kidくんとgrnくん

kidくんとgrnくん

ジャスゴルとソダレベが香っておりますわ ご注意くださいませ


(kidくんとgrnくんが二回目に会うお話ですわ)

(BRFのことは職場とかそんな感じで……擬人化で考えていただけると読みやすいかと思われますわ)

 

 

「また会ったね」

 もの珍しい白混じりの尻尾に、キッドがおやと思ったのも束の間。艶やかな毛先が翻ってどこか楽しそうな表情をした彼と目が合った。

「マイネルグロン、さん」

「覚えててくれたんだ」

 もともと知らなかったわけではないのだが、それをあえて指摘するのもどうかと思ってキッドは曖昧に微笑んでみせた。というか苦笑いをした。ここで働いていて知らないわけないだろう、という意も込めて。

 キッドの思いが伝わってるのかいないのか、恐らくはキッドが何を考えているかなど気にしてもいないグロンが微笑み返してくるのに内心冷や汗をかきながら口角を保ち続ける。考えていることのわかりにくい相手はあまり得意ではない。

「ダノンザキッドさんって、なんか実際会ってみるとイメージと違うよね」

「イメージ? 俺のこと知ってた……んですか」

「うん」

「えっ……なんで……?」

 接点などなかったはずだ。せいぜい親同士が仲が良すぎるくらいに良いくらいか、しかし親の友人の子供の話などそう聞くものでもないだろう。たとえゴールドシップがジャスタウェイのことが大好きだからといって、その息子の話を自分の息子にするだろうか。少なくともジャスタウェイはゴールドシップのことが大好きだがキッドにゴールドシップの息子の話をしてくることはなかった。ゴールドシップ自身の話は飽きるほどしてきたが。

 そんなことをうんうんと考えるキッドを見て不思議そうにグロンは言う。

「だって、俺たちの世代のホープフル王者でしょ」

 言われて、そういえばそんな肩書きもあったなと思い出す。世代G1の勝利が大きな意味を持つことは重々承知の上だが、それももう三年以上も前のことだと言うのに。

「なんかもっとうるさい感じかと思ってた」

「うるさい……」

「うーん、熱血って感じ? もっと遠慮がない感じかなって」

「まあ、よそ者ですし」

「大丈夫? 父さんにいじめられたりしてない?」

「いや、むしろ良くしてもらって……ます」

「ならいいけど」

 口ではそう言いつつもまだ何か言いたげなグロンは、うーんと唸りながらキッドの顔を凝視してくる。思わず顔を逸らしてしまいたくなった。

「あ、そうだ。これ」

「これは?」

「俺の連絡先。父さんに何か言われたりしたら連絡していいから」

「えっ、いや、でもそんなこと……」

 キッドがもたもたと取り出した携帯を奪い取って、グロンが勝手に画面を操作するのをぼんやり見つめる。しばらくして眼前に「ほら」と奪われたはずの携帯が突きつけられた。

「登録しといたから」

「あ、えっと、ありがとうございます?」

「そろそろ行かなきゃ。じゃあね、キッドさん」

 キッドの返事も待たずに駆けて行った背中を見送って、どうしたものかと携帯の画面を見つめる。アイコンの屈託のない笑みと目が合った気がして、どうにも気まずくなった。

 

「気にしないでいいよ」

 ふと。後ろからの声に振り返ると先ほどまで対峙していたそれとうり二つの顔と目が合った。——ユーバーレーベンだ。

「たぶん連絡先知りたかっただけだと思うよ」

「そっ、そうなんですね」

「だから、連絡してあげたら喜ぶんじゃないかな?」

 わたしもソダシちゃんに連絡しようかなー、なんて独り言を漏らしながらキッドの横をレーベンが通り過ぎていく。ひとの話を聞かない一族だなあと思いつつ、案外怖い一族でもない気がしていた。

 

(連絡、かあ)

 レース頑張ってくださいとか、いやここは無難によろしくお願いしますとか挨拶から始めるべきだろうか。あまり話が続かなそうな話題はよくないのではないか。考えるほど袋小路に行き詰まる気がして、咄嗟に思いついた一文を勢いのままに送信した。なるようになれ、いやなってくれと念じながら。

 

『今度のレースが終わったら、食事にでも行きませんか』

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