The Accomplice②
「––––––––––で?いつまでコソコソ見ているつもり?」
ぐるんと首を回した少女は、その勢いのままぴょんと飛び上がるとそのまま滑るようにこちらへ飛んでくる。
凄まじい移動速度。藤丸は咄嗟に反応できない。
「…おっと」
ぎゃっ!?
「先輩!?」
慣性に任せてそのまま飛んできた少女が、無言で避けたカワキをスルーして奥にいたカルデアのマスターを直撃する。
「…失礼、少々コントロールを誤りました。貴人を覗き見る無礼と相殺してノーカンということで、ここはひとつ」
いそいそと離れ、手元に握った短杖(ワンド)を一振り。
一瞬視界が何やらメルヘンな光に包まれたかと思えば、あっという間に少女の姿は見覚えのある––––雇い主のそれへと変化した。
「お疲れ様です」
驚愕の色を隠せないカルデアの者たちをよそに、カワキがこともなげに頭を下げる。
実の所、目の前にいる相手は彼女の剣の師を相対的に「優しい方」にしてしまう程度には礼法に煩いタイプである。後ろ手に隠し持っているものの安全を考えれば、先んじて真面目にしているアピールをしておく方がリスク管理としてはよほど楽なのであった。最低限礼儀を通してあとは空気に徹する。余計な裁定を招きたくないのであれば、それが一番である。
事実、ちゃんとした挨拶を行った事による加点が功を奏してか、あるいは最初からそうする予定であったのかは計り知れないが、その声を受けたマグダレーナは後ろ手どころか全身に仕込んでいるのではないかと思える余計な物品についてはあえて触れることはなく「ええ」とだけ返した。
「浮かれ切った者どもが余計なことをしないとも限りませんし、何しろ輪をかけて一手が不足していますからね。その上、揃いも揃って手強いでしょう?念の為、私自ら見張りに出るのも当然というものです。」
「ああ、ええと、その––––––」マシュがいささか言葉に迷った様子で相槌を打った。「そうですね、少々癖の強い方は多いかと–––––」
「歯に衣着せず碌でもないと言っていただいて宜しい。事実ですので」
ぴしゃりと言い切る彼女ほどすっぱり切り捨てた物言いはできないが、まあ、碌でもないというのは事実ではあった。業務上、いわゆるシナリオの外でもそれなりに多数の人々と交流をしてきたわけだが、この帝国という環境はまともにお近づきになると大変な事になる類の人物の宝庫である。己らの本分を果たす上でそれなりに多くの反英霊や“厄ネタ”と関わり合いになってきたカルデアの構成員としては、大半の人物が現在はいわば「気楽なイベント用」と言える割合開放的な状態にあるという仮定をしたとしても、「まあ今までに関わり合ってきた厄介な側の存在と比較しても遜色ない民度だな」と結論づけられる様相であった。
有体に言えば常人の精神性ではない。もっとも、その偏り方については、いささか見覚えがないわけではなかったのだが––––––
業務上必要な質問だと思うので
一ついいでしょうか
「…どうぞ」
この騎士団は、何のために戦っているものなんですか?
「ん〜〜〜〜〜〜。
その質問に対する答えを真に理解してもらうためには、この世界の成り立ちから語る必要が発生するというか。
…まあいいでしょう。例によってお馴染みの、世界の歴史と問題点説明パートです」
間抜けなファンファーレとともに、どこからともなく素朴な文字で書かれたパネルが降りてくる。
「まあ私とて全ての情報を開示してもらえるわけではありませんし、全て詳らかに語るにも支障が生じる点はいくつかございますのであくまで可能な限り中立性を意識したざっくりとした物だとお考えいただくとして」
長くなりそうならいいです、と言えそうな雰囲気ではない。半強制的に着席して、一同(興味なさげに野外晩酌を再開した者もいるが)は急遽発生した講座を謹んで傾聴させていただくほかに選択肢はなさそうであった。
––––上にある天は名づけられておらず、下にある地にもまた名がなかった時のこと。
…なーんて、まあ、智慧者ぶった言い方もできますが、要するにいわゆる創世神話の時代のことです。
これに関してはどの神代でも似たようなものでしょうが、世界には現在ほどはっきりとした枠組みやルールは存在しませんでした。
そんな中でもなんとか回っていた世界ですが、ある時大きな問題が発生します。虚、というものですね。そちらの霊性科学––––いえ、魔術界隈の常識、でしょうか。それに照らし合わせても、魂の不可逆な劣化・変質というものは大きな課題となっているはずですよね。説明が面倒ですので、魂魄の虚化についてはひとまずその一種と捉えてもらって結構です。
この虚というもの––––そうですね、お前たちの知識に照らし合わせれば鬼種と似たりよったりの厄介さです。人を食います。共食いもいたします。知性もまあ、それなりに。そういうものが発生したら人はどうするでしょうか?そう、退治です。
かくして、ある時から緩やかに流れるのみであった世界に退治する側とされる側という構造が生まれました。
そんな中で台頭した存在が、現在霊王と呼ばれるモノです。強力無比にして怪力乱神の極み。人類の敵を滅却する力を持つ強力な味方の存在により、原初の人類は生存圏を確保してきました。
ですが、ええ––––永遠に続く幼年期が、脅威を見ないようにしながらリソースを食い潰して萎んでいくのみの世界が、どういう結末になるのか。お前たちはもう知っていますね?
…………。
それを企図して言い出したものばかりではございませんが、いつしか「このままではいけない」と言うものどもが現れ始めました。霊王を中心として集まったその集団は、思惑こそ様々でしたけれど、現状維持を望まないという点に関しては一致しています。だからこそ、基本的にはうまくやっていたのです。
うまくいかなかったのは、ではなにを望むのかという点についてでした。まあ、あれです。自分にとって最も都合がよくて気楽な方向に進めたいのは、抗い難い性ですからね。
結果として、霊王はバラバラになって世界を安定させるための要石として設置されることと相成りました。それに反対するような者は、ほとんどが“いなくなりました”。勝ち残った側の人々は全てを闇に葬り、新たな秩序とそれを守る機構を作りました。こうして長きにわたる安寧、世界が三分された時代は幕を開けることとなったわけです。なんとも素晴らしいでしょう?
前置きが長くなりましたね。さて、そこで困ってしまうのは勝ち残った側になれなかった人々ですよね。
新たな秩序の構築にあたり、元来滅却することで対処していた虚は世界の平衡を保つ循環構造の一つとして採用されることとなりました。…あら、外部の方だとそもそも滅却の概念が通じませんか。魂を分解して情報を含まない純粋なリソースに回帰・滞留させるといったニュアンスが近いかな、と私は思うのですが。
要するに、魂魄というリソースは、魂魄という形のまま運用することに決められたのです。しかしながら、それに異を唱える––––否、唱えざるをえないものがいました。
滅却師です。
彼らにとって、滅却を推奨しない新秩序の創造は実質の武装解除命令であるわけですよね。…実の所体制から見て「分をわきまえた」程度の活動であれば即座に処断されることはないですが、その基準も一方的に押し付けられたものになるわけですし。人食い羆が街を彷徨いているのに、自衛の手段は捨てられないでしょう?
ですがまあ、結論から言えばこの抵抗は長らく無駄に終わりました。無理もございませんね。システムの機関部全てを掌握された状態で行う抵抗など、そんなものです。
そうして長い長い時が過ぎ、果てに発生してしまったそういった無念怨念の結実こそが、滅却師の王というシステムである、と私は考えます。
大凡千と二百年ほど前、一人の“異端”に対し期待をかけた周囲は、やがて何がしかの大改革をもたらせという波となりうんにゃらかんにゃら。こうして行われることになったのが、俗に言う大統一事業。
…当時対立関係にあった諸領地を併呑し他種族勢力に対抗できる一枚岩を構築するという考えから始まったものであるようですが、私の認識では失策ですね。だって––––
––––いえ、なんでも……ああそうだ、容赦ない粛清のせいで権力者層はほぼ一掃されてしまいましたので、文化や口伝というものの殆どが失伝してしまったのがよくありません。これはいけないことです。歴史を司るものとしてはそういうの許せません。そういうことです。
こうして築かれた一大帝国の一大侵攻作戦も、これまた失敗に終わりました。これだけのことをやってかき集めた軍隊を、死神により潰走させられたわけですからね。立ち上げからやってきた中核メンバーも全滅と言ってよい状態です。…攻め込む方も悪いだろうと言ってしまえばそれまでなのですが、そうでもしなければ気が済まない層が主力だったので難しいところです。
この大失敗から、滅却師の王は一つのことを学びました。
人間性を保っている状態では到底勝てない。必要なのはその先など不要なほど研ぎ澄ました兵器なのであると。
どんなに土台を固めたところで、そこに破壊される弱さがあるなら無為なのです。これからとこれまでの全てを救済するために、これからとこれまでの全てを台無しにしてでも、全てをめちゃくちゃにする必要があります。…わかりやすく講釈すると大体こんな感じでしょうか?
………色々とツッコミたそうな顔をしていますね。わかります。色々あるもので、自他の境界がちょっと曖昧になりがちなのですよね、我々。
こうして作り上げられたものが新生星十字騎士団。お前が見ているものですよ。
要するに、お前はなぜあれらが人として壊れかけなのかを知りたかったのでしょう?答えは単純、それで仕様通りだからです。無論、できることなら人としても戦力としても基本をわきまえた存在がいてくれた方が良いのですけれどねえ。特化型の促成栽培なら気狂いに刃物持たせて特攻させた方が効率が良いですから。
以上で講義を終了とします。
「…質問、感想タイムを設けます。何か言いたいことは?」
どこからともなく出したフリップをどこかにしまいながら、マグダレーナがそう締めくくる。
じゃあ、一つだけ
「どうぞ」
あなたの感想が聞きたいです
「––––––––––––」
***
「レーナ」
「…………」
「南へ行く。可能な限り早く帰るようにはするが、お前は心細いだろう。何か望みのものはないか?兄がなんでも好きな土産を用意してやるぞ」
「…………………」
「レーナ」
「聞こえております。耳は人よりよくできておりますので。
存じ上げております。皆が話しておりましたので。
…南の方、ね。今度は残った分を燃やしにでも行かれるのですか?」
「今回は探し物をしに行くだけだ。不埒な考えを持つ者がいなければ、血が流れることもない」
「では前回は敵を焼くために行かれたことは否定なさらないのね。そうだろうとは思っておりましたが」
「…………全ては必要なことだ」
「必要?本来は同じ苦境にあるはずの者たちを切って捨てることの、どこに必要性があると仰るのです?」
「……奴らは皆理解しようともせぬからだ。
棄てられ、見下げられ、家畜として生きながらえるだけの生がいかに暗いものであるのか。
牙を抜かれ、為す術無く死を恐れるだけの時が如何に絶望に満ちたものであるのか。
積年の屈辱を、積み重ねられ続けた因果の重さを、裏で何が犠牲になり続けているのかを見て見ぬ振りをし、満ち足りた振りをしているだけの家禽どもだ。事を理解させるには、痛みと恐怖による支配しかない」
「––––––っ、でも、」
「全てを壊して、新しくやり直そう。お前が誰に煩わされることもなく、何に怯える必要もない世界を作ってやる」
「私、怖がってなんて–––––」
「お前が案ずる必要はどこにもない。兄が万事取り計らってやろう。
……体が冷えているな。今日は部屋に戻ってゆっくり休め。よいな」
「…………待っ、」
「………………」
「…みんな、ばか」
***
「………………。
––––––––––いやまあ、別に、何も?自己利益を追求し他を蹴落とす、どこにでもあるごくごく普通の生存競争のお話でしょう。極端に先鋭化し過ぎた方、少数となった方から消えるのが世の必定です。好悪の介在する余地はなく、慚愧も憐憫も必要ありません。
…なんて、あはは、私ってば基本的にタダ飯ぐらいの穀潰しですからね。そういうの細かく聞かれてもよくわかんないなー、みたいな?
はいはい昔話はおしまいね。仕事仕事。さっさと行くぜ」
興味をなくしたようにそう返すと、そのまま元来た方向へと向き直って歩き出す。マグダレーナのその様子からは、細かい感情を窺い知るのは難しそうであった。
些か気まずさの残る様子のマシュと目配せを交わしながら後に続こうとする藤丸の視界の隅を、何かが掠める。
(…?)
(今、影が動いたような…)
「どうしましょう先輩、なんだか気まずい調子になってしまったような…」
ごめん、もっと上手く聞ければよかったんだけど
必要なことだと思うから
「この特異点が発生した真の原因、本当の意味で解決するにはどうすればいいのか、ですよね。
はい。わたしもそれは大切なことだと思います。何も知ろうとせずにトラブルだけ取り除いても、同じことが起こってしまうかもしれませんから」
マシュががんばりましょう、と胸の前で両手をグーにしていると、それをよそに前方を歩いていたマグダレーナがぴたりと動きを止める。
「いた」
「…?何が…」
訝しげに尋ねる声が聞こえていないのか、早足で歩き出したかと思えば、そのままダッシュに移行する。
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡」という甲高い声と共にぴょこんと飛び上がり道の方に飛び込んで行ったマグダレーナはそのまま前方を歩いていた男の胴体に背後からしがみつき––––––
「そぉい!」
––––––それはそれは美しいスープレックスをかました。アニメであれば3カメ程度を要して描写されるであろう、本当に見事な技であった。
え!?
プロレスリング・カウントゼロ–––––!?
ド派手な音と振動、そして土埃。いかほどの衝撃が加わったのかは計り知れないが割れて窪んだ地面から起き上がり、投げられた方の男が怒声を上げる。
「……髪が崩れるだろうが!」
受け身は取ったのであろう。あまりダメージを受けているようには見えなかったが、おそらく元は丁寧に整えられていたのであろうトサカ状の髪が重力に負け二、三束ほどへにゃりと垂れ下がっていた。
「もともと壊滅しているようなものにございましょう馬鹿者が!
…ふう。今ので、部外者に対しワンオフ型魔法少女装備に存在する身バレ防止認識阻害機構の存在をバラした機密漏洩に対する制裁は終了とします」
「先に本当に俺がやったのか確認するとかねェのかよ!」
「あのクソガキどもが知っててアスキンが知らねーなら犯人は九割オマエだバァカ!」
「ぐ」
理論的には些かガバが過ぎるが、男としては反論の余地があまりない点であったらしい。痛いところを突かれた、というような顔をして目線を逸らしていた。
「うし、公的制裁は終わったから次私的な話ね。
…どうしたのこんなところで〜!あげたお船が気に入らなかった?ご飯買い足しに来たの?ちゃんと食べてる?お肉ばかりでなくてお野菜も食べなくてはいけませんよ?」
「取られたんだよ猛獣どもに!身内にまで肩持たれちゃ俺一人でなんとかなるわけね、ちょ、やめろって…!」
スイッチが切り替わるが否かベッタリと張り付いて頬擦りし出したマグダレーナを引き剥がしながら「バッ、アンタな、見られたらどうすんだよ…!」と慌てる男だが、「誰に〜?」と馬鹿力で距離を詰め直す女に対しては些か不利なようであった。
「随分と仲がよろしいですが…もしかして話にあった旦那さんでしょうか」
弟か何かかも
話し合う同行者二名に対し、先ほどから不自然なほど静かにしていたカワキが「どっちも違うよ」とだけ返した。
「やめろそれはマジで洒落になんねェから!!!!聞かれたら終わりだぞ!!!!」
言いながら、男はキョロキョロと周囲を見渡し–––ひとしきり見渡した後、怪訝そうな顔をして止まる。
「…………なあ。アンタ今一人か?」
「あそこの子達と一緒ですが?」
「……そうじゃねえよ、ホラ」
「…………?あの子ならずっとお前達に随伴しているでしょう?」
「…アイツ、今朝朝メシ食った後サメ見に行くっつって出てったきりだぞ。
てっきりアンタんとこ行ったんだとばかり…」
「………………んんん?」
漫画において、血の気が引く様子を表すオノマトペにサーッ!というものがある。そういう表情を、二人が揃って見せていた。
「……そ、そーいえばさー。俺、せっかく予定が空いたからデートでもしよっかなと思ってたんだよなー。それで今人探ししてた所なンだわー」
「すっ、素敵じゃな〜い。あの子なら「嫌いな人間が犇いてる場所とか何が楽しいわけ?」とか言いながら屋上ラウンジでメダルマシーン無限周回してましたし、そこから動いていないと思うの〜。ぜひ行ってあげるがよろしくてよ〜?」
「…………悪ィ、埋め合わせはすっから」
「いいのよ別に」
会話が途切れ、男の姿が消える。一応サーヴァント戦で高速戦闘に慣れているカルデア勢としての所見では、残像が見えるレベルのスピードでその場から走り出したと思わしい。
二人の間では何がしかの理解が通っているようであったが、知らぬものからすれば何が起こったのだろうかという感想しかなかった。
「…………。」
マグダレーナがパンパン、と小気味よく手を叩くと、その音が響き終わるよりも早く一人が影から滑り出るように現れた。
髪をきっちりとまとめ制服に身を包んだ、生真面目そうな容姿の女性である。
姿を認めたカワキがほんの少し「うへ」とでも言いそうな顔を見せた理由については、カルデア側からは計り知れぬ事だった。
「お呼びですか」
「……お前には非常に重要な任務を一任していましたね」
「はい。現在、委細恙無く進行しております」
「仕事ぶりについては特に心配した事ないわよ。
………………うん。
ねえ。ターゲットの現在地を教えてもらえる?」
「申し訳ありませんが、主君の利益に反する質問にはお答え致しかねます」
さらりと答えた女の反応を見ながら、マグダレーナは一時的に収まっていた冷や汗を再発させている様子だった。
「…………オマエさあ。やっぱ今からでも聖文字もらっとかない?結構便利よ?一文字一人ルールも近年撤廃されたようですし」
「致しかねます」
「100点満点の回答をありがとう!私は逃げます!後よろしく!」
「はい。どうぞごゆっくり、奥様」
「私も失礼しようかな」
あたふたとその場を離れようとするマグダレーナと便乗しそそくさと撤退の姿勢を見せるカワキをその場に縫い止めるように、どこからともなく「待て」という声が響いた。
「……カワキ。先ほどから気配を消そうと苦心していたようだが、それでなんとかなるとでも思っていたのか」
「チッ」
薮側の影がぬるりと動くと、そこから滲み出るように一人の男が現れる。
スラリと伸びた長身に、やや無造作ながら美しく落ちる金糸。それと同じ艶やかな金に縁取られた瞳が、いかにも気に食わないという風にこちらを睥睨していた。
「…あれは確か…」
サメセンターの帰りに会った人だ!
「……………ああ、なるほど。あのリストには詳細情報がないからね」
はわわとしか言えない生物になったマグダレーナの方をアホかこいつと言いたげな目で見下ろしながら、カワキが納得いったという風に頷いた。
「知らなかったのか。あの人はユーグラム・ハッシュヴァルトといって、マグダレーナ様の夫であり、私の剣術の師匠にあたる者だよ」