ドラゴン使い双子SS
なんやかんやあって計画を阻止しようと乗り込むバーベナと侵入者を追い返すグリジアがバッタリ遭遇したらというお話。
「……なんでここにいるんだよ、グリジア」
「そっくりそのままかえすよ、バーベナ」
目の前に現れたのはあまりにも見慣れた顔だった。
サイランによる都市開発計画。
バーベナは、里の伝統を変えようと……否、消そうとするその計画を阻止すべく奔走していた。
里の伝統。バーベナの長年焦がれたものだった。里から逃げ出してなお、心の奥では古きよき伝統への憧れは燻っていた。
だから、帰ってきたのに。
ようやく自覚した憧れを潰されるのを、外野で見届けるだけで終われるはずなどなかった。危ない橋を渡っているのは分かっている。それでもじっとしていられず、反対派の一員として計画を止める手段を考えている。
そんな彼の前に立ち塞がったのは、双子の兄、グリジアだ。
双方驚いているものだから、まるで鏡でも見ているように同じ表情をしていた。会っていない時間が長いのに、見慣れた顔だと思うほどにはそっくりだった。
それでも、兄は幾分かやつれたように見える。
「お前は里から出てたからさぁ、てっきり賛成派……それか無関心なものだと思ってたんだけど」
「そっちこそ。里にこだわってるみたいだし、反対派なのかと」
「あー……俺ら、なんでこうも、正反対なんだろうね。バーベナと敵対したいわけがないのに」
「俺もグリジアと敵対したくないってのは同じだけどね」
バーベナの前に立つグリジアの視線は、どうも様子がおかしい。里に帰ったあの日、嬉しそうに自分を迎え入れてくれた兄と同一人物なのか?
確かに、兄を傷つけたのは自分だ。兄のプライドを傷つけたのは自分だ。兄の信じたものを壊したのも、きっと自分だ。ならば、立ち向かうべきも自分なのか?
やや焦点の合わない視線は、的確にバーベナを射貫いている。手には、モンスターボールを握っている。
「だからって、賛成派に寝返るわけにはいかない。やるしかないんだよ、俺を認めてくれた人のためにも」
「……なるほどね。通りたければ、倒せってわけか」
そもそも、反対派を追い返すために出てきたのだろう。弟だからといってハイドウゾと通るわけにはいかない。自分だってそうする。双子だから分かるなんてものではない、誰だってそうだ。
やるしかないのか。バーベナはボールを握った。
グリジアと戦うのは久々だ。彼が無理な特訓をしているというのは知っている、きっと記憶にある彼とは違った領域の戦いをするのだろう。やつれるまでに欲した強さを、迎え撃たねばならない。
「……どうせなら、考え方まで似てれば楽だったのに」
「そうはいかないでしょ」
「わかってる、だって俺ら、別の人間だもんな」
「……じゃ、始めるかぁ」
ボールを構えての拮抗状態。バトル開始を宣言したのはどちらだったか。どちらもだったかもしれない。なんだかんだで穏やかだった会話は終わった。弧を描いてボールが投げられる。
「サザンドラ! 全部ブッ壊せ!」
「サザンドラ! 俺たちに勝利を!」