affliction

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ホグワーツ魔法魔術学校で薬草学の教授をしている若きミラベル・ガーリックは、いつもいつも提出期限ギリギリの夜遅くに宿題を提出しに来る数人の困った生徒たちからテキストを受け取ると、寝る前に目を通してしまおうと考えて自室に戻ってきた。

「あら、まあ」

扉をくぐったミラベルが思わず声を上げたのは、自分の寝室の絨毯の上で3歳くらいの女の子がその小さな体のサイズに合わせた可愛らしいスリザリンの制服を着てこちらを見つめていたからではなく、それが誰なのかを理解してしまったからだった。

しかし察せているにも関わらず、その女の子にニッコリ笑って話しかける。

「あなたのお名前はなあに?」

「チュラーロンコーン…………」

その女の子の堂々たる大嘘で確信を得たミラベルは、あえてその嘘に乗っかった。

「チャクリー王朝の現国王であらせられるラーマ5世陛下ともあろうお方がなにゆえこのようなところに?それに陛下は今年で39歳にお成り遊ばされたと不肖私めは記憶しているのですが、そのお姿はどういったわけなのですか?」

「ギャレスのおくすりのんだの」

予想通りの回答に、ミラベル・ガーリック教授はしかし頭を抱えた。優秀かつ好奇心旺盛な生徒同士が友情を結んだら警戒しろ、というのがホグワーツ教授陣の暗黙の了解だったが、この生徒とギャレス・ウィーズリーというのは目下最も悩ましい2人なのだ。かたや学生の身でありながらフェリックス・フェリシスを作り上げるウィーズリー家の神童、かたや「実技に限れば」首席バッヂに文句なく相応しい最優等生。

それが2人揃えば教師も卒倒する、下級生たち曰く「混ぜるな危険コンビ」だった。

「ギャレスものんだの。ギャレスはサッちゃんがだっこしてつれてっちゃった」

減点すべきかどうか、罰則とか与えたほうがいいのか悩んでいるミラベルは、しかしまずは生徒の身の安全を、と考え直す。

「シャープ先生をお呼びするべきかしら?」

「や。シャープ先生、や。治しちゃうからやなの。どのくらい効果が続くか見るの」

それも薬の効果なのか、少し精神が肉体年齢に引っ張られているらしいその女の子は小さい手で服の裾をギュッと握る。

「だっこ」

スキンシップ好きは幼児の姿になっても変わらないらしい7年生の女生徒にそう乞われて、寝巻き姿のミラベル・ガーリックは己の内から湧き上がる母性本能を抑えきれずにその小さな女の子を抱き上げた。

「そう言えばあなた、どうやってここまで来たの?その身体で」

ミラベル・ガーリックは表情をほころばせながら訊く。

「運んでもらった」

女の子がそう言った瞬間、部屋の中央にあるテーブルの上に旅行かばんをその足で掴んでいる不死鳥が「姿現し」した。

「あいがと」

滑舌も3歳のそれになっているらしい女の子は、不死鳥にお礼を言って旅行かばんを開けてもらい、その中から折りたたまれた羊皮紙を取り出す。

「あら、それでここに来たのね?」

「まだだいじょぶ……?」

「ギリギリセーフね」

最後の1人から宿題を提出してもらって内心ほっとしたミラベル先生はそのまま3歳の女の子になっている7年生の女生徒を膝に乗せ、その女生徒が今提出した宿題である羊皮紙を広げて内容をチェックし始めた。

一方そのころハッフルパフ寮女子寝室。拉致されてきたギャレス・ウィーズリーは友人である女生徒と一緒に飲んだ自作の新薬の効果によって3歳の姿になったまま、サチャリッサ・タグウッドを始めとする何人ものハッフルパフ生の女子たちに好き放題されていた。

「そろそろ勘弁してくれないかなサチャリッサ」

「次これに着替えましょうギャレス!!」

大興奮の女の子たちは杖を振ってギャレスの衣服を、動物を象った幼児用パジャマに変貌させる。

「きゃあぁーーー!!!超かわいいわよギャレス!!!!」

「そうかい……」

食器を自分で使わせてもらえず給餌されたりこうして延々着せ替えられたりしてすっかり疲れているギャレスは、自分を3歳の姿にしたこの自作薬の効果時間がもっと短くなるように調整する事を心に誓うのだった。

「さーギャレス、おねーちゃん達と一緒にお風呂入りましょうねー♪」

「そろそろ解放してほしいんだけどな……‥」

そして次の日の早朝。

「こんな朝早くにすいませんミラベル先生、お伺いしたい事があって………」

ミラベル・ガーリックの寝室にやってきた1年生のアルバス・ダンブルドアは、今日もいつものようにまた己の目を疑い、入学以来幾度となく言ったその言葉を口にする。

「なにしてるんですか先輩…………」

しかし慌てたのはその7年生の先輩ではなく、ミラベル先生の方だった。

「ちっち、ちちちちちち!ち違うのよダンブルドアくん!!この子が昨日ね!!!」

それまでベッドで布団を被ったまま上半身だけ起こして本を読んでいたらしいミラベル先生はパタパタと手を動かして良くわからない弁明をしている。

「んぅー…………?おはようベルちゃん……」

そのミラベル先生に抱きついて同じベッドで寝ていたスタイルの良い7年生の女生徒は目を覚ましてぼんやりと辺りを見回したが、起き上がろうとはしない。

「……寝たら戻るんですか?それとも一晩で戻るんですか?単に時間経過ですか?」

昨日この先輩とギャレス・ウィーズリーが薬を飲むその現場に居たダンブルドア少年は女生徒に訊く。

「あー。アルバスだぁ。やーアルバス。今日もかわいいねえ」

まだ脳が起きていないらしいその女生徒は質問を投げかけられた事に気づいているのかいないのか、眠そうな顔で笑っている。

「生徒と同衾ってのは、大いに問題あるんじゃないかしら?」

壁にかかったシローナ・ライアンの肖像画がそう言ってからかうと、ミラベル先生は両手で顔を覆ってうつむいてしまった。

「………僕、またもう少し後でお伺いしますね。ミラベル先生」

「まってダンブルドアくん!違うの!!!これは違うの!!!!!」

「僕ベルちゃん好きー…………」

7年生の女生徒はそう言いながらも布団の下でミラベル先生に抱きついたまま離さず、あまつさえそのまま2度寝しようとしている節すらあった。

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