THINK AGAIN
1「そろそろ良いですわね」
キャンディスから飛廉脚で逃げ回っていた翼が足を止める バンビーズ(バンビ抜き)との距離も取った 準備は必要十分
「さっきからセコセコと逃げ回りやがって... あたしはさっさとブッ殺して更木剣八もブッ殺しに行かなきゃならないんだからな!」
そう息巻くキャンディスにやはり想定外の方向から矢が降ってくる
虎屋家お得意の『第六感』による事前においてある狙撃...事前に殺し切る為の布石としてある程度用意してあるのだろうが
「ある程度分かってりゃ...そのちんけな矢なんて燃やし尽くせるんだよ!!」
避雷針に集る雷の如くキャンディスがその矢を撃墜する
『The Thunderbolt』 ― 雷霆―
圧倒的火力 電力の回復が時折必要であるが...少なくともその身が人間のソレからそう変わらない翼にとっては多少の電力でも十二分に致死量だ
キャンディスにとってはさっさと決着をつけて電力の回復をして更木剣八との戦いに力を発揮したい場面である であるからこそキャンディスの頭に思い浮かぶのは
【高火力による短期決戦】
ちまちまとした攻撃は最悪静血装にてやり過ごして能力による雷の如き高速移動と火力で押し切る
危険なのは『マインド・スイート』による支配だが...こちらは当たらなければどうということはない そして『T』の聖文字だがこれは情報が無い以上注意を払うしかない
雷を文字通り手にして迫るキャンディスと足を止めて弓を構える翼
高速移動によりキャンディスは翼の後ろを取りその六刀を持って焼き切りに掛かる
「刀の数が多けりゃいいってもんでもありませんわよ」
空から一つ 翼から矢がキャンディスとは見当違いの場所に放たれ きっちりとした姿勢で回り続けるコマにぶつかりキャンディスへと向かう
そして和服の襟から銀色の液体金属が飛び出してくる 急所に対する対処くらいはキチンとしているらしい
【こんなもんで殺し切れると思ってんのか?それに金属は避雷針替わりだとしてそこまで意味があるとは思えねえ...あいつの手に持ってる" "にも注意を払うべきだな】
「なんか忘れてねぇか...?」
【とりあえず矢は"動"血装でやり過ごしてこのまま押し切る 金属は何を仕込んでいるかわからねえ...仮に菓子を仕込んでても熱量を叩き込めば抵抗で発熱して丸焦げになるはずだ】
思考の後にコンマを置いて気付く なぜあたしは"動"血装を使ってる?守りであるなら静血装を使うべきだったはずだ
【疲れてるときに階段を一段忘れて躓くような感覚だ 矢がこのまま刺さるのは不味い 避けるのであれば"右"!それならば手に持ってる" "も対処できる】
体は右へと揺らぐ 確かにそちらでも急所を避けて翼へ一撃を見舞えるが
「"飴"ちゃんあげますわ その妙に空いている胸元にホールインワンってとこですわね」
翼から指で弾かれた飴玉は宣言とは違い一度胸でワンバウンドしてポケットに入った
【どうなってやがる...!?霊圧を上げて__】
「『止まれ』」
キャンディスの動きが止まる __勝負は終わった
「なにがどうなってんだよ...!凡ミスとかそういうレベルじゃねえだろ」
「まあそういう能力ですから仕方ないですわ
『The Think』 ─熟考─ 自身と他者の思考を表示させてそれの改変を可能とする能力ですわ...一部変えるのだけで限界ですけれどもね」
少なくとも静血相を強いるだけの矢の威力 一撃が致命傷になる完現術 無茶を通す『第六感』 相手の邪魔を出来る聖文字
「くそが...!」
滅茶苦茶面倒だ 誘いに乗らず袋叩きにでもするべきだったとキャンディスは考える
「それと...バズビーさんでしたかね?モヒカンの人が貴方を殺すために今近づいてますので...一緒に逃げますわよ 貴方を交渉材料として使いたいですし」
「相手に捕まえりゃそうなるか...どうせ何も出来ないんだ好きにしやがれ」
二人は他のバンビーズ(バンビ抜き)の元へと向かうのだった