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 この世界に絶望は無かった。しかし、希望もなく、あるのは虚無と孤独である。

 大海賊時代の終焉から26年が経った。理由は誰かがワンピースを見つけて海賊王になった訳ではない。このスターチスの島では26年前に海軍や四皇、クロスギルドという名の組織の間での戦争が起こった。戦争の理由はそこにいた海賊のほとんどが死んでしまったからこそ不明瞭だが、一説には空白の100年やロードポーネグリフを巡った戦いであったと噂されている。

 ワンピースを見つけることが不可能となってしまった現在では海賊王の誕生すら絶望的となっていた。

そして世界政府と天竜人による支配は相変わらず続いている。最初はその理不尽さに絶望し、神をも恨んでいた人々だが、いつしか神は死んだと悟り、この空虚な世界で死を待つことだけを考えるようになっていった。

 スターチスでの戦いに勝者はいない。誰もが傷つき、殺し合い、そして死んでいった。海軍は実質的壊滅により、今では強大な力を持つことはなく自警団のような小さな組織となっている。クロスギルドは今でも健在だが、かつての派手な雰囲気は無くなっている。そして四皇の一つであった麦わら大船団は―




部屋の奥に1人の中年の男がいた。目にはクマができおり、その瞳には光が灯っていない。死人とも言えるような雰囲気を漂わせるこの男は恨めしそうに窓から海を臨んでいる。

彼は扉を開けてダイニングに向かうとそこにはいつもの仲間がいた。

「おいルフィ、ぼさっとして何やってんだ」

「早くーサンジ君がご飯作ったのよー!」

緑髪の短髪の男や、長いオレンジ髪や黒髪の女たち、金髪の男に長い鼻の男、小さいトナカイ、デカいサイボーグ男や、骸骨、ジンベイザメの魚人、みんな彼と共にかけがえのない時を過ごしてきた仲間であった。

「あ…ゾロ、ナミ…」

「なんだルフィ、元気ねェのか?」

「いや、サンジ…何でもねェよ」

みんなにこやかに彼を迎え入れている。ルフィと呼ばれたこの男は狐に摘まれたような顔できょろきょろと見回している。

「はは、あはは!」

しかしルフィはいつもの仲間がいることに安堵し、彼らの元に駆け寄った。













そこには誰もおらず、ひとり彼がいるだけであった。


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