VS千本桜
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眼下に広がるのは桜色に輝く花弁のような刃達
「勝敗は既に決している 下がった方が身のためだ」
『千本桜』...朽木白哉の持つ斬魄刀である彼に私は既に膝をつかされていた
汞一文字は私の手元で無く自身を実体化して戦っているが...未だ錆びついた体ではどうにも立ち行かぬようですわ
「"斬魄刀"...なぜ私にはその切っ先を向けぬ なぜ斬り合わない」
「そもそも離反した斬魄刀は同志であるから...いやそうではないな より邪魔だと感じるのがそちらの虎屋翼であるというだけのことだ」
それを聞き数回私が操る時よりも鋭く速く汞一文字は刀身を鞭のようにしならせて斬り刻もうとするも桜色の壁と例えるべきそれに阻まれ届かない
「技量があるのは分かるが 貴様にはそれ以上のものは無い...あまりに純粋で淡白な太刀筋だ
そちらの虎屋の方は技量は無いが碌でもなく邪魔立てだけは立派にしてくる ならば先に斬るべきはどちらかなど明白だろう」
私は千本桜に向けて飴玉をスリングショットにて放つ...直線では駄目だ
汞一文字が暴れている間に仕込んでおいたベイゴマ三つを使い反射による回り込みを試みる だがやはり相手の方が一枚上手
念のために残しておいたのだろう一枚残った刃に弾かれて届かなかった
「成程...兄か ならば本気で行かねばならない」
見苦しく悪戦苦闘していると相手の方に援軍であり千本桜の持ち主である朽木白哉が来た...万事休すだ
「...私は 私は…_?」
「ああもう! 面倒極まりないですのよこの散切りポンチ!!」
どうにも踏ん切りのつかない汞一文字を見てもう我慢ならなくなった私は思いっきりグーでパンチした
「斬り合いだのなんだの言う前に戦いですのよ!?『勝利』それこそ重要ではありませんの?そもそも貴方は斬り合いの先に何を求めていますの!」
「...初代剣八を超える それこそが元の"持ち主"と私の悲願だった 悲願だったのだ...」
「簡単に言えば最強の斬魄刀と持ち主になる事ってことでしょう!なら今負けて逃げてとやってていいんですの!?まずは『勝利』する!斬り合いにこだわるのは勝ってからですわよ!」
ここまで私たちは氷漬けになったり卯ノ花さんにボコボコにされたり情けないったらありゃしない 恥なら随分とかいたでしょう
「そうだな..."持ち主" 私はなんだか今更ながら自分が恥ずかしくなってきた」
先ほどまで鈍色に光っていた汞一文字の頬に少し赤みが付いた気がした