abismo
※死亡描写あり
いつの間にか、暗い部屋に立っていた。遠くから何かの音が聞こえてくる。なんだろうと思い、音に近づこうとしたとたん見えない壁に阻まれる
「…夢の中か」
そう口に出しても違和感はなくならない。夢の中なのだからそれは当然のことかもしれないが。やることもなくその辺にあった机に腰掛ければ、足音がして…あの時の自分に似た少女が入ってきた。なんだかひどく焦っているように見える
「~~~~~~」
何を言っているかはわからない。そういえばあの時は声が聞こえなかった。外国にいるのだろうか?ただぼんやり見ていると「私」は何かを取り出し、何かをした。その行動の意味も何をしているかもわからないが、何か青い光が一瞬だけ部屋を満たす。眩しさについ目をつぶり、再び開ければさっきはなかった液晶テレビの画面みたいなものが浮かび上がっていた
「(なにこれ……)」
画面に浮かぶ映像は恐らく「本人」にしか見えないのだろう。私から見えるのはノイズだらけの砂嵐だけだから。何はともあれ、ただの画面を見続けていたはずの少女は可哀想だと思うほどに震えだして座り込む…というか崩れ落ちた。
それでも画面から目をそらさず見続けている。目をそらさないのかそらせないのは定かではないがじっと見ているのは変わらない。
「……これが私の前世?」
つい呟いてすぐ、何故か「これは私の前世ではない」という確信が心に染み込んできた。…不気味だ。何故と聞いてもわからないのに前世ではないという確信だけがある。奇妙な気味悪さを感じながら少女を見ていれば…狂ったように笑い、そして机にあった拳銃を手に取った。
「なっ……!」
手を伸ばしたが、その手はすけていた。思わず手に意識が向いた瞬間に銃声が響き渡り、再び静寂が訪れる
「…は、え…?」
恐る恐る近寄れば、少女は大量の血を流して横たわっていた。呼吸音はもう途切れ途切れで、もう死ぬことがわかる。夢にしては随分悪趣味だ、と思いつつも大して動揺をしていない私自身に少しばかり恐怖を抱く
つい視線をそらして、また戻して。───そして、何故か目があった
ひゅうひゅうと呼吸音が漏れ出る口から言葉が紡がれる
「ああ、つくられていたんだ、ずっと」
悲壮感はなくただ何かを悟ったような声だった。声をかける前に、ふ、と瞳は閉じられる。ただそこに立ちすくんでいると、先ほどの言葉が覗いてきた
つくられていた?何が?
日頃賢いと言われる頭は、こういう時まで行きついてしまう
「…つくられていたのは『だからもう会わないようにって言ったのに』」
焦ったような声が聞こえ、すぐにさっきまでの思考が薄れていく。また考えようとする前に、視界が暗転した
ぼんやりと自室の天井が見えてくる。薄暗いことを考えるとまだ早朝だろう。
「………どんな夢見たんだっけ」
何か夢を見たことは覚えている。けど、内容が何も思い出せない
…そういうものかな。やっぱり二度寝しよ
fin
『「この世界が作られたもので、たまに見られているとしたら。」そう考えたことって誰もが一度はあるんじゃないかな。』
『本当に自分が住む世界が作られたものだと知ったら、例えばゲームの中の世界だとしたら……心が弱った状態で耐えられる人ってどれくらいいるんだろうね』
『「それでも自分の意思や人生、そのすべてが作られたものじゃない」って結論になれる人はどれくらいいるんだろう』
『…ここには私1人だけど。独り言じゃないよ。だって私はゲームの中の人間なんだから』
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いているのだ