VS砕蜂

VS砕蜂



「なんじゃあこりゃああああ!!」

男たちの悲鳴が森の中で木霊する

「お...面白いぐらいに引っかかりますわねあの方々」

翼は若干引きつつも熊手を踏みつけ持ち手で股間と顔を強打した数人を木の上で見下ろしていた

「やっぱり死神というのは存外弱い存在なのでしょうか」

座っていた枝から立ち上がろうとして眩暈がした...思っていた以上に身体魂魄ともに疲弊し傷ついている、魂魄に関してはかなりの物だ

『き け ん』

焼けつく痛みと共に"第六感"からのメッセージが届く...直ぐに周囲の様子を探る。

少し前になんかデカい火の鳥が見えたり森の中に何かが突っ込んでいたのが見えたがそれ関連だろうか


ほんの少し風を斬る音が聞こえた...木の枝をへし折るほどに踏み込み瞬時に飛び出すと先ほどまでいた場所に人影が見えた

「...ええとどんな肩書の方でしたっけ...忘れたので二番隊隊長『砕蜂』さん」

「巡回させていた部下が妙なやられ方をしていたが貴様の仕業か」

冷ややかな目で部下を見下した後にこちらを見る砕蜂、少しばかり土埃が付いているところから何らかの戦闘後にこちらに向かってきたのだろうか

「今の私は気が立っているからな...故に即座に終わらせる」

──尽敵螫殺 『雀蜂』

結果から言うと何も見えなかった...始解の直後あまりの速度で接近され一撃を入れられた、すぐに距離を離したが

「砕蜂さんの能力は確か...『二撃決殺』でしたでしょうか」

「瞬時に二撃叩き込むはずだったが 直ぐに飛びのき避けたか」

体に蝶のような文様が浮かびあがり砕蜂は得意げな顔をしてご丁寧に説明をし始めた

「『蜂紋華』その文様の名はこう呼ぶ どこから私の能力を知ったかは知らんが...分かった所で次の一撃を喰らえば問答無用で貴様は死ぬ」


遅ればせ私も戦闘態勢に移行する...自らの力である緑の光が武器たちに入り込み蓄光塗料が昼であるのに光り出す。この蓄光塗料は滅却師達との象徴である青い光を私たちに与えてくれる...我流滅却師真拳使いにとってこの光はすなわち誇りでもある。

「その光は滅却師か...?捕縛された旅禍の中に滅却師が居たといっていたがその仲間か本人と言った所か」

砕蜂は距離を瞬時に詰め間合いを取らせず白打を叩き込んでくる、姿勢を崩せばすぐに二撃目の雀蜂が飛んでくるだろう。私は死への恐怖からかただ持っている道具を使って攻撃を防ぐので手一杯だった。

「なるほどな 貴様は手ぬるい」

身に迫る攻撃も道具たちがその身を盾として引き出し防御し続けた結果、破損はしていないが白打の勢いを殺し消えれず本来の塗料の色を晒してあちこちに散らばっている。

「私の部下に対して非殺傷のふざけた罠を張り 私から殺気を受けて気後れし防戦一方 あまりに手ぬるい」

「私は四楓院夜一を探し討たねばならない...遊びは終わらせ捜索に向かわせてもらうとしよう」


砕蜂が踏み込むのが見えたがもはや私に残されているのはこの長ドスのみ

弓もなく矢だけあっても戦えない...だが刀として振るうのならばまだ可能性はある。剣術は大して嗜んではいないがやるしかない

抜き放ち魂の力を籠める...青色がその刀身に宿る前に砕蜂の白打が攻撃を受け止めた刀身を揺らす

はらりと刀身から塗料が剥がれ銀に鈍く輝く刃が見えた

「終わりだ!」

『雀蜂』がこちらに迫っている...ただ防御してもどうにもならないのは分かっている

「もうやけっぱちですわよ!!」

ようやく力がこもり緑と銀光る長ドスを縦に思いっきり振り切る、それてくれればまだどうにかなると"刀"を振り下ろす

『人間 とりあえず敵を殴れ』

「はいぃ?」

唐突に声が聞こえて気の抜けた声が出てしまいましたが時は関係なく進んでいく

刀が雀蜂に辿り着くと、べちゃりと頼みの綱の刀は砕蜂の腕ごと包み込みそのまま刀身を切り離した...無論それは私も砕蜂も想定外であったが

「とりあえず殴りますわ!」

唐突の事に驚き手に付いた銀色の物体を振り払おうとする砕蜂を思い切りぶん殴る

お互いに一度距離をとり様子を見るが手についた物体は引き続き砕蜂の雀蜂ごと覆い邪魔をしていた


「小賢しい仕掛けだ...!ならばこの技で!」

砕蜂の体から風が巻き起こり始め銀色の物質ははじけ飛んだ...その時である

「待たせたのう 砕蜂 あとすまんかった翼...まさか砕蜂がこちらに向かうとは思わなかったんじゃ」

四楓院夜一が少しばかり高い位置からこちらに話しかける...砕蜂は怒りの表情を出しながら夜一に向き直った

(...これチャンスですわね)

懐から飴玉(なんかうごめいてる)を取り出しトスバッティングの要領で砕蜂が怒りを言葉にしようとしている口をめがけて打ち放つ

『人間...私はバットではないぞ』

また幻聴が聞こえたがそれは置いておき、つつがなく飴玉は砕蜂の口へと吸いこまれていった

「四楓院夜一!貴様h...ンゴッゲ..ンン‼」

マズイ所に入ったのか涙目になりながら喉を抑えつつ必死そうな砕蜂だったがとりあえず命令はしておく

「"なにもするな"」

すると気をつけの姿勢を取ったが...どんどん顔が青くなっているのでとりあえず飴玉は吐き出させるように命令した

「"喋っても良いよ"」「貴様...まだ奥の手を隠していたのか!」


顔も目も動かせず口だけで威勢よく言い放つ砕蜂をよそに夜一に話を聞いた...どうやら二人で戦うためにこちらに来たが罠やらなんやらでいつの間にか分断されてお互い探し回っていたらしい...

「まさか味方の罠で手こずるとは...まさかギャグの様にバナナですっころんで頭を打って数分気絶していたとは我ながら不甲斐ないのう」

「明らかにタンコブないですわよね?なんだったら先ほどまで陰で見てましたわよね」

舌を出してテヘペロしつつ夜一が誤魔化していると砕蜂が嚙みついた

「体さえ動けば...貴様をこの手で殺してやる!」

「あっはい 分かりました 砕蜂さん"夜一さんに限っては戦闘を許可します"」

「待て!これは二人の成長ぶりを見ようという行動であっただけでサボろうというわけではないんじゃ!」

自由を手にした砕蜂は巣を刺激された蜂のように殺到し夜一へと襲い掛かった。

「はぁ...武器を拾ってから霊圧を大きく感じる場所へでも出向きましょうかね」

夜一と砕蜂の戦闘を横目に見つつ支度を進めた



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