gong

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一瞬の出来事だった。扉が吹き飛ぶと同時に鈍い音を立てて側頭部が歪に凹む。それと同時に何かが割れる音がして、すでに半分崩れた首が飛び、壁にぶつかって割れた。残った肢体がばらりと解け、糸に変わっていくのを横目に、ドフラミンゴは目の前に立つ男と対峙する。

「……随分な挨拶じゃねぇか、キャメル。俺が色々世話してやった恩を忘れた訳じゃねぇだろう?」

身の丈ほどある鋏を背負い、小柄ながらも重苦しい殺意を纏った男はそれには答えず、ぽいと床に何かを放る。いくつかの破片を残して粉々になった燭台の残骸だ。近くのテーブルにあったそれを、キャメルは部屋に飛び込むや否や引っ掴んで、椅子から立ち上がりかけた分身の頭部へ叩き込んだのだ。常日頃から警戒していて良かったと、妙に乾いた唇を舐める。

横長の瞳がきゅっと細められた。突き刺さる純粋な殺意に、ドフラミンゴは人生で数える程しか感じたことのない感覚を得る。ぞくり、と背筋が凍ったのだ。その事実に狼狽える暇もなく、気付けば眼前にキャメルが詰め寄っている。左から繰り出された蹴りを覇気を纏った腕で受け止め、そのまま放り投げるように腕を振って距離をとる。ドフラミンゴの腕を踏み台に飛び上がったキャメルは粉砕されたデーブルの残骸に降り立つと、その脚を一本もぎ取ってドフラミンゴの眉間に狙いを定めた。

「そうだね、恩は返すべきだ。君にはいろいろなお菓子や珍しい裁縫の道具を貰ったものね。」

「カロリナを使わずに殺してあげよう。なんてったって、既に堕ちた神なんて彼女には似合わないから…その首ブチ切って木に吊るしてやる、この畜生め。」

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