喜捨偶像

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キャラ説明

喜捨偶像:真良(シンラ)

 お話をするのが好き。変声機能付きヘルメットをつけている。


——————


最近、素敵な女の子と出会った。

とっても綺麗な……いや、ヘルメットで顔は見えないんだけど。

でも、素敵な声で……声もわからないや。同じくノイズで隠されてた

いやでも、口調とか、雰囲気とか、香り……げふんげふん。金髪とかもね!

中身、とにかく中身が綺麗な子なの!


穢れを知らなくて、純真で……いつも楽しそうに、僕の話を聞いてくれる。


僕の入所の理由になったちょっとしたヘマの話だって、

彼女の前ならまるで悲喜こもごもの勇者の冒険譚だった。

まあ、要人暗殺なんて結構レアな罪状だとは思うけど。

……ただの鉄砲玉だったし、利用されただけなんだよね。ホントは


今日も会ってお話しする予定で……


「ウフフ……それで、今日はどんなお話をしてくれるの?」


「そうだなぁ、出所したら何がしたいとか? 僕は、久しぶりに空を見て深呼吸したいんだ。」

「青い空、きれいな空気……自由だっ、て実感するような景色がまず見たくてさ!」


「ええ……それは、素敵ね。うふふ……とっても素敵な夢……」


「ああ! それから、自然に囲まれた場所でゆっくり過ごすんだ。」

「怪しまれるからどうせ街で豪遊したりはできないし……それに、もう疲れたんだよね。人間の欲望とか、陰謀とか、そういうの!」


「そうなのね? 大丈夫よ、わたしが癒してあげるわ。いいこ、いいこ……うふふ」

頭を撫でてくれる。とても心地いい。

その手から、頭の中に安心が流し込まれてるみたいに。

「へへ………そうだ! シンラはどうなんだい? 外に出てやりたいこととか……」


「わたし?」

妙に愛らしくヘルメットが首を傾げる

「ウフフ……わたしは無理よ、外に出ちゃいけないもの」


「えっ、いや………でも、刑期が開ければ出られるだろ?」


「ううん、終わらないわ。わたしの刑期はとても長いの。」


「そんな! どうしてそんなに……いや、そういえば、何をして君はここに?」

そういえば、彼女自身の話は殆ど聞いたことがない。

そんなことにふと気づいた。


「ふふ、わたしは何もしてないわ。

 けれど……とても、とても大きな罪を背負っているらしいの。」


「なっ……理不尽だ! なんでそんなことが!」


「………わからないわ? 私は見ていただけ、それだけなのよ。」

わからないことを考えても仕方がない。

とでも言うように、何の感慨もなさそうに話を切る


「ああ、でも……そうね。わたしも外に出たら、

 また空を見てみたいわ………ウフフ」


「そんな……! そんなことって……!」


僕は決めた。空を見てみたいという彼女のために、決意したのだ。




——————



それから、僕は慎重に計画を練った。

ほかの囚人に積極的に聞き込みをして、時に取引をして情報を集めて、最適な方法とタイミングを探る。


僕にできることはすべてやった。僕に出せるものはすべて出した。

それでも成功する確率は極めて低く、けれどそれに賭けるしかない最適なタイミング。

準備不足は否めない。2人で脱出することは、できないかもしれない。


けど、彼女さえ外に出せるのなら。

たとえ僕が犠牲になったとしても、彼女のためなら惜しくはない。彼女の、ほんのささやかな願いを叶えるためなら……




決行当日。

あの子を呼び出して、ついてきてほしいと言った。そして


「——空を見に行こう!」


「ウフフ……それは、素敵ね。」


ぼくたちは、自由に向かって走り出した


途中までは、うまくいっていたと思う。

あとすこしのところに巡回の看守が来ていたり、

逸った僕が間違ったタイミングで走って急いで駆け抜けることになったり、

知り合いの囚人や看守に声をかけようとする彼女を抑えたり、

トラブルはあったけど不思議とうまくいったし、

ときには彼女のためならと見逃してくれるような囚人もいた。


警備の隙をうまくついて、もう少しのところで……


「いたぞ! 脱獄囚だ!」


見つかった。


必死に走る。少しでも脚を緩めたら追いつかれるだろう。

でももう少し、もう少しなんだ。

僕はどうなってもいい。

でも、ひと目でも……ひと目でもいいから、彼女に空を見せてあげたい!


「疲れたわ、どうして逃げているの?」

疲れた彼女が弱音を吐く。いけない、不安にさせてる……励まさないと


「そりゃ、捕まったら連れ戻されちゃうだろ!」

「大丈夫、君は必ず僕が送り届けるから……!」


「ねえ、何処まで行くの?」

そうだね、展望がないと不安だろう。

どうだろう、そう……


「そうだ……誰も追って来ないところまで!」

「どこかの田舎にでも……——!」

ああ、そうなればどんなにいいだろう。


「……——ああ! 外で2人きりで、誰もいない場所で暮らそう!!」

「自然に囲まれた、解放された場所で!」

「大丈夫、僕たちなら平気さ! この愛さえあれば、なんだって——……!」

そうだ、それがいい。

単純なもので、生きる希望ってやつが沸いてくるのを感じた。

バカだな。でも、さっきまで諦めてたほうがもっとバカだ。

もう少しなんだ、きっとこの先も彼女を守ってみせる——!



「——なんで? わたし、外には出ないわ。」

「人とお話しできないところには、行きたくないわ。」


「は?」


ぱん、と銃声が響いた。

ぱたん、と少年が膝から崩れ落ちて、あっけなく倒れる。

驚いて振り返ろうとした瞬間に頭を撃ち抜かれて、即死だった


少女はゆっくりと後ろを振り返り……


「ひどいわ。どうしてこんなことを……?」


背後で銃をこちらに向ける看守の方を見た




「……脱獄を企てたからだ。」

「貴様にも共謀しての脱獄の疑いがかかっている、ついてきてもらうぞ。」


油断なく心臓に銃口を向けながら、無手で無力の小さい少女に看守は怯えている


「——そう、残念ね。もっとお話ししたかったのに。」

「脱獄なんてしないわ、看守さん。言いつけはきちんと守るわ。それにここにはまだ、たくさんお話ししたい人がいるもの……ウフフ」


あっけなく、そう言った。

警戒心がない。いや、敵意がない。

それがひどく不気味で……——否、不気味なほどに心地がいい。


「ちっ……共謀者が死んでそれだけか!?」


「そうね、とても良い子だったわ。

 あの子はいつも夢の話をしてくれて、とても楽しかったの。うふふふ……」

「ここでは叶わない夢の話。想像力が豊かで、とても素敵な、良い子だったわ。

 残念ね……かなしいわ」


本気で言っている。そう伝わってくる。

本気で悲しいと思っているし、本気で残念だと思っている。

本気で、それだけとしか思っていないのが、よく伝わってきた。


「……怒っているの? いいえ、怯えているのね。

 何が怖いのかしら、心細いのかしら、わたしにお話ししてみない?

 きっと楽になるわ……ウフフ」


お気に入りのオモチャが壊れたような感想。いや、それですらない。

オモチャでも大切にしていたものを壊されたなら、もう少し憤りを見せるだろう。


何の抵抗も見せず、警戒すら見せない。何の力もない無力な幼い少女。

それが怖い。心細い。不安で——縋りつきたくなる。なんでもいいから、いや、目の前の彼女にこそ——


「……——ふざけるなッ!! そうやって俺のことも洗脳するつもりだろ……?!」


敵意がない。抱けない。自分もまた同じように、相手に攻撃できない

——どうしても、その意思を持てない。

危険人物ではないが、危険物。そう評していた同僚の顔を思い出す。

……そういえば、最近異動して見なくなった顔だったな。


「うふふ、そんなことしないわ。ただお話をするだけよ。

 かわいそうに、そんなに不安なのね。大丈夫よ、こちらにいらっしゃい……?」


「——っ、バケモノめ……ッ」


——ダメだ。敵意を向けようとすればするほど、できなくなる。

心が不安定になる。警戒して、敵対するほど取り込まれていく——


管制から警告が飛んでくる。バイタル異常、精神への強い負担を観測、即刻会話を中断し、別の担当に引き継ぐべし。

わかってるよ、痛いほど。だから、邪魔しないでくれ——浮かびかけた思考を振り払い、努めて冷静に口を開く


「話なら、聴取でたっぷり聞かせてもらう。担当に引き継ぐぞ」


「あなたともお話したかったのだけれど……仕方ないわ。

 それじゃあ、またの機会にね。」


「チッ………心配しなくてもしばらくお前とは合わねえよ。

 精神影響の不安が取り除かれるまではな」


「そう、ならその時にまた。楽しみにしてるわ……ウフフ」




「……——ねえ、わたし、空を見てみてもいいかしら。」


「——はぁ? まさか、そのために本気でことを起こしたってのか?」


「わからないわ。まだ詳しく聞いてなかったもの。うふふ……」


「……………はぁ。……たぶん、頼めば見れるだろう。

 お前は社会には出せないだけで、一応……罪状も軽い模範囚だからな」

「こんな事件を起こされるより、随分マシと判断されるだろうさ」


「そう。それなら、今度頼んでみようかしら。」


「あの子は………喜んでくれるかしら?

 空に行ったのなら、顔を見せてあげられるかしら……うふふ……」


俺も異動されるかもな。

だが、このバケモノと関わらなくてよくなるなら……随分気が楽だと思った。





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