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「姉ちゃーんお腹すいたァー!」

「すいたー」

「グーグーなの分かったから、包丁持ってる姉ちゃんの後ろ来ない〜」

「「はーい」」

家事は全員で回そうという決まりだったが、料理だけは私が譲らなかった。正直、他の家事もやらせるのは酷だと思っている。


ただ、当たり前の食という部分を子供の間は与えられている幸福を知っていて欲しい。


「んじゃ、姉ちゃんそろそろお仕事行ってくるから、食べたお皿水につけとくんだよ」


「ケホッケホッいつも、ごめんね」

「母さんは寝てていいのに……別に好きでやってる事なんだから気にせんで。じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい……ケホッケホッ」


昔から病気がちな母や、そんな母の治療費を稼ぐ父親の間に私は初めに生まれた。下の子の親代わりになるのは苦ではなかった。

ただ、申し訳なさそうな顔をするのだけは辞めて欲しい。

人のことを思える母はいい人だ。だからこそさせたくない。



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「おはこんでーす」

「__ちゃん、今日もお疲れぇ」

「…近いっすね、店長」

「えぇそんなことないよぉ」

[ホントにこのガキ生意気なくせに体だけはいいんだなあ]


いつからだったかはもう覚えてない。

自然とこうなっていた、人に触れられるとその人の思っていることが頭に流れてくる。


人間とは大変なもので、表の顔と裏の顔を使い分けないといけないらしい。いい面の顔を見せてもらっていたも体が触れるだけでその膜は簡単に剥がれ落ちる。


「お姉さーんこっちに水ちょうだい」

「はい、ただいまぁ」


別に今更嫌だなんてことは無い。そういうものだと割り切っている。


「どうぞ」

「ありがとうございまーす」

[連絡先聞いちゃおっかなぁ]


それと人間が想像よりも汚い生き物だと言うのも慣れている。

別に人に何を思うのかは自由なのだから仕方ないのだが、差が大きいと流石にショックを受ける。


普段から仲良くしていた友人が実は私のことを嫌っていたり、良くしてくれてる先輩が体目的だったりする時などは普通に凹む。



だが、それに対して家族のみんなは違った。

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「たっだいまー」

「お姉ちゃんお疲れぇ!」

「ぐおっ……姉ちゃん足腰豆粒だからごっつんこされると終わるんだって…」

「だって寂しかったんだもーん」

[お姉ちゃんに絵見てもらわないと!]


「なんか姉ちゃんに見せなきゃいけないもんあるだろぉ」

「ええっ!?なんでわかったの!さっきお兄ちゃんと絵描いててね___」


嘘偽りない面の声。

ここまで純粋だと心配になることもあるが、こんな家族が私の誇りで生き甲斐だ。


(この家族のためなら死んでもいい)


汚らしい人間の心とは違う真っ白なあなた達が幸せになるなら腕が取れても構わない


体の弱い母親も、自分の身を粉にして働く父親も、いつまでも可愛らしい弟妹たちも


全員を守るなら満足だ


汚い部分は自分だけが背負えばいいのだ



「レースねぇ」

テレビの向こうのキラキラとした同年代の少女たち

今更何かを思う訳では無いが、こんなに光っている彼女達も裏にもまれていると思うと可哀想だと思う。


だがそれも自分には縁のないことだ


レースに関わるだなんてどれほどの金がかかるのか

自分のために使うくらいなら家族に使うのが本望だ



「あ、そろそろ夜勤か…」

普通よりは小さいらしいテレビの電源を消し、他を起こさないようにそっと家を出る。


あんか色とりどりな世界は知らないままで私は育とう


みんなのように裏を持つ私に似合うのはこんな暗闇だ


キラキラを知ってもそれはきっと本当の輝きでは無いのだから

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