『奇談』か『複製』か

 『奇談』か『複製』か


 ゲマトリアの会議室にて。

 「……」ソワソワ

 「……気になりますか?」

 「そういうこった?」

 「……はい。上手くいってると良いのですが……」

 3人がそんな事を話していた。すると、

 「すまない、待たせてしまったか?」

 「ただいまです!」

 待っていた2人が帰ってきた。

 「それで、結果は?」

 「……成功した」

 「先生は彼女達に定住権を与えてくれました!」

 「はぁ~……良かったです」

 「そういうこった!」

 そう。あの時、この2人はスランピアのパレードをこっそり観ており、事の顛末を見送っていた。その結果を、関わり、待っていた3人に伝えたのだった。

 「やはり、先生を頼っておいて正解でした。我々では、あの問題を解決出来そうには思えませんでしたからね」

 「そういうこった!」

 「ウム。彼の者がゲマトリアに入ろうとしないのが非常に残念だ」

 「仕方がありません。先生には先生の考えがありますから」

 「そうですとも!感性は人それぞれですから!」

 「……まぁ、まだその時ではないのだろうな」

 「フフッ……話は変わりますが、我々はこれからどうしましょうか?黒服は何やらエネルギーの研究を始めたようですが」

 「流石に別行動をしよう。スランピアの件については我々の共通課題だから共に解決したが、本来、私とそなたの考える『崇高』は違うからな」

 「分かりました。であれば、」

 「少し提案してもよろしいでしょうか、ゴルコンダ先生?」

 「おや、どうしましたか、チャペック?」

 「そういうこった?」

 「せっかくですし、現在広まっている噂や都市伝説を共に話し合ってみたいのですが、よろしいでしょうか?」

 「おおっ!もしかして、6号姉さんの事ですか!?」

 「……良いだろう。その議題であれば私も参加しよう」

 「おや?私達だけでなく貴方もですか?興味は無いと思っていたんですが」

 「そういうこった?」

 「……まぁ、理由は後々話す」

 「……?……分かりました。とりあえず、まずは6号姉さんに関する噂や都市伝説を列挙しましょうか」

 「了解です、1920号!」

 という事で、色々な噂や都市伝説を列挙した。(アイ達の詳しい事は知らないが、子型機が居る噂は知っているので、列挙した)

 「……毎度思うが、場所がバラバラ過ぎる。これで『The Library of Lore』に成り得るのか、ゴルコンダ?」

 「まだ見かけてもいない存在に対して、その質問は無意味です。調べる事が出来たら、『神秘』もなく『恐怖』もないままに胎動した『崇高』の存在であるか否か分かりますがね……」

 「そういうこった!」

 「……マエストロさん。6号姉さんが『複製』である可能性は無いのでしょうか?」

 「彼女の形骸の『複製』がそう簡単に『自然発生』するか……と、言いたいが……この目で確かめねばならん事が増えてな」

 「ああ!古聖堂に関する事ですね、マエストロ先生!」

 「……はい?古聖堂って、あの『古聖堂』ですか?貴下が地下にヒエロニムスを顕現させ、エデン条約の締結会場だった、あの?」

 「そういうこった?」

 「やめろ、ゴルコンダ。マダムのしでかした記憶が蘇る」

 「おっと、これは失礼しました。それで、古聖堂にて一体何が?」

 「……シスターフッドの者が、深夜に巡回中に古聖堂の中で『全身が青白い』彼女を見た、と話題にしていた」

 「……ユスティナの『複製』だと間違えたのでは?」

 「……発言そのモノが悔しいですが、私達と彼女達では体付きがあまりにも違い過ぎます。大体、あんなキツいハイレグを好んで着るアリスはそう居ないと思います、ゴルコンダ先生」

 「……そう悲観なさらず……マエストロ、何か心当たりは?」

 「全く無い。そもそも、彼女達を使った『聖徒の交わり』を創るな、と先生と約束したんだ。破りはせん」

 「では……その事を聞いたのは何時ですか、917号?」

 「先週、マエストロ先生とヒエロニムスを再顕現しようと視察に行った時です!」

 「……?中には入ってないんですか?」

 「あくまで古聖堂の外見だけを見に行っただけだからな。自分の目で確かめるのは、次回にしようと思っている」

 「それで6号が『複製』である可能性を見つけよう、という魂胆ですか。良いと思いますよ」

 「そういうこった!」

 「では、そなたはどうするつもりだ、ゴルコンダ?」

 「子型機の存在が私としては気になります。大元の本体を探すよりかは、ハードルは低いでしょう。ですが……もし、その子型機の『記号』が『虚無』であった場合、来年の4月1日まで待たないといけないので、待ちぼうけを喰らう事になりますが」

 「そなた。まさか、その日は嘘をついてもいいから、『虚無』が『実存在』になる、と言いたいのではあるまいな?」

 「いえ、貴下の言う通りです。『虚』が『真』になるためには、嘘が許される時間でなくてはなりません」

 「……待って下さい?時間、って事は午前中しかチャンスが無い、って事ですか!?」

 「うわー……厳しそうです……」

 「……待てよ?何故そなた、さっき『記号』が『虚無』だと話したのだ?」

 「……気付いてしまいましたか。アレは、今年の4月1日の事……」

 ー回想開始ー

 D.U地区内のシャーレの近くにあるビルの屋上。時間は午前。

 「えっと……ペロロジラが到達するまで、後……うん?アレは……」

 少し遠く離れたビルの屋上に、生徒が天体望遠鏡らしきモノで何か観ていた。観察している方向を見るとシャーレであった。

 「まず、こんな明るい時間帯にあのタイプの天体望遠鏡で星を観ている訳ではなさそうですが……まさか、あの方の覗き魔、ですかね?……ふむ、情報の取引といきましょうか、デカルコマニー?」

 「そ、そういうこった?」

 一方、生徒の方では、

 「うーん、あのアリスさんは一体?1号さんではなさそうですけど……」

 全然『覗き』という行為は悪い事では無いと言わんばかりにガッツリ覗いていた。すると、

 「……ふむ。服装から見るにレッドウィンターの生徒ですかね?」

 「わわっ!?一体どなたですか!?」

 「挨拶は省略しましょう。質問しますね?貴方は一体何を『覗かれて』いたのでしょうか?」

 (わわ!『覗いてる』って気付かれてます!?でも、見た感じヴァルキューレの人では無いような……?いや、でも答える訳にはいきません!)

 「シャ……シャーレの建物を観てました!」

 (まあ、『先生です』って普通は言えませんからね……さて、レッドウィンターという事は……アレで応じてくれますかね?)

 「お嬢さん。取引しませんか?」

 「えっ、取引……ですか?」

 「プリンを奢りますので、貴方がさっき覗いた情報を教えて下さいませんか?」

 「プ、プリン……ですか!?いや、でも、しかし……」

 「ああ、2つ食べたいですk」

 「取引しましょう!」

 その後、その生徒は「プリンを2つも食べちゃいます!」と嬉しそうにプリンを2つ頬張り、情報を提供したのだった。

 ー回想終了ー

 「という事があって得た情報となります」

 「いや、話の導入がカオス過ぎませんか、ゴルコンダ先生!?」

 「あの者は盗聴、盗撮だけでなく覗きの被害にも遭っていたのか……」

 「ええ……先生のプライバシーの権利は何処に行ったんですか、マエストロ先生?」

 「知らん……で、どのような情報を得たのだ、ゴルコンダ?」

 「『赤い目をした』彼女と話していた、という事らしいです」

 「赤い目?ケイ姉さんでしょうか?」

 「いや、その頃には既にケイ姉さんはオリジナルの心配で外出を控えている筈です……という事は?」

 「6号の子型機である、と?しかし、それだけでは証拠には……」

 「それが彼女が言うには、いきなり『現れて』、いきなり『消えた』、と……」

 「ううん……可能性としてはありそうですね!」

 「ええ。ソレでしたら、『記号』が『虚無』だと言えなくもないですね」

 「ただ、まあ、今の所はこれで全ての情報が出揃った感じですか?しょうがありません。後は各々で調べましょうか」

 「そういうこったぁ!!」

 「分かった。行くぞ、ヒルデガルト」

 「了解です、マエストロ先生!」

 「さてと……チャペック」

 「ええ、もちろん、付いていきますよ、ゴルコンダ先生。ですが……この『スパークガン』、3発リロードなの変えませんか?」

 「……出掛ける前に武器の調整をしておきます」


 ーオマケー

 「そういえば、メンテナンスってしましたか?」

 「ああ、スランピアのパレードをやる前にあの10人と一緒にメンテナンスしといた」

 「……おや、もしかして?」

 「12人分の費用がかかってしまった……」

 「……6人分の費用は?」

 「大体これ位だな」

 「……どうぞ。遅めの割り勘です」

 「そういうこった!」

 「……すまない」

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