Written by 花の魔術師
「さっきから何楽しそうにニヤついてんだよ。そんなに王と戦うのが楽しみか」
「……まさか、恐ろしくてたまらないとも」
「そんな自信ありげな顔をしていて何が怖いって?……早く隠せ」
いつからか、まるで全ての感情の出力が笑顔になってしまったかのように笑顔が張り付いて取れなくなった
モードレッド卿は私に兜を被り続けろと言った。私の顔を見ると王と間違えて殺したくなるそうだ
殺される前に卿を殺せばいいのだろうかと剣を握ろうとして、すぐさま手を引っ込めた
…まただ。また仲間を殺そうとした
殺したくないのに、殺す理由がないのに殺そうとした
笑うことしかできなくなったのと同時期に、こんな突拍子もないことを考えるようになった
日に日に自分がおかしくなっていく。自分で何を考えているのかも分からなくなっていく
自分がこうなったのは、いつからだっただろう?
王が剣を抜いた時?兄と喧嘩をした時?それは違う
その頃はまだ、私は兄達が困難な道を歩むことを真っ当に心配する事が出来ていた
パーシヴァル卿が兵糧を雨に晒して駄目にした時?それも違う
では、徴収による貧困で民達が地獄を見た時?それも違う
その頃はまだ、私は真っ当に悲しむ事が出来ていた
王は人の心が分からないという言葉を残して、トリスタン卿達が城を去った後?それは違う
その頃はまだ、私は真っ当に怒る事が出来ていた
王に叛逆することを決めた時?
いや、それより少し前からだったような
「イーグレット?」
「すまない、モードレッド卿。…少し考え事をしていた」
「考え込んだって仕方ないだろ。おら、先行くぞ」
少しずつ、自分の頭がおかしくなっていく
私は何の為に此処に居るのだろう
どうして王と戦おうとしている?
何故、私の剣はブリテンを守らんと戦う騎士達の血で濡れている?
正しくないことだ。止めるべきことだ
すぐにでも卿を説得して戦いを止めたいのに舌が回らない
彼らの傷を塞ぎ、直ぐに手当をしなければいけないのに
舌が動かないならば、剣で止めれば良いのだろうか?
助からないのなら、いっそ息の根を止めるべきなのではないか?
____そんなこんなでかの騎士は、寝返り先でも狂い狂って暴れ回り、最終的には味方に討ち取られたのさ!
希望もない。続きもしない
輝ける星なんてものは元から存在しない
……知ったところで、ほら、何の面白味もない話でしょう?