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シニア2年目の途中。重賞未勝利、OPを主に、時々重賞挑戦。

『重賞のいつもの味わい深い面々』の少し手前といった立ち位置。

因子のために妙に高頻度で『私♂』と会っているのは『持病の都合で世話になっている従兄と恋愛関係でもある』という事にしている。


ちょっと長めの休みで、これまで通り『私♂』とデバフ緩和のための×××をしてから数日後。

寝る前にペンダントの状態を見ていると、解除度合いが100%になったらしい表現、そして、情報が表れていた部分が単なる石になっていく。


「兄さん、これ見て。デバフが切れたみたい。」

「終わったんだ……おめでとう。でいいのかな?」

「えっと、ありがとう」


一応『私♂』に頼ってデバフ緩和の『儀式』として×××する必要は無くなったということになる。まあ、最近は既に自然回復待ちで十分そうな段階なのに、いつも通りの関係を続けていたとも言えるけど……

必要性だけで言うと、単なる親戚扱いで別々に生きていくのも可能。あとは、自分がどうしたいかと、相手がどうしたいか。


「えっと……アニマさえ良ければ、このまま正式に恋人に。ってどうかな?」

先に言われてしまった。

「……うん、私もそれが良いと思う。」

添い寝する体勢で一緒に布団に入ったまま、特別な雰囲気にもならず正式に付き合うことが決まった。

変な理由の変な関係が既に数年目とはいえ、考えてみれば双方の人生初告白・初恋人なんだが……私達らしいというか何というか。


それからは『儀式』のための密会ではない単なる健全なデートをしてみたりとか、改めて恋人らしいことを楽しむようになった。


――シニア6年目、馬齢で言えば9歳、重賞に出てくる味わい深い面々扱いされる中の一人として私は無事に現役を終えた。『私♂』とは引退を機に籍を入れた。



……ある日、今年デビューの新人のニュースに見覚えのある名前……本来は当然自分より前のはずではあるが、推しの年のメンバーだ。


――202X世代クラシック。

メイクデビューに間に合わなかった推しがデビューし、G1戦線にも殴り込む。どうにか全て現地観戦。

こちらの世界に来たことで二度と映像を観ることが出来なかった、記憶に焼き付いた推しの走りが、ウマ娘の姿だが目の前で繰り広げられる。しかも、

「兄さん、私が真似てた『本物』凄いでしょ?」

一緒に観戦して語れる相手まで居る。


……推しはクラシック秋から史実通り長期休養。


――202X世代シニア2年目、馬で言うと5歳春の初め。

史実と同様、推しの同期の脱落が目立ち、本人は引退していないが休養中。

この世界でも『ティアラ路線ならシニア2年末か年明け引退』という風潮自体はあるようで、終わった扱いをする人たちをみて歯がみする。


ここからは私が知らない時代。


推しの復帰戦。2年近くかかったが、戻ってきたことを兄さんと二人で喜び合う。

元の世界の、私より後の本物の結果か、それともこの世界のIFか分からないが、続きが見られるだけでも幸福。


……最終的に、この世界での推しはシニア4年目、馬で言うと7歳……元世界では、牝馬だけどオーナーの実績的に行けると見ていた年……も重賞を制覇して、無事に走りきって引退。ファル子先輩と薄く縁のある某『スマートで重層なお姉さん』の令和版のような名声を得たのだった。

元の世界でそういう渋い戦績の名馬になったから来たのか、この世界でのIFなのかは誰にも分からないが、前者だと信じたい。


……推しのその後の活躍を見れて、一緒に喜べる大切な相手も居て、こんな幸福で良いのだろうか?と少し不安になるが……考えてみれば、見つけた使命の方が重くなっただけで、『私♂』と関係を持つのは本来デメリットか。私の方が変わっただけということに安心する。

競馬に完全にハマったのも推しの影響だったし、また私が大きく変わるきっかけになってたのか……

思わずふふっと笑みが溢れる。

「どうしたの?」

「あ、起こしてごめん。兄さんと私をくっつけたキューピッドの事をちょっと思い出してて」

そう言ってから『私♂』と抱きしめ合い、再び目を閉じる……

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