encirclement

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神永 side in

さて、現在の状況を纏めよう

現在俺たちは学校の3階、廊下にて大蛇の怪異と睨み合っている。ライダーの1歩後ろ辺りに先生を背負った俺が居て左手には窓、右手には階段が見えている状況だ。

こんな時どうするのが正解なのだろうか

まず階段、明らかに罠があるだろう。下手をすれば一番危険なまである。

次いで窓、ぶち破って外に出ると言う手はある、そしてライダーに着地を任せればなんとかなるだろう。だが降りる場所がまずい、何せ窓の外はすぐ林なのだから。潜むにはうってつけだ。ライダーが2人を抱えて機動力が落ちたとこをまとめてザックリされる可能性が高い。

そして正面、蛇さえなんとかなれば行ける可能性は高いだろう、だが後詰がいる可能性もある

結局どの場所も相当リスクは高いのだ、かといって引く訳にも行かない。さてどうしたものか

(ライダー、何か案はあるか?)

(正面突破、それが1番良いでしょう)

(なら任せるぞ)

(了解しました)

ライダーは前傾姿勢となり太刀を構える、蛇は殺気を向けられたことに気づき警戒音をあげている。

ライダーが一撃で決めればいい、だがそれを外せば俺には大きなダメージを受けることになる。

───令呪を使うか?

いや、まだ切るべきでは無い、どうしようもなくなりそうな時に切るべきだ

「…頼むぞ、ライダー」

「お任せ下さい!」

その声とともにライダーは蛇に切りかかる、ライダーの持つ太刀には退魔の力があるのか蛇に大きな傷をつける。だが怪異も黙ってやられる訳では無い、身体をくねらせライダーへと噛み付こうとする、だがライダーは縦横無尽に、壁へ窓へ天井へ、跳ね回り回避する。

───なんて軽やかなのだろう、まるで昔見た御伽噺のようだ。

そして天井で一瞬動きを止めたと思いきや次の瞬間、蛇の首が落とされた。

「良し!」

通路を塞ぐ邪魔な大蛇をライダーが倒したことで進めるようになった。とりあえずは外に出ないことには始まらない、先生を背負ったまま非常口へ向かおうとした。

それが致命的であった。

「随分と───お人好しでござる」

女性の声がすぐ目の前で聞こえた。こちらが何か反応を返す前に鋭い刃が振るわれる

───もう、刃がすぐそこにまで迫って

「主殿!!!」

間一髪、ライダーが間に合った。振るわれたであろうクナイを太刀で弾き飛ばし蹴りを目の前の女の腹に入れる、が女は後ろへ飛ぶことで勢いにのり避ける。そして闇に溶け込んで消えた。

「──見事、ここまで素早いとは計算外でござるな」

どこからか先程の女の声が響く、どこから声が聞こえているか分からない。だが気を緩めればすぐに刃が俺の首に飛んでくる、そんな予感があった。

「拙者の刃だけでは少々足りぬよう、ならば数を増やすまで」

その言葉と共に周囲に大小様々な蛇が湧き出す。

しかもそれらの蛇はただの蛇では無い、何らかの呪が混じっていることわかる程の禍々しさを感じる。

「さてさて、如何に素早いライダーと言えどもこれを突破するのは不可能でござろう。拙者は見物させていただく」

その一言ともに周囲の蛇がこちらへ向かってくる。

逃げ場はない───そう思っていた

「主殿、失礼します!」

ライダーは俺と先生を抱え壁を蹴り蛇たちの真上を跳ぶ。なんとか窓を破り外へと飛び出す。

砕けたガラスで肌の一部を傷つけてしまったがなんとかあの袋小路から脱出することが出来た。

「ライダー!噛まれてないか!?」

「小さいものが噛みつきましたがこの程度であれば…」

「…そうか、それよりあれば多分」

「ええ、アサシンのサーヴァントでしょう」

アサシン、暗殺を得手とするクラスでありクラススキルの気配遮断は強力なスキルだ。

だが反面直接的な戦闘能力は低めである。故に多少なりとも広いとこならばこちらの方が有利、そう思っていたのだが…

「何だあの大蛇の群れは…」

林の奥には10ではきかない大蛇がこちらを見つめていた

「流石にあの数を相手に御二人を守りながら戦うのは厳しいですね」

ライダーは太刀を抜き、先生の縄を切る。

「主殿、先に聞いておきます。最悪の場合主殿のみを抱え離脱することになります、それでもよろしいですか?」

…ライダーの言っていることは間違ってない、俺さえ無事なら離脱出来ればなんとか立て直すことができる。

だが───人を見捨てる、なんて事はしたくない。

「駄目だ、やるならこの人も含め全員で離脱する」

「ですが今のままでは無理です、宝具も今開帳する訳にはいきません、時期尚早すぎます」

「そこをなんとか…とはならないな、ならこいつを使う」

そう言って右の手の甲をライダーに見せる

「令呪を!?正気ですか!!」

「ああ、今ここで使う。そうすればここから離脱ぐらいはできるだろ?」

「───全く、とんでもない主に召喚されてしまいましたね」

呆れた顔をされてしまった、だが満更でもないような顔でこちらを見つめる、その目には強い力が篭っていた。

「わかりました、お任せ下さい」

命じられたからには必ず遂行する、ライダーの目はそんなことを言っているようだった。

神永 side out

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