cooperative relationship
穂乃果 side in
ライダーたちが先行し学校の裏手に回っている間に私たちは学校の校門前へと向かっていた。
「しかしマスター、大丈夫か?話によると相手は妖蛇なんだろ?なら林の方が危ないんじゃねぇか?」
バーサーカーはこちらを若干だが責めるように声をかけてきた。
「寧ろ私たちの方が相性が悪いわ、林の中だと貴方の大振りな攻撃は相性が悪いし下手に林を壊したら後処理が面倒くさいわ」
単に適材適所なのだ、狭い場所ならば力よりも速度の方が必要になる、ましてや神秘の隠匿なども考えればこの割り振りが最適なのだ。
「…なるほどな、いやマスターの考えがあんならそれでいい。それよりもオレ達は正面突破でいいんだな?」
「ええ、校門からまっすぐ体育館へ向かうわ」
そう言いながら私自身もいくつかの宝石を手に握る。
「私が一発ぶちかますからそれを合図に貴方は突撃してちょうだい、良いわね?」
バーサーカーは口角を上げ白い歯を見せながら
「任せな!ゴールデンに決めてやるよ!」
全く、うちのバーサーカーはこういったところでは頼りになるわね。
校門前に着いてまず携帯でアイツらに合図を送る。
そしてバーサーカーは斧を手に持ち今か今かと突撃の瞬間を待ちわびている。
ここから見るだけでも校庭には軽く20以上の蛇が見える、しかもそのどれもが並の妖蛇ではない。純度が高い呪いにより生み出されたのだろうかこの距離からでも分かるほどだ。
……手が震える、少しでもあの蛇達の牙に傷をつけられたらそれだけで命を落としかねない程の呪い。本当に私とバーサーカーだけでやれるのか?
「マスター、落ち着け。誰が隣にいると思ってんだ?」
そう言ってバーサーカーは私の頭に手を置く、そして笑顔で
「鬼をも倒した金太郎だ、たかが蛇からマスター1人守るぐらい訳もねぇ。安心して俺の後ろで立っててくれや
!それだけで百人、いや千人力だ!」
そう言ってバーサーカーは私の前に立つ。全く英雄というのはこうも眩しいものなのか
「──バカにしないでちょうだい、誰が守ってもらうだけのマスターよ」
そう言ってバーサーカーの横に立つ、誰が守られるだけのマスターよ。
「なら隣なら万人力でしょう?…ありがとうねバーサーカー」
そう言って宝石に溜まった魔力を解放し蛇の群れのど真ん中に投げつける。
「convergentie, loslaten!!!(収束、解放!!!)」
ルビーに込められた魔力が炎の形で収束、解放され爆炎が校庭を紅く照らす。
「おおおおおおおおおお!!!!」
バーサーカーは爆炎が晴れる前に蛇たちへと突撃していった、その速度はまさに雷の如し。
バーサーカーが突撃した瞬間複数の蛇が上空に打ち上げられる。
「オラオラオラァ!」
まるで鬼神のような戦いぶりだ。一騎当千とはこういう光景なのだろう。
あまたの大妖怪と渡り合ってきた坂田金時からすればこの程度の妖蛇など雑兵に過ぎないのだろう…
「っ!Nummer 2 - Explosie(2番ー炸裂)!」
外側にいてバーサーカーから逃れてた妖蛇がこちらに向かって牙を剥いてきた。
冷静に口内に宝石を投げ込み内部で炸裂させる。妖蛇は内部で炸裂した宝石により体と頭が泣き別れし絶命した。
(今の宝石のレベルなら問題なし、屑石では効果はなさそうだしグレードを考えればあと十個弱…キツいわね)
手持ちの宝石の数は限られている、即席で術式を使ってしまえば宝石は砕け使い物にならなくなる。
「バーサーカー!!!私を連れて体育館へ!!」
「おう!任せなぁあ!」
バーサーカーは最後に斧を横に薙ぎ払い道を切り開き私を肩に載せ体育館へと向かう。
(…アイツら無事なら良いんだけど)
そう思いながら霊脈へ干渉しやすい場である体育館へと向かった。
穂乃果side out
神永side in
「アサシンは、私たちの獲物だ」
身体が硬直し動けなくなった隙に俺とライダー双方を制圧した女魔術師は銃をこちらに向けて警告してきた。
「獲物…?」
「ああ、だから坊主は邪魔せずさっさと帰れ」
紫煙を吐き出した女性はこちらにそう言い放った。
「…無理だ、勝手に帰ることは出来ない」
「何を言ってるんだ?お前に拒否権があると思ってるのか?」
引き金に指をかけ此方に銃口を向ける女マスター。
ライダーは動こうにも頭にボウガンが突きつけられ動けない。
「簡単だ、俺たちが殺されたら正面側で暴れてるバーサーカーがこっちに向かってくる。同盟を組んでるからな」
それを聞いた女マスターは銃口を上に向けため息をついた。
「成程、確かにそれは厄介だな…」
「それに可能なら俺達は協力出来る、アサシンの真名を知りたくないか?」
動きを一瞬止めコチラを確認するように見る
「それは本当か?」
「本当だ。それに俺達の最大の目的はアサシンの排除じゃない、アサシンが維持しているこの学校に張られてる陣を破壊することだ」
嘘は言っていない、アサシンを倒すのは第二目標なのだ
「へっへ、肝の座った坊主だな」
「そりゃどうも、ならライダーの頭からそれを退けて欲しいんだが」
「そりゃダメだ、獲物をみすみす逃す狩人は居ねぇ」
クックックッと笑いながら軽口を叩いてくるアーチャー
ライダーは何とか隙をみつけようとしているがここまでされたらライダーの敏捷と言えども無理だろう。
「どうする?あんたはアサシンを、俺達はアサシンが守っている陣をそれぞれ協力出来るんじゃないか?」
アーチャーのマスターは少し考え銃をホルダーにしまう。
「良いだろう、アサシンを倒すまでは協力関係だ」
その一言を聞いたアーチャーはライダーからボウガンを離す、ライダーが手を太刀に伸ばそうとしたが止める。
「ひとまず名前だけ教えてくれ、俺は神永隼人だ」
「私はフィリアだ、短い間だが宜しく頼む」
そう言って右手を差し出してきた
「ああ、宜しく頼む」
そう言って右手を握り返そうとした瞬間体育館から轟音が響いた。
神永side out