VENOM(表現はぼかしていますが、閲覧注意)

VENOM(表現はぼかしていますが、閲覧注意)

Altarego→紫藤親子

 黒い巨人が無邪気に遊んでいました。等身大のお人形の頭を乱暴にひっつかみ、取れてしまうんじゃないかと心配になる勢いで振り回していました。

 ぶおんっと、お人形が風を切るたびに、まちまちな格好のお人形が軽々と吹き飛びます。黒い巨人はお人形を振り回す遊びに飽きたのか、今度はお人形の片脚をつかみ、力任せに投げつけました。地面にたたきつけられたお人形は表面の布が破れて、ワタが飛び出していました。

 まだ何体か残っていたお人形が、おもちゃの刀や落書きだらけの紙切れを持って飛び掛かってきましたが、黒い巨人にとってそんなものは痛くも痒くもありません。おもちゃの刀を裏拳で叩き折り、紙切れを指に引っ掛けて引きちぎり、巨人はその左腕を大きな斧のようにして横に一薙ぎしました。お人形が3体余計に吹き飛びましたが、5体のお人形すべてが巨人のそばへとロープで引っ張られるかのように引き寄せられました。黒い巨人は耳元まで裂けた鋭い乱杭歯の並ぶ口を薄っすらと開け、頭頂部まで届きそうなくらい長い舌で舌なめずりをして、5体のお人形すべての頭をしゃぶりつくしてしまいました。

『これで終わりか、エディ』

 黒い巨人がその場にいる誰かに語り掛けるように声を発しましたが、目に付く範囲で動いているのは黒い巨人以外にいませんでした。

『しょうがない。もう品切れだって言うなら、今日のディナーはこれで終わりにしてやろう』

 黒い巨人はそんなジョークを口にして、そしてみるみるうちに縮んでいきます。気づけば、そこにいたのはすらっと背の高い見目麗しい女性でした。

「はいはい、デザートにチョコレートね。コンビニで買っとくよ」

 ついさっきまでそこに立っていた黒い巨人と会話するような独り言を残して、女性はその場を立ち去りました。

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