⛰️✖️TOK
TOKの舌ペロかわいいねぇ…の話
3月末、ドバイから帰国した俺たちは検疫厩舎で暇を持て余していた。
「あっづい…メイダンのクーラー付き馬房最高だったな…見習ってくれよ…」
と隣でへばっているのはドバイで主役だったウシュバテソーロ。
俺とは川崎記念で初対戦、ダートの帝王の俺の立場としては誠に遺憾だが現在負け越している。
6月の帝王賞でぎゃふんと言わせてやるからな…!と決意を新たにしていると、隣のヤツが顔をあげた。
「舌、出てるぞ」
と言われて舌をしまい忘れていることに初めて気がつく。
「やべ、気ィ抜くと出ちゃうんだよな〜」
「パドックでもべろんべろんだよな。帝王サマの余裕の表れかぁ?」
「パドックで項垂れて死んだ目してるお前にだけは言われたくねぇわ」
あのクソ追い切りとパドックの有り様でどうしてあんなレースができるんだよ…と内心毒づいていると目の前にヤツの顔があった。
顔、ちか…と思うのと唇に生温かい感触がしたのは同時だった。ガリッという音と共に舌に鈍い痛みが走る。
舌を噛まれたことに気がつくのには暫く時間がかかった。我に返ると、ベロリと親指で唇を拭うヤツの姿が目に入る。
「大事なモンはちゃぁんとしまっとけよ?」
そう言うとヤツは背を向けひらひらと手を振り自室へと戻っていった。
俺は事態が飲み込めず、暫く呆然としてしまった。
いや本当に何なんだよアイツ!?
先程の出来事を思い返すと恥ずかしさで顔から火が出そうだ、隙を見せた俺が悪いのか…?
あーもう何でこの俺がこんなに振り回されなきゃいけないんだよ!次絶対に勝って俺こそがダート王だということをアイツに分からせてやる!あと今回の礼に1発殴る!俺の唇を奪った代償はでかい。
グッと拳を握りしめ、この怒りを静めるべく俺はトレーニングルームへ向かった。
後日、ウシュバが帝王賞を回避することを知ったケインズが夏休み中のウシュバのところに怒鳴り込みに行って一悶着起きることになるが、それはまた別のお話。