While listening to Potter Watch

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"さて皆様、この困難な時代に「ポッターウォッチ」を再開できたことを嬉しく思います。それに際してご支援くださった我らの新しい仲間を紹介しましょう。本日はよろしくお願いいたします。では特別参加の特派員「リディクラス」。どうぞ"

”ありがとう「リバー」。さて早速だけど、一部の魔法族に蔓延している「自分は純血だから例のあの人には狙われない」という危険な誤解について警告させてくれ”

”あー、居ます。居ますそういう人”

”君の近くでもそうかい?「ロイヤル」。いいかい、これを聞いている皆。この放送を純血至上主義者が聞いているかどうかはわからないけれど、それでも警告はしておくよ。皆考えてくれ。「イギリスの爆弾だからイギリス人は当たっても平気」なんて事があるか?頭のおかしい殺人鬼が、殺したいやつのところに移動する途中でたまたま出くわした奴を殺さないなんて事があるか?飢えて死にそうな肉食獣は、木の皮を齧るんだよ?前時代的な事を言うようだけど、「あの人」との戦いに「傍観」は無いんだ。何故かって、いいかい?「あの人」にとって、「積極的に味方しない奴」は「敵」なんだよ。もしくは「障害物」だ。障害物は排除されるし、敵は攻撃される”

”ありがとうございます、「リディクラス」。ですがその言い方だと「じゃあの人に賛同するポーズだけして静かにしてるのが安全かな」と考える純血魔法族が出そうです”

”アルバス・ダンブルドアに顔向けできるなら、そうするといい。セドリック・ディゴリーに、マートル・ワーレンに、アラスター・ムーディに、死んでいった全ての人に顔向けできると言うならそうするといい。その時はそれが君の血統の最期だ”

”あの人に、積極的に抵抗しろということですか「リディクラス」?”

”あ、そう聞こえたかい「リバー」?僕はそうするつもりだけど、皆にそうしろと強制するつもりはないよ。ただ「自分は純血だから静かに傍観してればあの人とその信奉者から害を被る事はない」って考えが間違ってるということは強調したい。酷い嵐が吹き荒れてるのに身の安全を守ることすらしないのは、愚かだ”

”仰る通りです「リディクラス」。例のあの人が殺す相手を選べるほどの分別があったら、怒り狂ったあの人の傍からいつも真っ先に逃げ出すのがその信奉者、なんて事にはならないはずですからね”

”ありがとう「ロイヤル」。盾の呪文や基本的な保護呪文、そして守護霊呪文は練習しておくべき。いいかい?守護霊呪文で大事なのは「幸福満点のイメージ」。架空でもなんでもいい。「ハッピー」だ。思い当たるフシがないなら「防衛術」の授業を思い出して。ボガート退治を習ったろう?「リディクラス」。それも君自身じゃなく、友達が言った「リディクラス」。さあ、ボガートはどんな姿に成り果てた?”

”すいません少しお伺いしたいのですが「リディクラス」?魔法省をメチャクチャにしたのはあなたですか?あなたですよね?”

”魔法省に何かあったのですか、「ロイヤル」?”

”確かな情報筋によると、入り口ロビーのモニュメントは「バレリーナの格好をした例のあの人」像に。スローガンの刻印は「魔法は力なり」から「リディクラス(バカバカしい)」に。そして全ての部門の案内看板が書き換えられているらしい。看板の表記がもし間違っていないなら、闇祓い達は現在「咳払い局」に所属している事になるし、ドローレス・アンブリッジ氏は「焼肉奉行登録委員会」長官という事になる”

”それはまたなんとも……………、待ってください。元に戻せていない?”

”私が得た情報が正しければ、そうだ。「変幻自在呪文」がありとあらゆるものにかけられていて、1箇所直した瞬間に別の10箇所が変化する仕掛けだと判明している”

”魔法大臣執務室の看板は「傀儡人形展示室」にしたんだよね”

”………魔法省の役人の内、腸が煮えくり返っていない人たちは今、終日笑いを堪えるのに必死です。中央ロビーのモニュメントは昨日からダンスの練習をはじめました”

”こんな時だから笑いが必要だろう「ロイヤル」?それに余計な仕事を増やしてやれば、悪事を働く暇が無くなるだろう”

”こんな時だからこそ笑いが必要というのには同意します「リディクラス」続いて―”

「これ、生放送じゃないんですね。せんぱいの声がしまth」

不死鳥によって空を運ばれている旅行かばんの中で、ラジオを聞きながら雇い主の青年と寛いでいた若い魔女は窓の外を見て、一瞬その身を硬直させた。

「そうだよ。そのほうが安全だからね。あ、もうそんな時間か」

そう言った青年も窓から建物の外を見ようとして同じものが目に入ったが、こちらは若い魔女とは違って気軽な笑顔のままだった。

自分が今いる部屋の窓からバジリスクが覗いていたら、そしてそれと目が合ったら。ほとんどの人間は死を覚悟する暇すら無いだろう。しかし、ここに例外があった。

「じゃあ体洗おっか、『オミニス』。ほらきみも手伝って」

青年が数年前、ホグワーツで講師をしていた時に敵対したアンブリッジから古代魔法を用いて抜き取った「喜び」と「安らぎ」を消費して「サーペンソーティア」で創り出したこの巨大なバジリスク「オミニス」は至極穏やかな性格をしていた。視線で相手を殺すことに消極的で、戦いより昼寝が好きだった。そして綺麗好きでもあった。

青年に促されて2階建ての小屋の外に出た若い魔女は、青年が水やら布やらブラシやら用意するのを横目に、バジリスクを撫でる。

「この子、オミニスくん。水浴び好きですよね」

小屋の直ぐ側、日差しの暖かな草原で2人に身を任せるそのバジリスクが呑気に開けた口の端には、小鳥が何羽か留まっている。

「先輩はお風呂嫌いでしたよね」

その鱗がほとんどの魔法を弾いてしまうため「テルジオ」も「スコージファイ」も使えない巨大なバジリスクを魔法なしで丸洗いする青年と助手の若い魔女のすぐ近く、小屋の軒下に置かれた休憩用の椅子と机の上の肖像画の中から、小さなダンブルドア少年が笑顔で言った。

「そうなんですか?」

「そうです……………隠しときたかったのにアルバスはもぅ………」

それは、青年にとっては隠しておきたい過去でも、若い魔女にとっては是非聴きたいほどに興味を惹かれる話だった。


「いい加減お風呂入りなさいよアナタ。もう何日よ?」

その日の全ての授業が終わったホグワーツ、グリフィンドールの談話室でクッションの上に座り込んで分厚い辞典を読み込んでいるパジャマ姿の7年生らしき女生徒に、その友人であるハッフルパフのポピー・スウィーティングが言った。

「テルジオ(拭え)とスコージファイ(清めよ)してるからいいんだもん」

「よくない!」と声を上げたのは美容に一家言あり後にそれでカエルチョコレートのカードにすら成るハッフルパフの7年生女子、サチャリッサ・タグウッドだった。

「テルジオとスコージファイじゃアナタの魂の汚れは取れないの!魂の汚れは振る舞いに現れて、最後には見た目にも現れるの!ブスは性根から始まるのよ!ギャレス!グリフィンドールの監督生用のバスルームに案内しなさい!」

こうなったミス・タグウッドが止まらない事を承知しているギャレスはイエスとすら言わずに従う。

「あなた達も手伝って!服引っ剥がしてこのバカを丸洗いするわよ!」

そう言いながらタグウッドは女生徒に杖を向けて縄で拘束し、そのまま「浮遊」させて有無を言わさず連行していく。

「そいつは今は仮にも女子なんだから僕らはちょっと………」

と言ったアミットとそれに同意するように頷いたダンブルドア少年は決然としたタグウッドの「手伝いなさい」の一喝で黙らされる。

そしてギャレスの案内でグリフィンドールの監督生用バスルームの前まで来た一同は手際よく女生徒の服を剥ぎ取っていく女子達とそれに背中を向ける男子達、そして気にする様子もなく女子達を手伝うギャレスとオミニスという先生方に見られたらマズそうな光景を繰り広げていた。

「やっ、やだ!皆ちょっとまって自分で脱、ちょっとは反応してよギャレス!!」

「今さら君の裸なんか見てもね」

ギャレスは女子達が脱がせた女生徒の服と下着を杖を振って畳んで積み上げていく。

「お湯沸いてるよ」

オミニスのその声を合図に、猛るタグウッドを筆頭に女子達とギャレスは生まれたままの姿にされた女生徒を引っ張って浴室に入っていった。

「君達ちょっとハッフルパフの女子寝室に行って、ベッドの側にあるサチャリッサの私物の薬品とバスタオル類を取ってきてくれないかい?行けばわかるから」

ギャレスにそう言われたハッフルパフの1年生と4年生の姉妹は頷いて駆け出す。

「今度また変わってちんちくりんになったとしても、男子になったとしても。お風呂にはちゃんと入らなきゃ駄目よ。あ、髪は私がやるからオミニスは足の指をお願い」

タグウッドはそう言いながら腕まくりをして気合十分だが、一方の友人達に丸洗いされている7年生の女生徒は全てを諦めて「やさしくしてください………」等のうわ言を繰り返している。

「テルジオとスコージファイも、ここ数日はやってないわねコレは」

自分がホグワーツに復学できた主要因である女生徒の右腕に杖を向けて「清め」ているアン・サロウが呆れながら言った。

「そっ、そこは流石に自分でや」

「お黙り」

イメルダは容赦なく女生徒の下半身を「拭って」「清めて」さらにダグウッド特製の浴用石鹸で洗っていく。

さっさと女生徒の上半身を洗い終わったギャレスは、戻ってきたハッフルパフ生の姉妹から薬品類を受け取ってタグウッドに渡す。

「ちゃんとケアすれば誰だって綺麗な髪になれるんだから…………あ、また枝毛」

女生徒の腰まで有る長い赤毛に杖を向け、もう片方の手に自作の魔法薬を持ったタグウッドはシャープ先生とローネン先生が見たら50点ほど貰えそうな手際で、これまた自作なのであろう魔法を女生徒に用いて髪の状態を改善していく。

「アルバスぅ………………………」

「僕にはどうすることもできません、先輩」

そして全身くまなく洗浄された女生徒は、湯船に放り込まれた。

「私も入ろ」

唐突にそう言って服を脱ぎだしたイメルダを視界の端で捉えたギャレスとダンブルドア少年、そして肩をギャレスに小突かれて状況を察したオミニスは流石に即刻バスルームから退散する。

「出てくなら私の服持ってってくれないかいオミニス」

イメルダに言われるがまま受け取ってギャレスの後を追ったオミニスは、バスルームの外で待っていた友人達に「イメルダまでお風呂入り始めたから長くなるよ」と報告し、そのまま男性陣は撤収した。

そしてグリフィンドールの談話室で暇を潰し疲れた面々が待ち飽きた頃。

「おまたせ。結局あのまま皆でお風呂入っちゃった」

「だろうと思ったよサチャリッサ。…………きみも、入ってしまえば爽快だろう?」

ギャレスの問いに女生徒は答えず、亡者のような足取りで談話室の隅に座り込む。

「ほら髪乾かしましょう、先輩」

ダンブルドア少年とハッフルパフの4年生女子は、左右から7年生の女生徒の髪に杖を向け温風を吹き付ける。そして正面からその様子を見ていたハッフルパフの1年生の女の子がパッと笑顔になって元気な声で言った。

「わあーー、おねーちゃん髪の毛ふわふわ!パフスケインみたい!」


「で、その後しばらく先輩の渾名が『パフスケイン』になったんですよね」

不死鳥によって空を運ばれる旅行かばんの中で、軒下の机の上に置かれたダンブルドアの肖像画は笑う。

「えー、なんですかその楽しそうなお話!」

巨大なバジリスクの鱗の隙間の汚れを丹念に手作業で取り除き終えた若い魔女は、そのバジリスクの口の中に顔を突っ込んで口内のケアをしている雇い主の青年を見ながら声を上げた。

「あったねえそんな事も。あ、オミニスそのまま。ちょっと毒を採らせてね」

言われなければ魔法で創り出されたものだとは気づかないだろう陽光を浴びながら、肖像画の中の小さなダンブルドア少年とバジリスクの世話をする2人は、その後もしばらく青年の学生時代の思い出話を語り聞き穏やかに笑う。

全身綺麗にしてもらって爽快らしいその穏やかなバジリスク「オミニス」が開けた口に留まっていた鳥は飛び立って、入れ替わりにアンティポディアン・オパールアイ種の純白のドラゴンが飛来し、バジリスクの隣に着陸した。

「あ、アミットも体洗うかい?」

そのドラゴンに気軽に提案した青年は、疲れなど感じていないらしかった。



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