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いや落ち着けドラゴン使い。と自分に言い聞かせ、先程まで彼の年齢では購入することが出来ない本の山の前であわてふためいていたのならその点を煽ればなんとか“最悪”は回避出来るか……?などと思案を巡らせる。
「かっカキツバタ!だ、だいじょうぶ……?」
「おーおー……紙の上から実物のお肉ちゃんにご興味が移っちまいましたかねぃ……?へっへっへ……えっち♡」
「そ、そんなんじゃな……い!」
スグリの目に焼きついてしまったものを明言すると幼さが残る顔が林檎色に染まり余裕を失う。よし、まだいける……。
幸い部屋の暗がりのおかげでこちらの顔色は分かりづらい。下を向いてしまえば完全に誤魔化せ……
「…………う゛ぇっ」
灯台下暗し。自分で自分の感覚からすら逃げ続けた罰が決壊した。
「あ……あっ!」
と、カキツバタが予想にもしなかった行動にスグリが出る。
手。手で吐瀉物を受け止める。猫ポケモンを持つ者同士ならあるあるな話に出てくる行動だった。
スグリのガオガエンがまだニャビーだった頃にそうしていた姿を見かけた事がある。
「す……スグリさんよう……言わなかったオイラもわりぃけど……オイラは猫ちゃんじゃないですぜぃ……?」
「えっ……あっ……ごめん、つい……
スツールを引っぱればよかったのに……うう……」
選択の誤りを自責するスグリ。手のひらの吐瀉物を忌避したかっただろうと認識してしまうカキツバタ。そしてその齟齬に介入するが如くモニターの文面が変わった。
[ 媚薬を100本消化しないと出られない部屋 ]
それと同時に選択の誤りを自責する人物が変わり、一気に吐き気と罪悪感が訪れ潤んでしまった目から普段の彼からかけ離れた顔へと化していく。
なぁんでオイラは“今回も”間違えてしまったんだろうか。想定していた最悪よりも更に最悪……
ずっ。
……
…………?
人間考えも出来ない光景を目の当たりにすると本当に動けなくなるもんだな……と思いながら息を乱した口を慌てて開く。
「な……なんで飲ん……」
「カキツバタがギブになったら残り頼むって言ったんだべ」
スツールの中を舐める羽目にならなかったスグリ。自らが言い出した事すら失念するほど冷静さを欠くカキツバタ。
これほどまでに弱ったカキツバタをスグリは見たことが無かった。
「ちょっと落ち着くべ。ほら。」
「う……」
ぽんぽんと背中を軽く叩き、これ以上の吐き戻しがないか確認してから寝台にカキツバタを移動させる。100本全てを飲み切り眠るのがこの部屋から脱出する唯一の手段であるならカキツバタに無理はもうさせない。寝かしつけてしまった方がいい。
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