if:ラストダイス2

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…プチッ


「ぁ?ァ…あぇ…?♡う゛あ…♡」


ルフィ、ルフィ。大丈夫、分かる。

消えてない。彼は…


「アハハッ♡や、ぁ?♡ヒュッ、あ゛ッ♡」


……ルフィ、は。分かる。


「アヒャ…♡ハ、ぁ?お?あえ…?♡」


じゃあ、わたし、は?


「はぁ、ァ?あ、アハッ♡やだ…♡」


あれ、やだ、うそ……


「ひえ、ひゃ…?♡きえちゃ……ァ?♡」


やだ、やだ、やだやだやだ


「ァ、あ゛?」


いや、やだ

もどれない、もどらない…やだ

わたし、は…?

わたしは…?


「あえ、らっ…け?♡…アハッ♡」


いや、いや、きえたクない


「ろォッ、れも…♡いっ、か…ァ♡」


いや、いヤ…や、ダ……



ふと、今までで一番強い漂白が襲う。

ぎゅうぎゅうと締め付ける様なそれは、もう疲弊しきって、擦り切れている自分をトドメとばかりに快楽の渦に叩き込む。


あつい、なに?

わからない……きもちいい

きえてしまうのに、こわくない

ただただ あったかくて、やさしくて

あんしんする

きもちいいな、これならいいな

これで きえちゃうなら…べつに、いいや


こわくないよ ありがとう


するりと、彼の手から【私】が滑り落ちていった。

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「ウタ、入るぞ」


ノックをしてルフィが入った部屋は彼女の音楽活動をする為に誂えた防音室。仮眠も取れるようにベッドも確かに置いていたから半ばウタの自室の様になっている。まさにそのベッドの上で、ウタは髪を解いて、上体だけを起こして虚空を見ていた。


だがルフィが入ってきたと分かると、スゥ…と視線を動かし、彼を捉えるとへら、と力無く微笑み、その口から小さく「ルフィ」と零す。

それだけ。

「どうしたの?」と聞くわけでも、駆け寄るわけでもない。

あの空間から帰ってきてからウタはずっとこの調子だ。寧ろ、ルフィ相手だから多少の反応が返ってきたまである。

チョッパー曰く、本来なら神経を焼き切る程の過剰な刺激を絶え間なく与えられた事で普通の生活において感動したり、感情が揺れる事が難しくなってしまっている…という事らしい。

更には、恐らく自我が酷く崩壊しかけている為に、自分の名前はおろか、自分に関する事がよく分からない状態だった。


あれから医務室で目が覚めたウタに駆け寄ったルフィに対してウタは嬉しそうに抱きついた。最初こそ、ルフィと同じく生還を喜んだと思うのも束の間、ルフィルフィと愛おしそうに名前を呼んで、子供の様に擦りつくウタの様子のおかしさに「ウタ?」と声をかけたのだが…


「?うたって、だあれ?」

「は…」


絶句したルフィに改めてくっつこうとするウタを慌てて止めてチョッパーのカウンセリングが始まり…その結果を聞いてウタを支えねばと決めた。


繋いだ手の力がドンドン弱くなっていくのが不安で目を向けた時、彼女の様子があまりにおかしくて、あまりに消えてしまいそうで抱きしめたルフィの腕の中で、ウタは歪に、幸せそうに笑っていた。その笑顔に気を取られて、彼女の手が離れてしまったあの日をルフィは忘れてはいない。


「甲板行かねえか?今日はすげえ星が見れるんだよ」

「…うん」


ベッドから降り、ブランケットを羽織るウタを横目に、ルフィは彼女の作業机の上にある五線譜を見る。

何も書き足されていないそれが、あの日から彼女が止まったままであると言われている様で苦しかった。

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【わたし】はウタというらしい

らしいというのは、ルフィがそう呼んでくれるからその名前に反応するだけで、自分がそうであるとは思えないからだ。

ある時から以前の事を【わたし】は知らない。覚えてないとは違う気がする。


ルフィが話す【私】だけ、知らない。


時折ルフィは彼の大事な麦わら帽子を見せてくれる。それをくれた大事な人の話をしてくれる。

ルフィが大切に思うなら【わたし】にとっても大切だなとは思うけど、その考え方は違うらしいから、前の【私】と【わたし】はきっと違う。


【私】はどんな風に世界が見えただろう?

【わたし】と違って、いろんな物が、きれいに写ったりしたのだろうか?


【わたし】は、いろんな物を見てもよく分からない。本当はさむさも、あつさも、よく分からない。だけどルフィがしんぱいするから、今夜もこうしてブランケットを羽織って、ルフィについていく。

ルフィと繋いでいる手の部分が、唯一あたたかいと思う。

ルフィが何か言葉を自分にくれる事をうれしいと思う。


何も分からないけれど、ルフィからのものは何故かここちいい。彼に触れられる部分はとてもあたたかいから、ずっと触れていたいと思う。


「ほら、すげェだろ?」

「……」

「寒いか?」

「…たぶん」


ルフィが折角指を差して教えてくれているのに、その星空に何を感じて、どう返すのが【私】らしいか分からないから黙っていたら心配させてしまった。

でも、【わたし】がそういうとルフィがくっついていてくれたから、訂正はやめた。


ぽすっと彼の肩に頭を置く。その部分がブランケットよりあたたかくて、好き。

好き、あなたが好き。

ルフィが好き。


【私】にとってルフィはなに?少なくとも、【わたし】にとっては愛しい人。空虚な【わたし】に熱を注いでくれる人。


ルフィにとって【私】はなに?

もし、【わたし】があなたの望む【私】に成れたなら…あなたは【わたし】を好きになってくれるかしら?


一つの楽譜を塗りつぶして、上から違う人が全く同じ音楽を手掛ける事が出来たとして、それが同じ歌かは分からない。


でも【わたし】は、愛しいあなたの為なら【私】に成るわ

だから教えて?あなたの知る【私】の事を

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