【ifルート】punk ass chump

【ifルート】punk ass chump


(文章力がないので短いです。ダイジェスト形式。オリジナルキャラがやけに出張ります。ガッツリというほどではないですがキャラの死亡描写と殺害描写があります。)




――――――――――目が、冴えている。

酷く、混乱している。

なのに、落ち着いている。

冷や汗が、止まらない。


「お前、ら…」


いない。

いないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいない。

どこ?何処へ行った?おれの仲間は何処へ行った?

……………。

なぜ?なにが、あった?

目の前に広がる無数の屍をじっと見つめる。

自分がへたり込んでいるのが分かる。それなのに、立ち上がろうとしても力が入らない。

自分が自分でなくなってしまったように。肉体を乗っ取られてしまったように。自由を奪われたように。

それなのに、頭だけはやけに回っている。

理解を拒絶しているのに、処理するのを拒んでいるのに、勝手に分かっていく。

痛みと苦しみの中、溢れ出ている自身の頭からの血が影響したのか。

冷静に、理解をしてゆく。

やめてくれ、頼む。


倒れてる仲間を、相棒を、自分は、

溢れ出て、落ちていく血を見つめるしかできない。


後悔、している。無力さを、感じている。憎悪を、感じている。


諦めを、感じている。

そうして理解した。

“自身の行いは全て無意味でしかなかった”と。

気付けば彼の手には、何もかも無くなっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「にしても、あんなうまく死なせてくれるとは!!」

「………、……。」

「どうやった!!?」

「首を、絞めました。」

「へえ、能力は使わなかったのか!!」

「はい。」

「あれを使えば、もっと簡単に殺れたんじゃないか!!?」

「そうかもしれません。」

「なら次はそうしろよ!!?」

「分かりました。」

けたたましく喧しい男の声に、人間味を感じない機械的な男の声が応える。

声どころか顔や動きまでもが喧しい男に対し、赤髪の青年の方は無表情かつ無機質的。正しく真反対といった感じだ。


「次は気をつけろよ!!」

「はい。」

話はそこで区切られたのか、若い青年の方は後ろへと下がる。


「…………情けねえもんだな。確かアイツ、“最悪の世代”の一人だろう?」

そう言ったのは随分とカッチリとした服装の男だった。その場自体が、軽い雰囲気の男はともかく態度に対し比較的ラフな格好をしている青年ですら浮くような雰囲気だったこともある。尋ねるような、青年への皮肉のような、そんな聞き方をしていた。

「ああ、そのことですか…!」

男は――――そう言ってニヤリと笑う。先程の快活な雰囲気に合わない陰惨な笑みを浮かべる。


「実は、少し前に、“アレ”を拾いましてね!」

「拾った?」

「ええ!船で息も絶え絶えのところをおれが命の恩人に!!といった具合で!!」

「へえ…なら今、彼が貴方に従っているのは…」

「勿論、おれが命の恩人だからですよ!!恩には仕事で返せとよく言うでしょう!?だからここでヒットマンをしてもらっているんですよ!!元が海賊なら人を何人殺してもオッケーでしょうしね!!!」

ハキハキと快活に、趣味の悪い最低な話をする。見た目と態度だけは好中年と言えなくもないのにその部分が酷くアンバランスだ。

「では、今の彼の名前はなんて?」

「“ガウス”です!!!ユースタス・キャプテン・キッドなんて長い名前、あんなボンクラにはいらないでしょう!!?」

「…違いないな。見る影もない。」


「お呼びになられましたか。」

「おお、ちょうどテメェの話をしていたところだ!!」

「そうですか。」

ガシガシと乱雑に頭を掻いてくるボルトに抵抗する様子すら“ガウス”は見せなかった。

「それで、ボルトさま。」

「ああ!!」

「いいんですか。」

「ああ!!やれ!!」

「おや、一体何の話を、」

男が話を聞こうと動いた、そのときに


グチャリ

キッチリとした服装の男に、ナイフが突き刺さった。

「ッっっっヅア"アアアアア"アア"アアアア"ア!?!?!?」

飛んでいったナイフが、右手の指を吹き飛ばした。

「いやー、申し訳ない!!!」

飛んでいったナイフが、左目を潰した。

「………」

飛んでいったナイフが、片腕を刺した。

「あ"ああああ"!い"あ"、ああ"ああ"あああ!!!」

飛んでいったナイフが右足を抉った。

「ここでアンタに死んでもらわないとおれたちが困るんだ!!!」

飛んでいったナイフが、首元めがけて刺さった。


「だから、ここで死ね!!!」

飛んでいったナイフが、頭に、一撃。

グヂャリ

ボルトは男を足蹴にした。

この男は、最期まで怨嗟の声をあげながら、絶命したのだろう。

これに至るまでにも、何回も、死んでいる。

反撃で、頭を撃たれた。ボディーガードに刺殺された。先に、消しておいて本当に正解だった。手足を潰しておいて、よかった。


「ガウス!!」

「はい。」

地面を見る。血が、肉片が、そこらじゅうを飛び散っている。

「それ、片付けといて!!!」

「分かりました。」

「よろしく!!!」

これも、また、仕事の一部だ。


ーーーーーーーーーーーーーーー



死んで、いた。気がついたら、みんな。


「…キラー、」

おれが生き残ったのはキラーが壁となり庇ったからだった。おれよりも薄い体が、貫通されて、体の一部をまろびだしながら、死んでいる。


「っ、ヒート、ワイヤー、」

交戦しようと、足掻いていたのが見て取れた。ヒートは、地面に血溜まりを作っていた。ワイヤーは、壁に血の跡を付け崩れ落ちていた。

みんな、そうだった。


「……バブルガム、パパス、ヒップ、ギグ、ダイブ、クインシー、ブギ、エマ、レック、UK、ジャガー、ハウス、ポンプ、ホップ、モッシュ、ディスクJ、モアイ、コンポ、っ…」

まだ、仲間が、倒れているのに。動かなくなった身体が、冷たくなった身体が、色を亡くして。


「あ、あ、」


今までの『死』に意味なんて無い。

だから仲間は、相棒は、親友は、死んだ。

じゃあ、そもそも、全部意味なんて、無かったじゃないか

『死』を前提とした、こんな、終わりなら。



「おれは、なんの、ために、?」



ブチリ、

自分を繋ぎ止めていた何かが切れる音がした。



ああ、そうか。

おれは、ただのマヌケってことか。



「………あ」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


ーーーーーーーーーーーーーー


「ずいぶんと…ラッキーだったな。賞金首の死体なんて。」

「ああ!首さえ切って海軍に送れば金が入ってくる!金がおれたちも足りねえんだ、ありがてえな!」

「……おい、そこのやつ…」

「どうした!!?」






「まだ、息がありそうだぞ」

「……………………………、……………。」

もう、何もかも。どうでもよかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「次のターゲットはコイツラだ!!金のためだ、殺してこいよ!!!」

手配書を見つめる。見知った顔な気がした。

正気に戻るな。一度でも自覚したら気が狂うぞ。



ゆっくりと、屍の、血の海の中を、歩いて行く。

「ユースタス屋!正気に戻れ!」

うるさい。黙れ。

「ギザ男!やめろ!!」

やめれるか。どうしようもない。

殺さなくてはいけない。こいつらを、殺さなくては。

だって、そう、命令された、から?

………あれ?

あれ、あれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれ


「…あ」

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

投げる。手に持っていたナイフを勢いよく投げつけた。磁力を与え、方向をコントロールする。

ナイフは、体力を多く消耗したトラファルガー・ローの身体を貫いた。

「っトラ男!」

「ッッッ!!!!俺に構うな、アイツを…!」

あれだけ深く刺さったなら、死の外科医はもう一息だろう。磁力を更に与え身体にナイフを沈めていく。ぼたぼたと血が、地面に落ちる。

「ッッッッッッァあ"あ"あああ"あああ"あ!!!!!」

「!、トラ」

麦わらの背後に立つ。手に持っていた、厨房から奪った、包丁を、振り翳した。

「!?、あ」

「ゔああああああああああああ“あああああああああ“あああ“ああ”ああああああああああああああああああ“あ“あ!!!!!!!!!!!」

刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。

ゴムの身体が、皮膚が、肉が、ブチブチと音を立てて千切れていく。

殺せ。

殺せ。

殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!




「はーっ…はーっ、はっ…」


「…ゔ、ぁ」

「あ”、が、あ」

もう、息も絶え絶えだった。身体に風穴がいくつも空いていた。おれが、あけた。


「…………………、

あー…あ、う、…、

…………っゔぅうううう…」

吐き気がする。胸が痛くて、胃から込みあげてくる。

何故?こんなことに?何処かで、コイツラとは、会ったことがあった?



「………なにしてるんだ、おれは」

「しごと…仕事か、これ。」


「あ”、…あ"」

「………」

瀕死の、海賊が。『最悪の世代』の海賊の、船長が、目の前に。ターゲットが、目の前で死にかけている。


「こいつらの、首、持っていくんだったな」


「なら、切らないと」


…これでいいのか?本当にこれでいいのか?


「………………、……」

気付いた。


「…………………。」

「…………。」

「……、……………………っ、」

「……ごめんなさい」

「……ゆるしてくださぃ」

「…………、……」

「……ごめんなさい、ごめんなさい」

「…………ゆるして、ください……」


ああ、―――――――おれ泣くこと出来るんだな。


「……っ」

「…………、」

「……すまねえ、……っ」

「……、っ」

「…………、」

「……。」

「…………。」

「ごめんなさい」

「許してくれ」

「ごめんなさい」

「お願いします」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」


ーーーーーーーーーーーーー


「おおー!ガウス!帰ってたか!」

「………はい。」

「ん~?どうしたんだよ元気ないじゃねーか!」

「いえ、そんなことは」

「まあいいか!とりあえず座れよ!酒でも飲もうぜ!」

「いや、まだ仕事中なので」

「堅いこと言うなっての!ほら、飲めって!」

「あの、」

「ん?」

「その前に、ご報告したいことがあります」

「なんだなんだ!?なんか面白いことでもあんのか!?」

「はい。」

「おぉ!どんなことだ!?聞かせてくれよ!」

「はい。

まず一つ目ですが、 麦わらの一味とハートの海賊団の船員の皆殺しに成功しました。」

「……へぇえ!!本当にやったか!!!よかったじゃねえか!!」

「……………はい。」

「それで?他には何かあるのか!?」

「二つ目があります。……船長である『麦わらのルフィ』と『死の外科医』の首を回収しました。」

「おお!!そりゃあスゲェ!!で、どっちを持ち帰ったんだ!?」

「どちらも、回収しました。」

「おっ、おいおい!お前なにやってんだよ!両方持ち帰るとかアホなのか!?政府に目ぇつけられるかもしれねぇだろ!!お前も賞金首なんだぞ!!!」

「はい。」

「……、……ふぅん?そうかい。

……んで、なんでここに持って帰って来なかったんだ!?」

「……。」

「……まぁいいけどよ!お前さんの判断だもんな!好きにしな!」

「はい。ありがとうございます。」

「んじゃ、そろそろ持ち場に戻れよ!」

「了解しました。」





「……………そろそろ潮時か!?」

ーーーーーーーーー

じっと、自分の体を見つめる。

血塗れだ。ここに至るまでに何度も死んだ。


「……………。」

「……なぜ?」

目の前で、銃を翳すボルトを見つめる。まるで辛いかのような大げさな芝居をしながら、彼は言った。


「残念だよ、ガウス!!!テメェが裏切ったなんてな!!!」

………なんのことだ?

「テメェが殺さなければ、ボスは死ななかった!!!」

殺す依頼を出したのは、そっちだったはずだ。

「他の幹部も死んで……残ったのはおれだけだ!!!」

その幹部も、確か殺した。こいつに依頼されて。

「残ったおれも、テメェに殺されるのか!!?それなら、先に殺してやる!!」

なるほど。俺を潰す気なのか。確かに筋が通った言い分だった。信じるやつはいるだろう。

が、

「……ころせと、殺せと命令したのは、貴方では」

「おれに罪をなすりつける気かぁあ!!!この恩知らず!!」

………ああ、もう、いいか


「っ!?!?」

「ボルトさん!?」

刺す。ただの単純作業だ。

何も考えなくて済む。だから従っていた。

………でも、

「テメェ…!!!」

銃弾が体を突き破る。皮膚から血が出る。

不思議と痛みは感じなかった。

死にすぎて、脳が感じていないのかもしれない。

「………………」

周りにいたボディーガードを薙ぎ払う。

幸い、武器は山程ある。それを使おう。



「……………」

倒せた。殺せた。最早自分含めて全員虫の息だった。

「ガ、ウス。…デ、…メェ」

「……………」

こいつは出世がしたかったのだろう。だから力のある幹部とやらを殺すよう命令してきた。

そして、殺した。

最早リーダー格はボルトただ一人だった。なら、コイツが死んだらどうなる?

「…………………今までありがとうございました。」

「は」

「さようなら」

ぐしゃり

踏み潰した。


体を引き摺りながら、ゆっくりと裏路地で歩く。

すぐに騒動を聞きつけて人が来るだろう。そして、ボルトが死んだことを知る。

そしたら、あの組織はどうなる?

地盤を失った組織は、崩壊するだろう。


痛い。痛みを感じるのは久々だ。

「…………ザマァみろ。」

誰に言うでもなく、口の端に笑みを浮かべた。

意識がゆっくりと、薄れていく。

目を、閉じる。

そして、

「――――――――――――――――」


これでおしまい。

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