いつかの前にあったこと
【アッターゴ山、という山がある】
【生息する動植物種は周辺地域と大きな差異はなく、出現する魔物もD~C、強くともBランク程度とこちらも目立たない】
【しかしこの山には、とても大きな特徴がある───そう、文字通りに「とても大きな特徴」があるのだ】
……いやあ、凄いね! 登る前からはっきりカタチが見えるなんて!
[事前にギルドの図書館にある資料で知っていたとは言え、改めて見るとやっぱり驚きが勝るね]
まあ、目指す場所が分かりやすいのはとっても助かるけどね!
[……岩山ってワケじゃないし、入山したら樹々に遮られて見えなくなりそうな気もするけど]
【その特徴とは、山頂付近に突き刺さった巨大な塊】
【かつて巨神が戦いに用い、そしてアッターゴ山に遺したと伝わる戦斧である】
【ゾンビ娘とリビングアーマーは、その戦斧から5kg分の《大斧の欠片》を採掘、納品するという依頼を受けたのだった】
何にせよ、行けば分かることだよ! それじゃ、早速行ってみよー!
[おー……うーん、案ずるより産むが安し、かな]
【───さて】
【「生息する動植物種……出現する魔物も……目立たない」とは「脅威ではない」とイコールではない】
うわーっ! イノシシ!
[ちょっと、下手に騒いで刺激しないで]
【ある時は、冬を前に食い溜めせんと気が立つ獣を退けて】
[おっと、トレントがいるね……数は、いち、に、さん……7体。どうする?]
あっちは私たちを発見できてないっぽいし、ここは戦わずにそーっと行こうか
【またある時は、鬱蒼と茂る樹々に潜む魔物をやりすごして】
【────登って】
【───────登って】
【──────────登って】
【そして、ふいに視界が開ける】
【この山を地図で俯瞰すると、山頂に近い場所に───まるで人が造ったように綺麗な───円い広場がある】
【深い森の中にいきなり現れる広場を囲むように───或いは中心の何かを畏れる様に───樹々が並び立つ】
【日の当たる広場の地面を覆う草花の奥を見れば───およそ可憐な草花とは対照的な───異/遺物が座す】
……着いたね!
[うん。分かりやすい目印があって助かるね]
【人の手の入らぬ場所に深々と突き刺さる武器という異物が】
【遥かなる時を経てなおも眠り続ける、主なき巨神の遺物が】
【山を登り続け森を抜けたゾンビ娘とリビングアーマーの目の前に現れたのだった】
それじゃ、早速……
[うん、早速]
アレのスケッチを始めようか!
[ボクは辺りの地形を確認してくるよ]
【今回の依頼内容は《大斧の欠片》の採掘と納品。欠片が必要な理由は付着している(可能性のある)〈神の血〉の研究だそう】
【ならば「どれだけ残っているか」だけでなく、「塊のどこに残っているか」も重要になってくる】
【以前霊廟型ダンジョンの調査に参加した一人と一体は、「何がどこにどれだけあったか」の重要性をそこで学んだのだった】
【ところで、ゾンビ娘とリビングアーマーはこうした作業に慣れていない】
【不慣れということは時間がかかるということであり、結局この採掘作業の前準備だけで一昼夜をかけたのだった】