THIRD VICTIM ③
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主
虚圏での戦闘は混沌を極めていた 片や巨大な敵と小さな子供 片やロボと少年との殴り合い 終いに人質を振り回すイケメンとそれに振り回される女二人
「すっごい大きくなっちゃった...」
「...『斬月』の最大出力でも傷は付かぬか やはり貴様相手ならば時間稼ぎのみに絞るしか無いな」
攻撃をすれば大きくなり何もしなくても大きくなり...The Harmony(調和)も敵が聴覚を封じているため使用は難しいと来ている
しかしだからと言ってマゴマゴとしている暇も無い そうして考えている内にふとルカはひとつ賭けに出ることにした
「ぼく考えたんです...!向こうが賛同してくれないし合わせてくれないなら
"ぼく"が合わせればいいって!」
ルカは完聖体を発動した上で"鼓膜"を破った 発動した際に聞こえていた鐘のような音が消えて無くなった...骨伝導はあるがそれは相手も同じような物だろう
「...思っていたより『心細くて怖い』ですね」
「バカな...⁉なぜThe Harmony(調和)が私を捕らえている⁉」
巨大な図体はもはや上手く動かず無様を晒す あの機械の体は繊細で臆病な本心を隠すための虚栄心の塊のようで確かにここまで調和を引き出しづらいものだと納得できた
「だが...だが...だが...!わたしとて成し遂げねばならぬのだ...『ハッシュヴァルト』!」
カチリと何かを押す音が鳴った 音が聞こえたのはハッシュヴァルトがいた方向
「カラクライザー?自爆タイマー開始したよ 感想は~?」
「機械の体でなければイロイロ大惨事だったろうな...汗とか涙とかそういうのが...」
ルカはまだ耳が聞こえづらくとりあえず自爆のみは分かった 今は敵の体の自由も奪ってはいるが
「どこをどうすれば自爆しなくなるのか分かりません!!困りました!?」
一難去ってまた一難である
「なかなかいいんじゃないかい?アタシはそういう危ない機能は嫌いじゃないね」
「俺は嫌いだね アレは取り込んだ霊圧を爆破にそのまま使うからこのままじゃ俺も無事じゃすまないからね...最悪この人質に頑張ってもらうけどさ」
「どっちも碌な事言わないねぇ...あと洗脳のせいで人質から君を守るために動かれるのは本当に面倒だな君」
先程の割と大規模な戦場とは裏腹にこちらはとんでもなく地味な戦いが続いている
テレポートして相手の隙を伺い剣を叩き込もうとするゲルベルガと帰刃を実質封印され不自由に戦う事を強制されているランキャット
対するは相手をバカにしながら人質を振り回して『身代わりの盾』にしているハッシュヴァルトと盾と化したマグダレーナである
しかしこの均衡は案外アッサリと崩れることになった ただ一言
と今まで黙っていたマグダレーナが強く言い放ち 次にゲルベルガ達に向けて
と伝えた 自分で時間を待ちどうにかするよりもゲルベルガ達に頼る方が良いと判断したのである
これによりこの個体は『ハッシュヴァルト"モドキ"』と認識が改められ 『ハッシュヴァルトを守れ』という命令は無意味となった
「おいおい...俺の肉体は確かに『ハッシュヴァルト』だろう!?」
「今の貴方の言動は『ハッシュヴァルト』というにはあまりにもかけ離れすぎています 『肉体』はともかく『精神及び魂』があまりにも違いすぎますわ」
絶好の好機 逃すはずもない
「さっきから面倒だったからね!アタシの鬱憤ごと焼いていってきな!」
「せっかく君が自分で増強したのだし...君自身でその身に受けてみてくれたまえ」
The Portalにより無防備になったハッシュヴァルトモドキとランキャットを遥か上空へと送る
遥か上空であったがその熱で少し苦痛を感じるほどの火力を地上にいるマグダレーナとゲルベルガは感じた
「さて 予定していた時間が来たようだな...思いのほか粘られたのは非常に困ったものだがどうしたものか」
既に「ジャックポット・バランサー」は破損し破損するまでに与えたダメージにより疲弊したペネロペイアをゆっくりと相手をしていたBG9は重い腰を上げようとしたいた
「また同じような方法を取っても君にぼくへの勝ち目は無いよ 最悪ぼくが弱らせてみんなが戦えば君相手でも完封出来るとおもうし」
「『完封』か それが出来る能力を持つと知っている相手を選んだのだ 対策くらい忍ばせている...使わないつもりでいたがそうも言っていられない状況だ」
BG9は腕の収納スペースから一つの目玉を取り出しペネロペイアへと向ける
ヨルダ・クリスマスの聖文字
『認識した任意の物質・現象を完全に無効化・消失させ、任意で戻すことも可能』な能力で翡翠狛鶴(グルージャ)を無効化する
その上で発動するため取り出したのは『懐中時計』
時の神と契約することにより力を得る事が出来る 条件が単純であればあるほど絶大な力を発揮する
「契約内容は『一分以内にマグダレーナを目標まで送ること』『そのために私は"速さ"を欲する』」
無論一分を過ぎれば全身焼けて死ぬがどちらにせよここで決めねば終わりだ
00秒:条件履行 能力発動
10秒:自爆しようとするカラクライザーから義魂丸のみを「パー・オブ・ジ・エンド」で突き転送する
35秒:上空到達 魂を焼かれ死にそうになっている"モドキ"である義魂丸を転送 ハッシュヴァルトの死体を持って降りる
55秒:マグダレーナの前に降り立つ ハッシュヴァルトに「パー・オブ・ジ・エンド」を刺そうとする
60秒:『ハッシュヴァルト』を守るために「パー・オブ・ジ・エンド」にマグダレーナが刺され転送される
「『霊王の器』お前が死体すら守ろうとする人物でなければ我々の目標は達せられなかった お前の情緒を育んだ者に感謝しよう」
BG9は自身を斬り消えた 残ったのは...ゲルベルガ一行と爆発寸前のカラクライザーのみだった