Witch craft

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「ミカ様っ! ミカ様ァァ! ミカぁああああああああああああああああああああああん!!!  あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! ミカミカミカあああああ!!!」


 蝉めいて狂ったように喚き散らしながら飛びかかってくるトリニティモブ生徒たまごサラダの1体を、ミカの繰り出した逞しい右腕ラリアットが薙ぎ倒す


「てめェ! クソ魔女! 何の権利があって、わたくしのムチュメたんの求愛を拒むのですかッ! 大人しくわたくしのムチュメたんの求愛も受け入れろッ! 年下の義母であるわたくしに娘と同い年の孫を抱かせろォォッ!」


 狂気そのものの言葉を唾と共に吐き散らしながら飛びかかってくるトリニティモブの1体を、ミカの繰り出した豪腕左腕ラリアットが薙ぎ倒す

 ミカを狙うのはその2人だけではない、トリニティからの大量の追っ手がミカ目掛けて集まり、欲望に眼をぎらつかせている

 無論奴らはミカだけを狙っている訳ではなく、元々はナギサの手引きで脱出を試みていたセイアを追い、偶然途中で出くわしたミカまでも一挙両得とばかりに毒牙にかけようとしていたのだ

 トリニティ自治区からどうにかセイアを退却させ、それでも尚追い縋ろうとする奴らを殿として蹴散らしていたミカだが、消耗著しく膝をついてしまう


「多勢に無勢だ! いっけぇ!」


 好機と見たたまごサラダ達やトリニティモブ達が鼻息荒く襲いかかるも、直後、最後の力を振り絞ってミカが招来した大型隕石の起こした衝撃波で彼方へと吹き飛ばされていった

 視界に映る範囲にいた追っ手はこれで全滅した為に一息吐いて、セイアと出会す前に同行していたが逸れてしまったコハル、後ついでに浦和ハナコはどうなったかと思考を巡らせる

 クロノススクールの生徒の人生終了放送、ハイランダー鉄道学園やゲヘナ自治区と隣り合う雑多な弱小学園から情報部が集めてきたポルノそのものの謎植物触手凌辱出産映像をどこの伝手を辿ってか閲覧してしまったというハナコは、普段の姦濫さからは考えられないほど怯え、触手による凌辱や出産を思い出しては顔を真っ青にして嘔吐し、仕舞いには吐くものが胃に存在しないままえづき続けてコハルに介抱されていた

 その姿は、険悪な関係性であるミカをしても心配になるほど哀れなものであった

 尤も、彼女自身他人を気にしていられるような状況ではない

 理由は一目瞭然、蛙のように見事に膨れ上がってしまっている腹のせいだ

 ここまでの闘争を伴う逃走の中で、最後にははねのけたものの一度は物量で押し潰されたミカもまたサラダ触手に子宮へと入り込まれ、子を孕まされてしまっていたのだ

 思い返す事すら悍ましい凌辱と望まぬ妊娠、腹の中で神秘を吸われる事に因る脱力感に眉根を寄せ、こんなんじゃ先生に顔向け出来ないよ、どうしよう、と独りごちた直後、異様な感覚がミカの全身を駆け抜けた

 それによりミカは目を白黒させ、呻きながら汗を噴き出し、腹部を押さえて蹲る

 腹膜の下で呪われた命が激しく蠢いているのが手に伝わり、レディースコミックやら何やらで得た知識とは異なる感覚……異常な快感が噴き上がって脳神経を灼く

 哀れな被害者ら同様の恐怖体験が、ミカにも訪れようとしている……人であり触手でもある化け物の出産だ

 痛みは無い、だがその差異が余計にこの異種生殖の異常性を際立たせ、少女を苦しめる

 爆発する快楽により濁点だらけの汚い声が自然と吐き出され、まるで感電しているかのように頭の中で白光が散り、全身の感覚が遠ざかりながら勝手に瞳がくるりと裏返って、腹の中から大きな何かが勢い良く抜け出したと思しき衝撃と共に意識が途絶え




 目を醒ました時には、空に煌々と照っていた陽は沈みかけ、羊水に塗れたもう1人の自分が目の前にいた

 ミカから生まれ直した模造品、その眼はまるで死んだ魚のように濁り、絶望に曇り、生を諦めたかのように覇気が無い

 まるで、生まれた事が罪であると理解しているかのように

 処刑の時を厳かに待つ、悔い改めた罪人のように

 力無く項垂れ、世界に怯えるように蹲っていた

 勝手に乙女の胎内に入り込み、勝手に苦しめ神秘を吸い上げて、勝手に母親にしておいて、その癖に人間のような倫理観を持っているというのだ


「なんなの……そんな顔して……勝手に私の中に入ってきておいて! だったら、最初からあんな事、しなければいいのに!」


 その身勝手極まる行動がミカを憤激させ、その手を自分から生まれたものの首へと伸ばさせる

 人の形をしたもの、それも自分自身の現し身であるから一瞬躊躇するものの、根本的に人ではないという事実、そしてこれの同族共がトリニティを崩壊させた事への恐怖と怒りが箍を外す

 震える指が僅かに緑がかった、土気色と表現するに相応しい色合いの肌に触れ、力強く食い込んでいく

 顔を酷く歪ませ娘の首をギリギリと締め付ける母親、だが、そんな母に娘から返ってきたのは、負の感情ではなかった


 ママ、ありがとう


 その音を伴わぬ声は、生きながらにして水揚げされた魚類のような眼になってしまった娘からのもの

 ようやく顔を上げた娘は、忸怩たる思いを涙として流しつつ顔を綻ばせ、その行いを妥当であると肯定するかのように母の手に自らの擬態腕を重ね、共に幸せになれる結末の筈の窒息死を目指して締め付ける

 母からの断罪を喜ぶ娘に、母の目が見開かれる

 最初にして最後となる母子の共同作業

 だが震え続ける母の手は、やがて娘の首から離され、代わりにその背へと回された


「なんでころしてくれないの……わたし、ママにだんざいされないといけないのに……」


 覇気の欠片も無い声で呟く模造品に、ミカもまた力無く頭を振り、同じような声音で応える


「出来ない、そんな事出来ないよ……だって、あなたは私の……私の……」


 再び集ってきているトリニティからの追っ手共が、トリニティ有数の暴力装置を捕らえる為の準備を万全にして周囲をじりじりと包囲してきている事を感じ取りつつも、過去の過ちで魔女と呼ばれた少女は死んだマグロのような目をした娘を掻き抱いて、啜り泣き続けた

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