか薄ぼんやりしたものが流れ出ていて、それが青年の杖の先に集まっていっているのに気づきましたが、それが何だったかはわかりませんし、青年が何をしたやら検討もつきませんでした。ハグリッドがそのモヤモヤした何かについて青年に訊ね、青年は『喜びと安らぎだ』と答えました。そして『貰うのも癪だし使い切るか』と言った青年は『サーペンソーティア』を唱えて、するとモヤモヤが光って、杖の先も光って、バジリスクが現れました。モヤモヤは消えていました。私は、バジリスクが目を閉じている事に心から安心しましたが、もう立つ事もできませんでした。そしてバジリスクがアンブリッジ被告の前まで行くと、アンブリッジ被告は倒れました。そして青年は私達に帰るように言い、私達は急いで倒れた同僚とアンブリッジ被告を抱えて逃げました。アンブリッジ被告が死んでいないと気付いたのは、アンブリッジ被告を担ぎ上げようとした時です。そして立ち去ろうとした青年はよろめいて、ハグリッドに運ばれて行きました」
ざわざわし始めた法廷を、裁判長マーチバンクスがガベルを鳴らして黙らせる。
「結構です、ありがとう。ルビウス・ハグリッド。今の証言に異議はありますか?」
旅行かばんを抱えたハグリッドは「ありませんですだ」とだけ答えた。
「同時刻に行われていた天文学のO.W.L.試験会場の窓から生徒たちと共に見下ろして一部始終を目撃していた魔法試験局のトフティ教授、及び証人として出廷した彼女の同僚であるその場にいた闇祓い複数人から同じ証言を得ており、闇祓いに関しては真実薬を用いての聴取も行いましたので、只今の証言は事実である事が確認されています。さて、貴方にいくつか質問があります。まず、ハグリッド氏の小屋の火を消したあと杖を仕舞い、そのまま磔の呪いが自らを襲っても暫し杖を取り出さなかったとの事ですが、それは何故ですか?」
裁判長マーチバンクスの問いに、青年は気軽に笑って答えた。
「だってそれが理由で今ちょっと僕に有利でしょ?だからです。しばらく杖無しで、呪いとか『盾の呪文』とか唱えない方が後々裁判で有利だろうなって思いました」
「それで自分の命が危険に晒されるとは考えなかったのか?」と横から訊いた裁判官に、青年はなおも笑顔で答える。
「命が危険なのはマクゴナガル先生の方だったと思うよ?それに正直、闇祓いが何人居ようが居まいが大して変わんないし。アルバスとヴォルデモートが1ダースずつ居るとかなら話変わってくるけど」
そう言って笑う青年に言いしれぬ恐ろしさを感じる法廷の中で、裁判長マーチバンクスは至って冷静に裁判を進行していく。
「つまり貴方は杖無しで闇祓いから杖を奪ったのですか?」
青年は「そうです」と気軽に答える。
「この場にお集まりの皆さんも、ちょっと『自分が杖を構えるところ』を想像してみてください。どうです?力の限り握り締めてますか?そんな事しませんよね?杖なしで『アクシオ』ができるなら、1番杖を軽く握ってる人を見極めて不意を打つだけで簡単に奪ってしまえます。そしたら折るのは簡単ですよね?細い木製ですから」
そこで書記官の魔女が手を挙げて発言の許可を請うた。
「許可します。リータ・スキーター」
「貴方の身の上と『罪状』については書くなと厳命されておりますから、あたくし言われたとおりにしますけれどね?本当に本当ざんすか?現役の魔法省の高官が貴方に『磔』を?それも繰り返し?だとしたらなんで平気な顔してられたんざんすか?」
その質問は皆が気になっている事だった。
「1つには、こちらのドローレス君が、例えばあのベラトリックスとかと比べた場合『磔の呪い』に熟達していなかったこと。つまりどうにか耐えられる範疇の苦しみだった。そしてもうひとつは、磔の呪いって耐えられるなら無抵抗で食らって平気なふりしたほうがいいんだよ。そうすると相手が勝手に驚いて慌ててくれるから」
その回答はリータ・スキーターを絶句させた。
「さて、無抵抗の人間に対しての磔の呪いの複数回行使。刑罰は決まっています。被告人ドローレス・アンブリッジをアズカバンで終身刑とする事に賛成の者は?」
裁判長マーチバンクスの問いかけに、法廷を囲む50人の裁判官全員が挙手した。
「では決定とします。続いて、その『バジリスク』について。バジリスクはA級取引規制の対象であり、繁殖飼育及び譲渡その他の取引が禁止されています………」
裁判長マーチバンクスは意を決して発言する。
「では、ニュート・スキャマンダー。アルバス・ダンブルドア。ルビウス・ハグリッド。ハリー・ポッター。その蛇を、こちらへ」
ニュートとダンブルドアが杖を抜き、ハグリッドが抱えていた旅行かばんを開ける。その中から現れた巨大な蟒蛇はその頭の上に不死鳥を留まらせた状態のままウィゼンガモット大法廷の床をほとんど占有して、裁判官達のほとんどが反射的にギュッと目を瞑る。勇気ある、若しくは無謀な数人が薄目を開けてその姿を確認し、大蛇が目を閉じている事に安堵して恐る恐る目を開けた。そして裁判長マーチバンクスは落ち着いて進行する。
「スキャマンダー、ダンブルドア、ハグリッド、ポッター。その蛇はバジリスクで間違いありませんね?」
間違いありません、と4人が声を揃える。ハグリッド以外の3人はバジリスクに杖を向けており、そのバジリスクの頭の上に佇む不死鳥は裁判官達を見つめている。
「どうやって『サーペンソーティア』でバジリスクを創り出したのかは、この場で取り扱いません。問題はこのバジリスクの継続飼育を許可するか否かです。禁じられているのは厳密には『許可無く飼育すること』で、魔法生物規制管理部とウィゼンガモットの正式な許可を得て飼うのなら違法ではありません。尚、過去これが許可された記録はありませんし、おそらく当該条文の制定当時『この許可を出す』事は想定されていなかったものと思われます………」
即殺処分だと信じていた裁判官達が声を上げるが、裁判長マーチバンクスは構わず話を続ける。
「ではハリー・ポッター。通訳をお願いできますか?そのバジリスクは今何を言っています?何か話しかけて、そのバジリスクの『思考』を伝えてくれますか?」
そう求められたハリーは、ずいぶんマヌケな行いだという気がしながらもバジリスクに蛇語で〈や、やあ。僕はハリー・ポッター。君の名前は?〉と問いかけた。
〈オミニス。そいつがくれた名前だ〉
〈い、いい名前だね。目を開けないの?〉
〈開けるとみんな怖がるから〉
〈君は視線で生き物を殺してしまえるよね?〉
〈できるけど、あんまりやりたくない。やれって言わないよね?〉
〈言わないさ。あの人の、君の飼い主の事、どう思う?〉
〈僕を創った人。イイヤツ。退屈しないよ〉
〈僕が前会ったバジリスクは君みたいな感じじゃなかったよ〉
〈そうなの?でもこれが僕だよ。お腹すいた。チーズケーキ食べたい〉
会話内容をハリーから伝えられた法廷は唖然となり、アンブリッジが声を上げる。
「嘘に決まっています!そんなバジリスクが居ますか?!!!」
裁判長マーチバンクスは、落ち着き払って自分の対面、法廷の反対側に居たひとりの裁判官に問いかけた。
「ハリー・ポッターは嘘を言っていますか?」
フードを目深に被っているために顔も年齢も伺いしれないその魔法使いは穏やかな口調で質問に答えた。
「言っていません。僕も同じ内容を聞き取りました裁判長」
そう言ったその魔法使いが手に持っている杖の先が赤く明滅していることにハリーは気づいたが、何の魔法を行使しているのか、何故それが許可されているのかわからなかった。
「何を証拠に!何を根拠に!貴方は一体誰です?正式なウィゼンガモットのメンバーではないでしょう!」
そう言われてその魔法使いは、アンブリッジの方に顔を向けて口を開く。
〈黙ってろガマガエルめ〉
ハリーはそれが蛇語だと気づくのに数秒かかった。
そしてその魔法使いは青年と向き合う。
〈まーたお前はそうやって人の名前を勝手につける。昔から変わらないんだから〉
「裁判長、発言よろしいでしょうか?そちらの被告人に訊きたい事があるのですが」
蛇語を止めたその魔法使いは裁判長に「許可します」と促されて青年に問いかける。
「なんで『オミニス』って名前にしたんだい?」
「だってコイツすごく優しいんだよ。僕にチーズケーキ分けてくれようとするんだ」
そして以後しばらく法廷ではニュート・スキャマンダーとルビウス・ハグリッドという2人の専門家と、2人の蛇語話者、そしてダンブルドアを交えた激しい議論が交わされたが、その内容と結論は狂乱してわめき続けるアンブリッジに裁判官の1人の老人が横から言った
「そうは言うが結局お前も、他の誰も死んどらんではないか。お前は目を見たのだろう?だのに生きとるではないか。それが如実に示しておる。それにお前達は一発の呪詛も浴びておらんし、向けられてすらおらん。ただ一方的にさんざん呪詛を乱射して小屋を燃やした挙げ句、1人は森番に殴られ、1人は杖を折られて、お前はよりにもよって磔の呪いをやたらめったら連発した上で、まとめておどかされて逃げてきたのだ。どちらに非があるか論ずる必要があるか?」
という発言に集約されていた。議論が落着を見ると、裁判長マーチバンクスはバジリスクに語りかけた。
「私は正直まだ怖いですが、目を開けてくれますか?目を見てお話しましょう?」
そう言われたバジリスクは相変わらず頭の上に不死鳥を乗せたままマーチバンクスの鼻先まで顔を近づけ、目を開けた。
「おやま、きれいな目だね!私ゃバジリスクの目なんて見るの初めてだよ!!」
そう言って豪快に笑ったマーチバンクスの雰囲気の変わりように彼女の事をよく知らない若い裁判官や闇祓い達、そしてダンブルドア以外の証人とその補佐達も驚いたがそれが老教授マーチバンクスの素の態度なのだった。
そしてアンブリッジがなかなかの数の闇祓いに杖を突きつけられたまま連行されていった一方、青年とバジリスクのオミニス君は
「かばんの外に出さない」
「どうしても出すなら目隠し必須。そして事前に申請しろ人員派遣するから」
「それ連れて国境越えるなら事前に申請しろ」
「ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術の教授の職を今年度限りで辞する事」
という破格の甘い条件で無罪放免となったのだった。しかも最後の条件に至っては、元から1年だけという条件でダンブルドア校長と契約したので意味を成していない。
ハグリッドから旅行かばんを受け取り、その中にバジリスクを収めようとした青年は先程の蛇語話者の魔法使いに声をかけられた。
「ひさしぶり。直接会うのは何年ぶりだろうね」
「イギリスに来るのだって随分ひさしぶりだろう?またすぐ帰るのかい?」
「そうだよ。そうするべきだってダンブルドア君も言ってたからね」
そして「また手紙書くよ」と約束して別れた青年はバジリスクとその頭の上の不死鳥を旅行かばんの中に収容した後、さっきの若い闇祓いの魔女を見つけて声をかけた。
「お嬢さん、僕とお茶しませんか!………あれ、その杖」
「ヒッ………!!!あ、えっと、ダンブルドア校長先生が直してくださいました」
まだ青年に怯えているその闇祓いの魔女はしかし、それを克服しようと努力しているようだった。
「あ、あの、私、ハグリッドに謝りたくて……………マクゴナガル先生にも…………でも勇気が出なくて………」
そう言ったその若い闇祓いの魔女に青年は「じゃ、一緒に行こうか」と優しく微笑んだが、それが生徒や後輩を導くときの笑顔ではなく美人とお近づきになるチャンスを逃すまいとしているときの笑顔であることに、ダンブルドアだけは気づいていた。