high speed
ライダー side in
敵襲、その言葉を聞いた瞬間に意識を切り替える。
主殿の護衛から、敵の殲滅へと。
敵の位置はおおよそわかる。むしろこれだけ近づかなければ気づかなかったのは恥じ入る程だ。なれば敵を討つことにより挽回せねばなるまい。
1歩───件の路地の前へ
2歩───路地の中へと突入する、敵は絡繰人形が三体と言ったところ、この程度ならば10秒はかかるまい
3歩───一体の横をすり抜けるようにして首を落とす、ビルの壁に着地する。
4歩───2体の木偶人形の間をすり抜けるように跳ぶ、体を捻りながら刀を振るうことで一息に2体を切り刻む
5歩───路地前に主殿の姿が見える、勢いを落としつつ馬乗りになるように飛び込む。
「主殿!敵を倒しました!褒めてください!」
これで主殿も褒めてくれるだろう、いやはや我ながら完璧な策だった。
ライダー side out
神永side in
ライダーの姿が消えた、恐ろしく速い
俺自身の視力では絶対に捉えられないだろう、強化をすれば何とか見れるかもしれないがそれでも残像が限度だろう。それはそれとして敵のいるところにひとりで突っ込んで行ったライダーが心配だ、急いで向かわないと
───
そんなことを思っていた時期もありました、路地前に着いた瞬間中からライダーがカッ飛んで来て抱きついてきた、勢いを殺せずそのまま後ろに倒れる、頭はぶつけないようにライダーが襟を掴んでくれていたのは幸いだった。
「主殿!敵を倒しました!褒めてください!」
そう、まるで投げたおもちゃを拾ってきた大型犬のように存分に褒めてくれと言わんばかりの笑みで此方を見てくるライダー
「…うん、良くやったよライダー。ただ次は先に俺たちに言ってくれ」
そう言いながら来た方向を見る、そこには意気消沈したバーサーカーと此方を驚愕の表情で見る美作がいた。
───
「あのねぇ!いきなり戦闘始めるんじゃないわよ!」
離れたとこでも耳に響くほどの大声で怒られた。
「ですが敵は即殲滅せねば余計な情報を与えてしまいます、切り札とも言えるバーサーカー殿の力を秘匿できたのですから良いでは無いですか」
正論と言えば正論だ、だがそれは
───人と人の関係性をみない、合理だけの結果だ。
「…確かに、でもそれは私達への不義理になるわせめて一言でもいいから相談してちょうだい」
それを聞いた美作は怒りを抑えるように一息ついて教会へ行きましょうと一言言って先に行ってしまった。
ライダーは何を言っているのだろうかという表情を浮かべながらついて行った。
…俺が、間に入って取り持った方がいいよな
そう思いながらついて行くことにした。
─────────
街の中心部より離れたとこに存在する教会、結婚式やミサなんかでよく人が集まるのだが今の時間帯はもうすぐで夜とも言えるレベル、こんな時間に人が来るのはそうそうない。
そんな時間に複数人が行くのならまあ目立つ訳で、教会前の門で白髪の神父に声をかけられた。
「ようこそ、聖杯戦争に関する事ですね?此方へ」
人目で見抜かれた、人を見る目があるのかそれとも使い魔なんかで俺たちの様子を見てたのか
「ああ、サーヴァントの方はこの門より中へは入れません、それがルールですので」
「そう、ならバーサーカー。ライダーと一緒に待っててちょうだい」
「おう、任せときな」
「ライダー、少しの間だけだが待っててくれ」
「はい!主殿の命ならば1週間だろうと待ちましょう!」
そこまで待たなくてもいいしなんか忠誠心重すぎるぞ、ライダー…
そんな話をして教会へと入っていく。
───
「さて、自己紹介が遅れましたな。私今回の聖杯戦争において監督役を努めさせていただくアインと申します、以後お見知り置きを」
そう、丁寧に初老の神父は頭を下げた。
「よろしくお願いしますわ、アイン神父。私は美作穂乃果、でこっちが」
「神永隼人です、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる。
「おふたりは聖杯戦争のルールはご存知ですか?」
神父は挨拶は早々に本題へと入る、聖杯戦争のルール。7騎の英霊と7人のマスターが最後のひと組になるまで戦い会う、これが基本のルールのはずだ。
「と言っても聖杯戦争を円滑に進めるためのルールです、そこまで注意事項が多いというわけではありませんのでご心配なく」
「そう、私は問題けれど彼に説明してあげて」
「承りました」
そう言って羊皮紙を取り出す、随分と年季の入った羊皮紙のようだ。
「こちらに書かれている三ヶ条がルールとなります。
その1、神秘の隠匿を厳守すること。まぁ魔術師ならば基本ですね
その2、サーヴァントを失ったマスターへ危害を加えることを禁ずる。これは儀式に参加する方々の最低限、身を守るためのルールとなります
その3、脱落したマスターは令呪をほかのマスターに譲渡してはならない。こちらは同盟を組んだ方々が有利になりすぎないようにするルールですな、あなたたちにはこちらが1番重要でしょう。
以上が今回の聖杯戦争のルールとなります」
そう言って羊皮紙をしまう神父、そして別の羊皮紙を取り出し
「このルールを守っていただくためにギアスを結んでいただきます、これを持って正式に聖杯戦争に参加したとみなされます」
ギアス、契約の一種だったか。ルールを結んだものに遵守させる呪いとも言える、今回のような複数人の儀式の場合は必須と言っても過言では無い。
「わかったわ、神永クンも早くしないさい」
先にサインと血印を押した美作に声をかけられ自分も平行して書く。
「…はい、確認いたしました。では以上を持って神永隼人様、美作穂乃果様の聖杯戦争への参加を正式に受理いたします。健闘を祈っております」
そう言って神父の方は見送ってくれた、教会を出る前に教会は中立地帯のため戦闘は禁止となっていることを伝えられとりあえずやるべきことは終わった。
「そこまで時間はかからなかったな」
教会の門の前で待っていたバーサーカーから声がかけられる、彼が俺に声をかけてくるとは意外だった。
「ああ、説明だけだったし2人とも参加する気満々だったからな、特にイレギュラーもなく無事に終わったよ」
「そりゃよかった、んじゃあ家に帰るとすっか!」
そう言って教会を離れるのであった。
神永 side out